ハイランド・パイプに関するFAQ/よくある質問集
このコーナーでは、これまで掲示板を通じて実際にあった質問とその回答を紹介しています。このコーナーをより充実させるために、ハイランド・パイプに関する皆さんの素朴な疑問、質問をお待ちしています。
■ 質問項目の索引 ■

【質問1】 チャンタ−とドローン、同時に音が出ないのですが?
【質問2】 スケボーの後に、さっとパイプをもってバッチリ演奏を決めたいのですが?
【質問3】 ハイランド・パイプと生バイオリンとで合奏はできますか?
【質問4】 聞けば聞くほどバグパイプって楽器は難しい楽器のようですね〜
【質問5】 ハイランド・パイプの購入を考えているのですが、方法が分かりません。
【質問6】 とりあえず、楽譜を見ながらピーブロックの練習を始めたのですが?
【質問7】 
ピーブロックを基本の基から始めるための、適当な教則本を教えて下さい。

【質問1】
 友人と、スケートボードの傍ら、民族音楽を始めたのですが、その友人が初めて購入して練習中のバグパイプ、音が、上と下でバラバラに出るのです。つまり、上のドローン3本から音が出るときは下のチャンターから出ない、下のチャンターから出るときは上のドロ−ン3本から音が出ないのです。私もやってみたのですが、バッグに空気をためていざ吹いてみると、上だけから鳴ったり、下だけから鳴ったりしてしまうのです。どうしたものかと悩んでいます。
【回答1】
 ポイントは2点あります。
 まず、第1に演奏者の側の問題です。

 ハイランド・パイプという楽器は、通常の管楽器の概念をはるかに超える大量の空気を延々と継続して吹き込まなくてはならない楽器です。そこで、それまでこの楽器を演奏したことが無い人にとっては、バッグに十分な空気を送り込みリードを振動させて音を出すこと自体が、思った程には容易ではないのです。ハイランド・パイプを手にしたからといって、いきなり最初から満足に音が出せるとは決して考えないで下さい。

 ただし、このこと自体はちょっとしたコツの修得と地道な鍛錬によって、それなりの時間を掛ければだれでも必ず克服できることです。
 その鍛錬の方法ですが、まず最初はチャンターを抜いてチャンターストックに栓をして、ドローンだけを安定的に鳴らす訓練を行ないます。それも最初はテナー・ドローン1本から初めて、慣れたら2本、そして、最後にベース・ドローンを加えて3本という具合に段階を踏んで行います。実はこの安定的に鳴らすというのがミソでして、そのためには口で空気を吹き込む作業と、左脇の下でバッグをプレスする作業をシームレスにコントロールする必要があるのですが、慣れてくるとなんてことの無いこの操作の加減が、初心者には結構難しいのです。

 でも、これには慣れるしかないし、かつ、基本的な鍛錬ですので頑張るしかありません。筋肉的には胸の筋肉と背中左上部の肩甲骨の上の僧坊筋という筋肉、もう一つは唇の回りの筋肉を鍛える事になります。筋肉の鍛錬ですから、一朝一夕に出来る様にはならないことを覚悟して気長に修練する必要があります。

 はやる気持ちを押さえ、最初の一週間程はとにかくこの鍛錬に勤しんで下さい。そして、なんとかドローンを安定的に鳴らす事が出来る様になったら、次のステップとして今度は3本のドローンを止めて(と言いたいところですが、最初は自在に止める事も難しいでしょうから、出来なければドローンを3本とも抜いてストックに栓をして)チャンターだけを鳴らす訓練をします。
 チャンター・リードはドローン・リードよりもずっと堅いのでより高い圧力が求められます。ですから、チャンター1本だけでもドローン3本以上の空気を安定的に吹き込まないといけないので、これも一段とハードな訓練です。
 最初はとにかくLow A(右の小指を除いて全部塞ぐ)を安定的に鳴らす訓練。そして、それができるようになったら、B、C、D、…と、段階を踏んで順次高い音を安定して出せる様にします。なぜなら、高い音を安定的に鳴らすことの方がより難易度が高いからです。

 さて、ここまで肉体改造が済むまでには、個人差はありましょうが毎日練習したとしても、最低でも2週間程度は見ておいた方が良いでしょう。筋肉はそんなに簡単に付く訳ないですからね。


