ハイランド・パイプに関するお話「パイプのかおり」

第1話(2001/4)

プラクティス・チャンター

 

 一口にバグパイプと言っても実は世界中には様々なタイプのバグパイプが存在しています(した)。
 ちなみに、アンソニー・ベインズの「木管楽器とその歴史」(音楽の友社/初版は昭和40年、私が持っているのは昭和48年の第2版ですが、さっき音楽の友社のHPで検索したら出てこなかったので絶版みたいです。図書館でどうぞ。)のバグパイプの項でベインズは「すべての楽器のうちで、もっとも変種に富むこの楽器のすべての型を網羅するには、そのためだけに書物を1つ著す必要があるほどであるが、われわれがここで研究を試みている楽器中の王座を占めるということを除外しても、バグパイプが現在のリード管楽器の進化のために多方面にわたって果たした役割は非常に大きい。」と記しています。
 そして、ベインズは後年、その言葉どおりにバグパイプについての決定的な本、その名もズバリの“BAGPIPES”を著しています。私が持っているのはオリジナルの Oxford University Press から1973年に第2版として出されたものですが、その後一時絶版となっていたこの本は、数年前に再版されました。

 この本の構成は、第1章バグパイプとその構造、第2章原始的バグパイプとホーンパイプ、第3章東ヨーロッパのバグパイプ、第4章ツァンポーニャ(イタリアのバグパイプ)、第5章西ヨーロッパのバグパイプ、第6章ミュゼット(フランスのバグパイプの一種)とスモールパイプとなっていて、それぞれについて様々な資料を元に、実に詳細に解説されています。まず、これだけでバグパイプのハードウェアについての殆ど全ての知識を得ることができるといっていいでしょう。
 殆どと書いたのは、バグパイプについてはここ数年ヨーロッパ各地で一度は完全に廃れてしまった古いタイプのバグパイプを復活する動きが顕著で、ベインズがこの本を著した1970年頃とはちょっと様相が異なっていて、この本で紹介されていないようなバグパイプも、現在ではいろいろと復元されているという状況があるからです。
 でも、とにもかくにも、バグパイプについての説明としては「元来、ホーンパイプ(ケーンーCane/葦ーの上部に切り込みを入れてシングルリードとするとともに、下方に指穴を開けて笛とする。発展的に末端に動物の角をつけたのでこのように呼ばれる。)を演奏する上で、循環呼吸法を使わずに連続して音を出したいという考えから、これにバッグを付けるという事が発明されて出来たものである。」っていう文章を紹介するに留めて、あとは「さらに詳しく知りたい方はこの本を入手してお読み下さい。」って言い切るしかないのです。
 ってな訳でバグパイプ全般についてのパイパー森の説明はこれでお仕舞いにします。

 アッハッハ…、手抜きの極意。でも、「それじゃあんまりだ」という人は、バグパイプに関する究極のサイトである The Universe Of Bagpipes のサイトを訪ねて、世界中の様々なバグパイプを御覧になって下さい。


 ところで、ハイランド・パイプって楽器は、およそ人間があやつる電気的増幅装置を用いない(えへへ、つまり「アンプラグド」ってやつ)楽器の中で最大の音を出す楽器だと思います。和太鼓の大太鼓だとか、ジェゴグ(バリ島の竹のガムラン)の一番大きなやつ(あの自分が上に乗かって大きなハンマーで叩くやつ)といった超重低音楽器もありますが、何と言っても高音域で大きな音といったらハイランド・パイプの右に出る楽器はないでしょう。
 その上、この楽器の特徴はピアノだとかフォルテだとかいうような高尚な発想が全く無いってことが特徴です。つまりは一旦鳴りだしたら、常に一定の音量(それが最小かつ最大)で鳴り続けるしかない、というなんとも厄介な楽器なのです。
 そして、さらにはそのようにしてやかましく鳴り響くチャンターの音色に加えて、途切れる事なく同じ音量で同じ音程を延々と鳴らし続けるドローンノートが、バグパイプの音色に生理的嫌悪感を持つ人の脳みそをグリグリとえぐるって訳です。
 改めてこう書いてみると、この特徴ってのは他の楽器には全く例の無い特徴ですね。って言うか、ここまで来るともう「楽器という資格はく奪状態」じゃないのかな、これって。
 1746年の Culloden の戦いで負けた後のスコットランド人が武装解除された時に、ハイランド・パイプが武器として一緒に禁止させられた訳だよね。(


 さて、ハイランド・パイプを始めようとする人は、まず第一になにはともあれプラクティスチャンターを入手しなくてはなりません。
 ハイランド・パイプはどんな曲でも必ず暗譜で演奏しなくてはならない楽器ですから、プラクティスチャンターはたとえ本物のパイプが吹けるようになったとしても必須のものです。初心者向けの練習用楽器というものではありません。どんなに習熟したパイパーでもまずは演奏しようとする曲をプラクティスチャンターで完全に頭にというより指に覚えさせてからパイプで演奏するわけです。ですから、プラクティスチャンターとパイプ本体とは一体のものと考えた方がいいのです。

 そして、プラクティス・チャンターと一緒に揃える教則本としてはカレッジ・オブ・パイピングのカレッジ・チューターVol.1が最適でしょう。最近では、この教則本のカセットテープや CD、さらにはビデオまでも用意されています。
 オンライン・カタログにはそれらをまとめてスターター・キットとした「教則本、教則 CD、プラクティスチャンター、リード」がセットになったものが用意されています。

 ちなみに、1975年に私のパートナーがイギリスから買ってきてくれたのも、やはりプラクティスチャンターと教則レコード付き教則本でした。カレッジチューターにはその頃はまだ教則テープは用意されて無かったのですが、幸運なことにドナルド・マクロードという20世紀後半を代表するパイパーが肉声(すごいスコットランドなまり)で教えてくれる教則レコード(!)付き教則本を一緒に見つけてきてくれたので、私はそれだけで1年間独習しました。非常に有効なこの教則本が無かったとしたら、多分私は本物のパイプにまで到達しなかったと思います。
 やはり、身近にパイパーが居ない場合(日本では殆どの場合そうでしょう)には、音声の入った教則素材は必須でしょう。その意味では現在は本当に恵まれています。

 またまた話しが横道にそれてしまいますが、この教則本で印象的だったのは、その中でドナルド・マクロードが“Keep your fingers straight !”“It is the Golden rule of piping.”と繰り返し言っていた事です。
 そうです、一流のパイパーの演奏を真近で見た事のある方は気づかれたと思いますが、ハイランド・パイプの演奏で特徴的なのは、指を真っ直ぐに伸ばして演奏することです。これは他の管楽器を演奏される人にとってはかなり奇異な演奏スタイルになるのかもしれませんが、幸か不幸か小学校の音楽の時間に演奏したリコーダーを除けば、管楽器はおろか他の楽器を全くやったことのない私は何の疑問も無く、このドナルド・マクロードの言うところの「パイピング大原則」を忠実に守って指使いの練習をしていました。その甲斐あってか、後日、カレッジ・オブ・パイピングの正統的な指導方法を取り入れてパイパーを育成されていた山根先生率いる東京パイピング・ソサエティーの練習に参加するようになった際にも、全く違和感なく溶け込むことができました。

 そして、今にしてつくづくと思うのですが、この「指を真っ直ぐにする」という運指法を最初から徹底していたお陰で、後日、取り組む事になるピーブロックでの特徴的な指使いである Crunluath (クルンルアー)や Crunluath-a-mach (クルンルアー・ア・マッハ)といった、目にもとまらない程の超スピードで指を動かす装飾音なども、それ程苦労することなく(それなりに)演奏できるようになったのだと思います。

 実はこのことは、ある時、そのような基礎ができていないと思われるある日本人パイパーの演奏を見た時に初めて気がつきました。そのパイパーは確かにマーチやスローエアはそれなりに演奏していましたが、「ピーブロックも演奏したいのだけど、どうしてもクルンルアーが上手くできなくて…。」と言われるので、試しにプラクティス・チャンターでの指使いを見せてもらったところ、見事に指をまるめた指使いをされているのでした。
 それまで、カレッジ・オブ・パイピング仕込みの正統的な指使いを基礎から徹底的に教え込まれる東京パイピングソサエティー育ちのパイパーしか知らなかった私にとっては、そのような指使いを見るのは初めてのことでしたし、そのようなパイパーが居る事自体が驚きでした。
 そのように指が曲がった状態では、ハイランド・パイプの音楽、特にピーブロックを演奏する上での要ともいうべき、明確で端切れの良い装飾音を奏でることは到底無理です。クルンルアーやタールアーはおろか、右手小指をチャンターに思いっきり叩き付ける感じで演奏する Birl(バール)ですらまともに奏でられるのか…? いやいや、それどころか、ストライクとかエコー・ビートとか呼ばれる同じ音を2つに区切るたった1音の装飾音ですら、端切れよく演奏できないでしょう。
 私はそのパイパーを傷つけたくなかったので口にこそ出しませんでしたが、彼がこれから精進してクルンルアーをまともに演奏できるようになるためには「並み大抵の努力では無理ではないかな〜。」と思いました。一旦、付いてしまったクセというはなかなか直せないものですからね。