 さて、次は第2の問題、楽器の調整です。
 チャンター・リードとドローン・リードは鳴りはじめる空気圧が違います。先ほど書いた様にチャンター・リードの方がずっと堅いので、高圧を掛けないと鳴らないからです。また、ドローン・リードはより低圧で鳴り始めますが、さらに圧力を掛けた際に止まってしまうという現象はごくありふれたことです。
 ご相談の現象は、吹き込む空気の圧力に応じて低圧の時にドローンだけが鳴って、さらに圧力を掛けた段階でドローンが止まり、代わりにチャンタ−が鳴り出している訳です。そこで、対応策としてはドローンリードを調整して高圧を掛けても止まらないようにする必要があります。

 そこで問題なのは、ご相談のパイプに付いているドローンリードは多分、ケーン(Cane)のリードなのではないかと想像されます。一流のパイプメイカーでない限り、素人に売り付けるものに高価なシンセティック・リードを付けるなんてことはしないでしょうから。
 …で、ハッキリ言って初心者にはケーンのリードの調整は結構難しいと思われますので、まず、最初から付いて来たそのリードは諦めて、パイプのかおり第4話第5話第11話で名前が出て来る様なシンセティックなドローン・リードを購入することをお勧めします。まあ、とりあえずは EzeeDrone あたりが無難かと思います。通常、シンセティックなドローン・リードは品質的に安定していますから、余程なハズレでなければこれで高圧を掛けてもチャンタ−と一緒にちゃんと鳴ってくれるはずです。

 さて、この他に、もっと悩ましいのは実はチャンター・リードの加減です。つまり、ハイランド・パイプのチャンター・リードの堅さはとにかく常識はずれなのですが、それでもそれがどの程度のものなのか?ってことが多分、初心者には皆目見当が付かないと思います。購入したハイランド・パイプに当初付いて来たリード(何本ありますか?)が本当に使えるようなものなのかどうなのか?ってこともです。
 確かに、いくら何でもリードが堅すぎた場合には、少々訓練を積んが程度ではもまともに演奏するのがままならないでしょうが、弱すぎると裏返って調子っぱずれな音を出す様になるし、じきにヘタッて使い物にならなくなります。ですから、ここで重要なのはリードが「堅すぎる」からといって素人判断で勝手に削ったりしないことです。
 ハイランド・パイプのチャンタ−・リードはオーボエなどのそれと同じ2枚リードですが、それらと根本的に違う点は、基本的に奏者が自分でリードを削ることはしないという事です。(微調整としてリードの先端にほんの僅かサンドペーパーを当てることはありますが…。)
 
どちらにしても、リードの堅さばかりは実物を吹いてみない事にはなんとも言えないです。ことチャンタ−・リードの加減については、出来ればどなたかハイランド・パイプ経験者に実際に手ほどきしてらった方がよろしいかと思います。でないと、いつまでも自分のやっていることに自信が持てないでしょうから。

 今回のところはとりあえず College of PipingNational Piping Centre のオンラインショップなどでシンセティックなドローン・リードを手配してみてください。早ければ一週間で新しいドローン・リードが着きます。それまでに、第1の問題を少しでもクリアできる様に、日々筋肉トレーニングに励んで、新しいドローン・リードがゲットできたら改めてトライしてみて下さい。

【質問2】
 スケボーの後に、さっとバグパイプを手にしてバッチリ演奏を決めたいのですが?
【回答2】
 一般的に皆さんがバグパイプの演奏を御覧になる時は、パイパーが颯爽と登場しておもむろにドローン・パイプを肩に掛け、スーコスーコと空気を吹き込んだと思ったら、バンッとバッグを叩いてドローンがブウォーンと唸り始め、続いてチャンターが空気を引き裂いて鳴り響く…、って風景だと思います。
 いや〜、確かにカッコイイですよね。ナルシストじゃなくても演奏する自分自身で惚れ惚れします。とにかく、私は常々ハイランド・パイプという楽器はあらゆる楽器の中で、奏者の立ち姿が最も凛々しい楽器だと思っています(そうでないと良い音が出ません)。

 しかし、ここでハイランド・パイプを目指そうとする皆さんに知っていて欲しいのは、実際にはこのようなパイパーのカッコイイ所作はそう簡単に成し得ている事ではないという事実です。

 ハイランド・パイプと言う楽器はやっかいなことに《吹けば鳴る》というような単純な楽器ではないのです。チャンター・リードとドローン・リードがそれぞれ安定状態に達し、絶妙な調和を奏でるようにするためには、とにかく事前に入念にウォームアップする必要があるのです。