 ところで「指を真っ直ぐにすると装飾音が奇麗に演奏できるのは何故か?」と思って、自分なりに解析してみました。色々考えたり試したりして一つ思い付いたことがあります。
 どうやら「指を真っ直ぐにした状態」と「指を曲げた状態」での運指では、使う筋肉が全く違うようです。指を曲げた状態では手首の内側の手のひらに近い部分の細い筋肉がピクピク動きますが、指を真っ直ぐにすると腕の肘に近い部分の太い筋肉がピクピク動きます。
 私は、特段プラクティス・チャンターを手にしていない時でも、ボールペンや傘の柄で、真っ直ぐにした指でボールペンや傘の柄を叩き付けるようなトレーニングをしています。また、テレビを見ながらでも、Dunfion の Dirk Handle Chanter を(リードは付けずに)手にして、チャンターが「タンタン」と音を立てる程に激しく指を叩き付ける動作を繰り返したりします。そんな時にはその部分の筋肉がパンパンに張って痛くなる位。
 どうやら、そのようにして日々、指を真っ直ぐにしたままで動かす太い筋肉を鍛えているとピーブロック特有の装飾音が歯切れよく演奏できるようになる、ということもあるような気がします。

 「管楽器を演奏するために筋肉を鍛える」という概念は直ぐには納得しにくいかもしれませんが、ことハイランド・パイプに限ってはどうやらこれがこれが正しい理屈のような気がします。ピアノがある意味で打楽器であり、指を激しく動かす強靭な筋肉が必須であるのと同じように…。

 もし、このサイトを読んでハイランド・パイプを始め、そしていつかはピーブロックを演奏してみたいと思われる方がいたら、このことだけは必ず守ってください。“Keep your fingers straight !”“It is the Golden rule of piping.”です。


 さて、いよいよ本題に入りましょう。今回は私が愛用している2本のプラクティスチャンターとそのケースのお話です。

 私が現在、通常使っているプラクティスチャンターは東京パイピング・ソサエティー(1974年設立)の創立者であり日本のハイランド・パイプ界の重鎮、まあ、この方がいなければ日本のハイランド・パイプ愛好家たちの今の姿は無かったと断言していいほどの重要人物である、山根先生の作られたプラクティスチャンターです。
 先生というのも、山根さんはつい最近退官されましたがそれまでは早稲田大学理工学部の教授であられまして、機械工学やオーディオの専門家なんです。
 若い頃、イギリスに留学した時にハイランド・パイプにハマってしまったということで、自ら演奏し、仲間をつのり、日本で唯一の本格的なパイプバンドを編成するだけでなく、奥様の目を盗んでは数多のパイプ(昔の職人が作ったお宝パイプとか、ノーサンブリアンスモールパイプとか、etc.)を入手されてこられた方です。
 それだけではあきたらず、学問とバグパイプの融合を計るため(?)に、学生さんの研究テーマとして今でいうところの指ロボットにチャンターを演奏させたりなんてこともなさっていました。
 後年は体力の衰えから(と御当人はおっしゃってましたが)バンド活動や演奏指導は息子さんに任せ、ご自身は体力がなくても演奏できるパイプオルガンに凝られていました。なんといつぞや、パイプバッグの張り替えをお願いしにお宅に伺った時には、自分の退官記念だとかいって、自作(!)されたという本物のパイプオルガンを自宅リビングに設えられて御満悦でした。(トッカータとフーガの重低音、スゴかった〜!)まさに、「近所迷惑楽器友の会」名誉会長ってところですね。

 そんな山根さんは私財を投げ打って京王技研と共同開発したバグパイプチューナーの開発者として世界中のハイランドパイパーの間でも有名です。
 それというのも、このバグパイプチューナーのお陰で各々のパイパーにとってはチャンターリードの音程の具合が一目で分るようになってリードの調整に革命的な進歩がもたらされましたし、パイプバンドではバンドサウンドの根幹を成す「ビシッ」と揃ったドローンノートが、いとも簡単に実現できるようになったからです。ハイランド・パイプを演奏したことのある人なら容易に想像できるのですが、十数人のパイパーが同時に演奏するあの大音量の中でドローンノートを耳だけでビシッと合わせるというのは簡単なことではないんです。