 私がパイプを始めた30年前は、ケーンのドローン・リードしかなかったので、人前で演奏する際にはそれはもう最低でも1時間位はウォームアップをしていたものです。さらに、そのようにしてせっかく一旦暖まって安定した楽器でも、出番までの間に時間がある場合、いざ演奏しようとする時にはバッグ内の暖まった空気がリードに結露してしまっていて、せっかく合わせたチューニングが完全に狂っているなんてことがままある訳です。

 そんな時は改めてウォームアップ演奏しながら四苦八苦してドローン・パイプをスライドさせてチューニングし直す必要がある訳ですが、颯爽とした演奏を期待している聴衆を前にしたそのようなウォームアップ演奏ってのは、なんとも形容し難い実に間の抜けた時間です。

 とどのつまり、言いたいことは冒頭で書いた様なシーンに憧れるのは良いのですが、実際にはそのようなシチュエーションを簡単にカッコ良く決めようというのはちょっと甘いかな、ということです。

【質問3】
 友人のバイオリンと一緒にアメイジング・グレイスを演奏するのが夢ですが、バグパイプでそのような楽しみ方はできますか?

【回答3】
 これまた、実は簡単なことではありません。

 問題の一つは音量の問題
 すでにお分かりかと思いますが、ハイランド・パイプの音量はとにかくバカデカイのです。アコーディオンやフィドルなど他の民族楽器を主体にしたバンドや、ロックバンドにハイランド・パイプを導入する場合は他の楽器をアンプに通せば、いかようにも音量のバランスを取る事は可能ですが、野外で生バイオリンとハイランド・パイプとで合奏しようとしても、せっかくのバイオリンの音色はけたたましいパイプの轟音の中でかき消えてしまうのがオチだと思います。

 もう一つは音階の問題です。
 ここでも紹介しているように、ハイランド・パイプのスケールは通常のスケールとは少々異なっているので、バイオリンの方が妙な違和感をいだかれるのではないでしょうか? まあ、この件についてはバイオリンの方でパイプスケールに合わせてもらうしかありませんが…。

 私は以前、野外で女性シンガーの方とアメイジング・グレイスを一緒に奏ったことがありますが、その際にはまずパイプでイントロ風に演奏をして一旦パイプを止め、その後、その女性が朗々と歌い上げ、最後にまたパイプで締めるという方法を取り、まずまずの出来でした。パイプとバイオリンと言う組み合わせもそんな風にアレンジしたらいかがでしょうか?

【質問4】
 聞けば聞くほどバグパイプという楽器は難しい楽器のようですね〜。
【回答4】
 いや〜、一面では確かにそうですが、見方を変えればハイランド・パイプってのは実に単純な楽器でもあります。

 ハイランド・パイプを手にした人が実際にバッグを抱えて演奏し始めて最初にぶち当たる壁、そして、その演奏がやたら難しいと思われる最大の原因は、回答1でもお答えしたように、この楽器が他の楽器とは全く違う「メロディーを奏でる運指作業とは別に、音を出すこと自体に大きな肉体的努力を必要とする」という困った楽器だという点です。

 ヨーロッパの古いパイプオルガンではオルガニストが涼しい顔で鍵盤に向かっている舞台裏で、あの映画「もののけ姫」に出て来た、昔ながらの方法で製鉄を行なう際に使われたタタラ(足で踏んで空気を吹き送る大きなフイゴ)のような仕掛けに少年が乗って、フーフー言いながら空気を送っていた訳ですが、ハイランド・パイパーはパイプオルガンに於けるその少年の役目とオルガニストの役目を一人二役でこなさなくてはならないのです。

 さらに、その空気を送り込む作業を担うのが、運指を行なう指と直接関わる二の腕であるというのも悩ましいところです。
 ただ、この点に於いてハイランド・パイパーはイリアン・パイプなど、バッグとは反対側の腕でフイゴを操作しなくはならないタイプの(つまり両腕と指先で3つの作業を行なう)バグパイプ奏者よりはまだ恵まれているようにも感じられます。
 でも、実際には、とてつもなく堅いリードに応じて異様に高い空気圧が求められるという点から言うと、ハイランド・パイパーの担う空気吹き込み&バッグのプレス作業は、飛び抜けて大きな労力を必要とするのです。

 しかし、一方で、この空気の吹き込みに際しては、リコーダー等で必要とされるアーティキュレーションなどという概念は毛頭無いですし、ラッパ類のようにマウスピースに当てた唇の加減で音階を奏でるなんて器用な事は求められません。
 バグパイプの場合は空気を一旦バッグに溜め込む訳ですから、吹き込む作業と指使いとの間には全く何の関係もありません(これって、初めて間近でバグパイプの演奏を見る人には結構びっくりされる事です)。息継ぎのタイミングなんか考える必要もなく(元々そんな余裕はありませんが…)、とにかく、くわえたブローパイプから終始一貫して目一杯吹き込み続ければいいんです。
 ですから、一旦コツを掴んで身体が適応(唇と僧坊筋が鍛えられ)てしまえば、いずれはさほど苦ではなくなります。前の回答でも書きましたが、この作業自体は地道な鍛錬によってだれでも必ず克服できるのですから…。

 さらに言えば、慣れてくるとこの吹き込み&バッグプレスの労苦に伴う軽い酸欠状態が、チャンタ−から発せられるハイトーン、ドローンの奏でるベースノート、そして、バッグから伝わるバイブレーション等と相まって、パイパーは精神の異様な高揚感を感じるようになります。いわゆる「パイパーズ・ハイ」の状態です。そして、そのような状態で10数分のピーブロックを演奏し終えた後の爽快感、というか「魂があっちにイッチマッタ感」は格別です。
 一度、ハイランド・パイプを演奏できるようになった者が、ハイランド・パイプを止められなくなってしまうのは、この得も言えぬ「パイパーズ・ハイ」の中毒から抜けられなくなるからではないかと信じています。そして、これは、フイゴを使ったバグパイプや、口で吹くとしてももっと効率の良い(空気消費が少なくて良い)バグパイプでは決して味わえない、ハイランド・パイプならではの快感なのです。


 さて、もう一方の指使いの方ですが、考えようによってはこれも非常に単純で簡単なのです。
 ハイランド・パイプでは、リコーダーやティン・ホウィッスル等のように指穴を半分塞ぐなんて小細工は効きませんし、金管のフルートのように複雑なキーが付いている訳でもありません。ただひたすら、8つの指穴を開けるか閉じるかの決められた組み合わせでたった9つの音を、常にフォルテッシモで出すだけなのですから…。

 もちろん、「これからハイランド・パイプを志そうとする方々へ」のコーナーでも書いたとおり、ハイランド・パイプの最大の特徴は装飾音のシステムが高度に発達していることなので、その習得には一定の修練が必要になります。でも、それはあくまでもプラクティス・チャンターでやることであり、その段階では実際にバッグを抱えている訳ではありません。ですから、バッグの操作に煩わされることなく運指の練習に集中することができます。そして、これも基礎的な練習を日々積み重ねることによって必ず上達します。

 ただ、指使いの練習はバッグの操作と違って一旦コツを飲み込んでしまえば「後は楽チン、ルンルン〜」という具合には簡単にはいかないことです。指使いの練習はとにかく奥が深いです。私はチャンター・プラクティスを始めて既に40年近いのですが、未だにチャンター・プラクティスをする度に自分の指使いの未熟さを呪いながら日々の精進を続けています。

 結論を言えば、ハイランド・パイプの演奏については、指使いの練習と空気の吹き込み&バッグの操作をそれぞれ別の作業と考え、各々別々に訓練を積み、最後に合体するという風に考えるのがミソだと言えます。そして、そういう風に考えれば、この楽器の演奏は実は頭を抱え込む程に難しいものだとは思えなくなるでしょう。


 言い換えれば、壁を乗り越えてハイランド・パイプの演奏を上達させるための大切なポイントは、バッグを抱えて実際にハイランド・パイプを演奏する際には、暗譜はもちろんのこと、頭の中でも楽譜を思い浮かべることないままに指が勝手に動く様になるまでその曲を完璧に身体に覚え込ませてから行なうようにすることです。そして、パイプの演奏中はドローンを安定して鳴らしチャンターとの絶妙の調和をいかに保つかということに集中し、吹き込み&バッグ操作に気を抜かないようにするのです。

 まかり間違っても、完璧に修得できていない曲をパイプで練習しないことです。そういう無理をすると、指使いに気を取られて吹き込み&バックの操作がおろそかになり、空気圧が一定せずドローンが不安定になります。その結果、パイプから発せられるのはチャンターとドローンの調和の無い《単なる騒音》に過ぎなくなります。このような演奏は自分自身も陶酔できないばかりか、周囲にも迷惑な上、演奏技量(指使い&バッグ操作の双方)の上達にはまるで役立ちません。