 そのような山根さんが作った山根スペシャル・プラクティスチャンターというのは、これまた非常に優れものです。
 プラクティスチャンターのリードはかなり早い時期からプラスティックの物が使われていました。少なくとも私が始めた1975年には完全にそのようになっていました。
 当然、その昔はパイプチャンターと同じケーンを使ったものだったのでしょうが、一度バッグに溜められて余分な湿気が抜けた空気によって鳴らされるパイプチャンターリードと異なり、直接口で吹く息にさらされるプラクティスチャンターではリードは直ぐに水分を含んでしまいますので、多分音程はすぐに不安定になっただろうし、またリード自体の寿命も非常に短かったのではないでしょうか。想像するだけでもいやになっちゃいますね。
 そんなわけで、おそらくある人がかなり早い時期にケーンの代わりにプラスティックを使い始めて、瞬く間にそれが業界の標準となったと想像されます。
 プラスティックのリードの寿命は殆ど半永久的でして、ちなみに私の使っているリードはもう思い出せないくらい古いものです。多分20年以上経っているでしょうが全く消耗する気配がありません。
 もちろんプラスティックのリードにも音色や立ち上がりにばらつきがありますが、幾つか試してみてちょうど良いリードが見つかったらスペアリードなんてことは事実上まったく考える必要はありません。ただ、プラクティスチャンターを真夏の車の中に放置してリードを溶かしてしまったりするようなそそっかしい人はスペア持ってた方がいいかもしれませんが…。

 ところがその一方で、水分をまったく吸収しないプラスティックリードの欠点はリード自体が結露状態になって止まってしまうこと。熱心に練習すればするほど時々キャップを外してリードの水分を飛ばさないといけない訳です。これは特に、本体が伝統的な木製のものではなく、エボナイト製のものの場合に特に顕著になります。
 そこで、発明家山根教授は考えた。「しからば吹き込んだ息がキャップを抜ける間に可能な限り水分を除去することはできないか?」と。
 というわけで山根さんはなんとチャンターのリードキャップ部分を太さの違う2本のニッケル管を組み合わせた2重構造とし、その隙間を通る間に熱伝導の良いニッケルの放熱効果を利用して空気中の水分をニッケル表面で結露させてしまい、結果的にリードに到達するときの空気をドライにするという妙案を考え出したのです。
 そして、その効果は絶大で、長時間吹き続けてもリードが水分で止まってしまうということは全くないという素晴しいプラクティスチャンターが出来上がったのでした。練習が終った時には、キャップを外して反対側から吹くと、吹き口からそれなりの量の水分(つまりは「だ液」って訳。きたね〜!)が出てきます。でも、日常的なメンテはそれだけで済むのです。素晴しいでしょ。
 現在、このウォータートラップ付き“山根スペシャル”プラクティスチャンターを持っているのは多分世界でも東京パイピングソサエティーの限られたメンバーだけという貴重なものなのです。
 ただ、このプラクティスチャンターの唯一の欠点は、一般的なものに比べてキャップ部分が異常に重いので重心が上の方にあるということですが、それも慣れればどうってことはありません。ロングタイプのプラクティスチャンターは基本的にはソールの部分を膝にのっけて演奏するものなのですから。


 今回私が紹介するお宝プラクティスチャンターの第2弾は、なんとドローン付きプラククティスチャンターです。
 ハイランド・パイプの魅力っていうか魔力っていうのは、やはり1つには演奏中に絶対に音が途切れないってこと、そして、もう1つが脳みそをもドロドロに溶かすあのドローンノートにあるわけです。
 ところが、プラクティスチャンターで練習している限りにおいては、実はこの二つの要素が共に欠けるわけですね。
 音が途切れないようにするためにはディジェリドゥの演奏では必須の循環呼吸法(サーキュラー・ブリージング)を使う修得すればいいのですが、そうかと言ってこれはだれでもができると言う訳ではありません。元々そんなことが誰でもできるんだったら、バグパイプなんてものは発明されてなかったはずですから。
 でも、実はこれが出来たらすごいことでして、一度、ある有名なパイパーが9分程のピーブロックをプラクティスチャンターで循環呼吸法で息継ぎせずに演奏するのを聴いたことがあるんですけれど、それはメチャクチャ感動しました! 「う〜ん」っと唸ったきり言葉が出ませんでした。

 さて一方、もう1つの魔力、ドローンノートについては、チューナーでドローンの音程の電子音を出しながら練習するって方法もないことはないのですが、やはり音色が今一つ馴染まなくて、それまでしてやりたいとは思えません。
 ところが、やはりいるんですね〜。同じことを思う人が。
 David MacMurchieってパイプメイカーがドローン付きのプラクティスチャンターを作っちゃったんです。