 また、とにかくはやくパイプを吹いてみたいからといって、正しいチャンタープラクティスをおろそかにしたまま、装飾音を抜いたり、自己流のいい加減な装飾音でとりあえず演奏してみる、などいうことは絶対に止めましょう。そのようなことをすると、指使いに間違った癖がついてしまい、演奏技術の進歩を妨げるばかりで「百害有って一利無し」です。

【質問5】
 ハイランド・パイプを入手したいのですが、あまりにも情報が少なく、どこで売っているのかわからず困ります。インターネットで検索しても、どれも英語で書いてあるサイトばかりで、なんだかお金を振り込むのも怖いし、かといってクレジットカードの番号を記入していいものか?、など不安がつのります。
【回答5】
 そうですね、それなりに値の張る楽器を海外から購入するのには、的確な情報が無ければ恐いですよね。それに、ケルト系の民族楽器や古楽器を通信販売している「ミュジカミリオン/アーリー・ミュージック・プロジェクト」のサイトには、結構厳しいことが書いてありますしね。
 ここに書いてある事は確かに一理あります。まあ「基本的にすべて不安定な不良品」と言うタイトルはちょっと間違った決めつけだと思いますが、「特別な知識と経験、技術がなければメンテナンスが不可能で、音も出ません。これをうまくコントロールした場合にのみ、演奏可能となります。初心者が購入していきなりマトモな音の出るバグパイプはないと思ってください。」ということはこのFAQのコーナーでも書いているとおりに、正にそのとおりです。
 …が、きちんとした知識を得れば、まあ、そんなに怖がることはないのも事実です。では、順を追って購入の手ほどきしましょう。

●国内の業者にこだわる必要はありません
 まず、あなたが今後本気でハイランド・パイプに取り組もうという高い志を持たれた方で、まともなハイランド・パイプを購入しようと考えているならば、あえて、国内の業者のオンラインショップを通じて購入しようとするのは避けましょう。

 「ハイランド・パイプの最大の生産国はパキスタンである。」ということは、その真偽はともかく、ハイランド・パイプ愛好家の間ではよく言われる事です。いわゆる「パキもの」(Paki-Pipes)と呼ばれるそれは、主にスコットランドの観光客相手の土産物店からの大きなニーズに支えられているのです。
 つまり、それはあくまでもスコットランド情緒の装飾品としてリビングの壁に飾るためにはなんら不足はないでしょうが、演奏用としては決してお薦めできるものではありません。
 もし、日本の業者サイトのオンライン・カタログにハイランド・パイプが掲載されるとしたら、それらはまず「パキもの」ではないか?と疑ってかかった方が無難だと思います。
そして、そのようなオンライン・ショップの悩ましいところは、それらをまるで本物のハイランド・パイプを思わせるような価格で販売しているということです。
 在庫管理経費やらなにやらで業者さんがそれなりの金額で販売しなくてはならないのは当然ですから、その行為自体を責めるつもりは毛頭ありません。要は購入しようとするユーザーの側がそのことを見抜く必要があるということです。

 ただ、業者によってはどうやら本物と思わしきハイランド・パイプをパーツ類まで揃えて輸入しているサイトも見受けられます。しかし、当然ながらそれらの価格には経費や利益が上乗せされているのですから、同じものを個人輸入するよりも随分高価になっています。
 ちなみに、そのカタログ価格を米英のディストリビューターで販売されている価格と比較してみたところ、チャンターなどは概ね6割増し、シンセティック・ドローン・リードは概ね2倍でした。(パイプ自体はメイカーが不明なので比較不可)

 今は個人での輸入がごく簡単に出来る良い時代なのですから、単に輸入代行してもらうだけのためにわざわざ高いお金を支払うことはないと思います。もし、予算がたっぷりあるのなら、その分もう一段グレードの高いパイプを選ぶなり、いずれ必ず必要になるリード類やパーツなどを購入する方が賢いのではないでしょうか。