 いや〜、これ楽しいの。実に楽しいの。写真のとおりドローンパイプはごく細いんだけど、ドローンのLow Aの音とチャンターのLow Aがハモるとその振動が指からビンビン伝わってきて、身体中を駆け巡るんだよね。
 つまり、このプラクティスチャンターで循環呼吸法を使えば(つまり自分自身の肺をバッグにする訳だ)バグパイプの2大特徴を備えたままで、曲の練習ができるという訳ですね。これが出来たら言うこと無し!
 てな訳で、心とお金に余裕のある人、あるいはすでに循環呼吸法ができて手軽にバグパイプサウンドに陶酔したい人などにはこのプラクティスチャンターぜひお薦めします。


 先にも書いたようにプラクティスチャンターってのはパイプ本体と切っても切り離せないものだから、普通はパイプケースの中に一緒にしておくものですけど、プラクティスチャンターだけ肌身離さず持ち歩きたいという熱心な人の場合は、フルートケースの皮製のアウターカバーを使うっていうのも1つの方法だと思います。私もそうしていました。
 でも、なんでも手作り派の私はこの2本のプラクティスチャンターが揃った時に「こりゃ、この2本を同時に収納できる専用のケースを作ったらイカスな〜。」って思った訳です。…で、作ったのがこのケース。

 全景です。外寸は10cm×10cm×63cm。15mm厚の板を使っていますから、内寸は結果的に7cm×7cm×60cmに成ります。肩に欠けられるように取り外し自在のショルダーベルトを付けてあります。

 ふたを開いたところ。20mm厚のハードウレタンをカットして作ったホルダーに2本のチャンターがぴたりと収まっているところ。ふたに付いているウレタンでふたを閉めた時にはチャンターがしっかりと固定されるようになっているので、どんなに揺さぶっても中ではコトリともしません。

 

 ドローン付きのチャンターの方は例のウォータートラップ付きではないので、吹き終った後は内部やジョイント部分のヘンプ(黄色い糸のこと)をなるべく乾燥させておく必要があります。でも、練習場所から持ち帰ってまた開いて乾燥させるっていうのも手間なので、練習を終えると全てのパーツを分解して、それぞれをやはりウレタンで作ったホルダーに挟み込んでふたを閉めます。ふたのホルダーに挟まっているのが分解された小さなドローンパイプ。この状態でふたを閉めればやはり、全てのパーツがしっかりホールドされるようになっているので、そのまま持ち運びできます。

 

 2本のチャンターを外に出したところ。左側に見える黄色いツールはヘンプをカットするための折り歯式ミニカッター。その左の赤いキャップのついた白いパーツは今は無き王室御用達のパイプメイカー“LAWRIIE”のリードケース。スペアリードが入っています。必要無くてもそういうものを入れておくのがカッコ付け屋の真骨頂なのです。この二つとも、底に張ったウレタンに彫り込んだみぞにぴたりと挟まっているので暴れるようなことはありません。そして、一番左側の2枚のウレタンに挟まれた見える白いケースはYAMAHAのコルクグリース。ヘンプに付けるのでこれは必需品。良く見えないけど、ヘンプを巻き付けた超小型の糸巻きもウレタンに穿った穴に埋め込んであります。

(なお、このケースを作るのに使った材料は全て東急ハンズ新宿店で調達しました。)

※ 独立国だったスコットランドは、1707年に連合法の成立によってイングランドに併合されてしまいました。しかし独立の夢を捨てられないスコットランドは、ジェイムズ2世(この人が1690年にイングランドのウィリアム3世に負けたことが、併合の直接の原因となりました)の長男である2歳のジェイムズ・フランシス・エドワードを担いでジャコバイト運動を展開しました。そして、その頂点が、ジェイムズの長男であるチャールズ・エドワード・スチュワートの反乱でした。
  彼はその美しい顔立ちから「ボニー・プリンス・チャーリー」と呼ばれ、言動にカリスマ性もあったために、多くのスコットランド貴族が彼のもとに集結しました。一時はロンドンにも迫ろうという勢いでイングランドに侵攻したチャーリーでしたが、イングランド軍の大反撃にあい、1746年の“カローデンの戦い”で壊滅。チャーリーは国外に逃れ、二度と故国の土を踏むことはできませんでした。そのためこの戦いは、特にハイランドにとっては(スコットランドは北部の高地地方「ハイランド」と南部の低地地方「ロウランド」に大別され、一般的にはロウランドは早期にイングランドに服従していましたが、ハイランドは徹底抗戦を掲げていました)まさに伝統も文化も権利も、すべてを押さえつけられることになった「崩壊」をもたらしたのです。[戻る]
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