●本物のハイランド・パイプを購入するためには?
 では、どうやって演奏用の本物のハイランド・パイプを適正な価格で購入するか?
 それはいたって簡単なことです。つまりは、信頼できる名の知れたパイプ・メイカーの製品を、信頼できる海外のディストリビューターから直接購入すればいいのです。(もちろん、メイカー自身が直接販売している場合にはメイカーから直接購入する方法もあります。)
 英国と北米大陸にはそれなりに名の知れたパイプメイカーが沢山あります。ハイランド・パイプは民俗楽器の中でも飛び抜けて市場規模が大きいと同時に、各々のブランドの評判はインストラクターと生徒の関係などを通じて口コミ等で確実に伝わりますから、各ブランドはその中でよりよい評価を得ようと切磋琢磨しています。当然、メイカーによって品質の高低はあり得ますが、ある面、極端に悪い評判が立ってしまえば、その後の商売に響きますから、そのような名の知れたメイカーなら品質の悪い製品は作るはずがありません。

 そういった名の知れたパイプ・メイカーについては、ボブさんの Bagpipe Web Directry マニュファクチャーの項に一覧になっています。そして、信頼できるディストリビューターについても、リテイル・パイプ・セールスの項に米国カナダ、海外(つまり主にスコットランド)のお店のリストが載っています。
 しかし、どちらにしてもかなりの数がリストアップされているので、正直なとこと初めての方は戸惑われるでしょう。そこで、そういった初心者の方には何はともあれハイランド・パイプ愛好者が最もよりどころとする College of Piping(CoP)オンライン・カタログから検討を始めることをお勧めします。

●お気に入りのパイプを選んで購入する
 このオンライン・カタログには、本国スコットランドの中でも選りすぐりのパイプ・メイカーの製品が、メイカー毎に最もベーシックなものから最高級のものまで並んでいます。
 それらをザッと見渡すことで、現在出回っているハイランド・パイプは木管にアフリカン・ブラック・ウッドを使ったものが標準であり、その上で値段に幅があるのは主にマウントと呼ばれる部分の素材によるということが理解されると思います。
 マウントは最もベーシックな木材の削り出しに始まって、ニッケル、ステンレス、プラスティック(Imitation Ivory とか、Artificial Ivory と標記されることが多い)、ニッケルとプラスティック、プラスティックとシルバーの半分づつ、そして、フル・シルバーという順に高くなっていきます。
 このカタログを概観したところで、先ほどのボブさんのところから各メイカー・サイトに飛んで、各メイカーの特徴やセールスポイントを押さえましょう。その中で徐々にハイランド・パイプについての知識を深める事ができます。その際、分からない用語が出て来たときは、ここで調べて下さい。

 ただし、当然ですがメイカーサイトには良い事しか書いてありませんし、写真や説明だけでは仕上げや音色などについては分かるはずもありません。そこで、製品の仕上げや音色などに関する実際のユーザーの評価については、ボブさんのテクニック&インストゥルメントのフォーラムなどを参考にするのがお薦めです。
 ボブさんのフォーラムの凄いところは膨大な量の過去ログが全て閲覧可能なことです。ですから、求めるメイカーの名前で検索を掛けてみると、過去にそのメイカーについて交わされたディスカッションが全てヒットしてくるのです。そして、これはそのメイカーの製品やアフターサービスなどに対するユーザーたちの率直な評価を得るために最も効率的な手法です。ただし、ボブさんのフォーラムにアクセスしているのはアメリカ&カナダ人が圧倒的に多いので、ここでの評価はスコットランド本土を含めたハイランド・パイプ愛好者たち全ての平均的な嗜好を反映している訳ではない、ということはあらかじめ含んでおく必要があります。

 そのような検討を経て、最終的にどのメイカーのどの楽器を選ぶかは自分の好みと懐具合との相談です。そして、いよいよ購入するパイプが決まったら、オンライン・カタログの画面でカバーやコードの色をセレクトして《ADD TO CART》のボタンを押し、指示に従ってクレジットカードで決済を済ませればそれまでです。間髪を於かず CoP からの自動注文確認メールが返ってきます。後は我が家で待つだけ。在庫さえあれば1週間から10日で貴方の手元に待望のハイランド・パイプが届くことでしょう。

 CD や楽譜、あるいはリードやメンテナンス・ツールなどの単価が安いものを取り寄せる場合は往々にして正にこれだけの事なのですが、実はハイランド・パイプなどの値の張るものを輸入する場合には、関税や消費税などが掛かると思っていた方が無難です。税額がそんなに大きくない場合はその荷を扱った業者(Fedex や DHL 等)が一旦税金を立て替え払いしてくれて税関を通してくれます。後日、通関に伴う書類と一緒に、その中に記されている税額相当分の請求書が業者から送られてきたら、指定の口座に振り込めばそれでお仕舞い。…ね、個人輸入なんてごく簡単でしょ。


 パイパー森は CoP とは 40年近い付き合いですが、これまで「CDを注文したのにカセットが送られて来た」とか「包装が貧弱だったためにCDのケースが割れていた」といったようなつまらない(?)トラブルはそれなりにありましたが(もちろん、それぞれちゃんと交換をしてもらいました)、根本的なトラブルの経験はありません。ここ数年、オンラインでのクレジットカード決済になってからもそれは同様です。
 ですから、これまで、オンラインでのカード決済をしたことの無い方でも、それ程不安にかられることなく、このような個人輸入にトライしてみたらいかがでしょう。もちろん、いつかアメリカであったように、クレジットカード会社から個人情報が流出してしまったような場合には、いずれにしても危険にさらされますので、万全という訳ではありませんが…。

【質問6】
 これまで、長年ライト・ミュージックをやってきましたが、ピーブロックを始めたくて、とりあえず手元にあった楽譜集“スコッツ・ガーズ2”の最後に入っているピーブロックの楽譜を見ながら練習を始めたのですが…

【回答6】
 あなたは「あるピーブロックを聴いて、その曲が気に入ったからその曲に取り組み始めた」のではなくて、「たまたま手元にピーブロックの楽譜があったから取り組みはじめられた」ようですが、そのような順序はピーブロックに取り組もうとする上ではやめたほうが良いと思います。

 私はこのサイトで繰り返し強調していますが、ピーブロックのニュアンスは《楽譜》では絶対に表しきれません。楽譜を《読んで》ピーブロックを演奏しようとするのは、順序が間違っています。

 まずは、何か一曲でいいですから、お気に入りのピーブロックを耳で聴いて、聴いて、聴いて、聴いて、聴きまくって頭にそのメロディーを完全に馴染ませてから、初めてその曲の楽譜を参照することです。そうすることによって、楽譜の細かいところ(明らかなミスプリや装飾音の不統一性など)に捕われなくなりますし、装飾音もすんなりと演奏できるようになります。

【質問7】
 ピーブロックを基本の基から始めるための、適当な教則本を教えて下さい。
【回答7】
 ピーブロックの基本の基を習得する教則本としては、なんといっても The College of Piping定番のチューター・シリーズの中の Piobaireach Tutor (別名:イエロー・チューター/別売 CD 有り)をお薦めします。
 1990年に当時の CoP 代表であった Seumas MacNeill によって書き下ろされましたが、2002年にほぼ内容はそのままに体裁を他のチューターと合わせた形にした改訂版がリリースされ、同時に音声資料が従来のカセットから CD フォームになりました。CD の中で解説とプラクティス・キャンターでの模範演奏やカンタラック・シンギングを交えながらで手ほどきしているのは、ピーブロックに関する深い知識を有するとともに絶妙のカンタラックを聴かせてくれる Angus J. MacLellan
 取り上げられている4曲は初心者向きでありながら、この4曲でピーブロックに関するあらゆる要素が一通り学べるようにセレクトされており、この一冊を真面目にこなせば立派なピーブロック・プレイヤーになれるはずです。解説部分の文字の多さにひるむかも知れませんが、そこにはピーブロックに関する様々な金科玉条が散りばめられているので、丹念に読み従うことを薦めます。

 もう一つのお薦めチューターとして Archie Cairn による The “How To”Piobaireachd Manual And CD があります。2004年にリリースされたこのチューターでは、ピーブロック特有の装飾音が一つ一つ丁寧に解説されているだけでなく、付属 CD に収められた模範演奏によりそれらを耳で確認できるので有効です。ただし、解説が詳細であるため初心者には少々ハードルが高く、どちらかというとある程度ピーブロックを学んできた人が、個別の装飾音の表現に行き詰まった時などのリファレンスとして重宝する内容です。
 著者・発行人である Archie Cairn さんはカナダのノヴァ・スコシア在住なので、この教則本は本国(スコットランド)の The College of Piping(CoP)や The National Piping Centre(NPC)では扱っていません。ボブさんのサイトのリンク集などを参照して北米のディストリビューターから購入してください。(北米のディストリビューターのお薦め、その1その2) 紹介記事⇒

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