ハ イランド・パイプに関するお話「パイプのかおり」 |
第13話(2003/6) お薦めのピーブロック音源 ● お薦めCDはこれだ! ● 著名なパイパーのソロアルバムには大体1、2曲のピーブロックが 入っています。私はそれらを全て購入して、その1、2曲のピーブロック以外は全く聴かない、というまことに不経済的なこ とをやっています(というか、やら ざるを得ないのです)が、皆さんにはまさかそんなことは薦められません。 そこで、私がここでお薦めするのは、「1枚全部が ピーブロック!」という無駄の無い(そして、ピーブロック好きにはたまらない)CDです。そのような CDについて、収録されている曲目等からお薦め度の高い数枚のアルバムを紹介しましょう。 1 Piobaireachd (25th Glenfiddich Piping Championship) /LISMOR(LCOM5267)/1999 1974年に始まった Glenfiddich
Piping Championship(以 前はGrant's Piping
Championshipという名称だったのですが、Grant's がGlenddich
に吸収されたので途中からこの名称になったようです。)の25周年にあたる1999年のコンペティションの上位5人の演
奏をその成績順に収めたアルバム。
そんな選りすぐりの5人の演奏を収めたアルバムが悪かろうはずはないのですが、それにも増して、この時の5曲がまたまた
素晴しい。いちいち曲名を上げても
皆さんにはチンプンカンプンでしょうけど、どの曲もどこのコンペティションでもたびたび演奏されるような、多くのパイ
パーに人気のある名曲ばかりでなの で、なんと言ってもお薦め度 No.1 です。 さらに10ページのライナーノートには、この時のコンペ結果の詳細、18世紀に遡るコンペティションの歴史について の話し、過去の優勝者一覧、そして出場した10人全員のプロフィールなどが書かれているのも有り難いところです。 ●曲名&演奏者● 2 Piobaireachd -The Classical Music of the Great Highland Bagpipe/LISMOR(LCOM9016)/1989 Lismor レーベルの “The World's Greatest Pipers” シ リーズは、Monarchレーベルの “Pipers of Distinction” シ リーズと並んで、現代の著名なパイパーのソロアルバムシリーズです。
このWGPシリーズでは、現在のところ15人のソロアルバムがリリースされていて、それぞれのアルバムには1〜2曲の
ピーブロックが収録されいますが、こ のコンピレーションアルバムはこのシリーズの内
の初期にリリースされたアルバムを中心に、LISMOR
レーベルが所有すると思われる音源からピーブロックだけを抜き出して編集したもの。 6ページのライナーノートにはピーブロックの解説や歴史が小さな字でぎっしりと書かれている貴重なもの。第 12話で紹介した文章はこのライナーノートに書かれているものの一部です。 ●曲名&演奏者● 3 The Great Highland Bagpipe -Piobaireach:Ceol Mor: Big Music/LISMOR (LCOM5275) /1999 Lismor から最近新たに "The Great Highland Bagpipe" のタイトルの下に、 MSR のアルバムなど4種類のアルバムがリリースされました。これはその中のピーブロックを特集したアルバム。 トッププレイヤーたち5人による5曲が収められていますが、どちらかというと「当代の〜」というより「歴代の〜」と 言う方が適当な人選。P/M Angus MacDonald や P/M Donald Macleod といった既に亡くなっている名人級パイパーや P/M John D. Burgessのよう に 1950年代から活躍している(といってもこの人、当時16才でチャンピオンになったという早熟の超天才ですけど)大御 所の演奏が聴けるのはなによりです。 "Lament for Patrick Og MacCrimmon" に
ついてのも、そいういった大御所の一人である Donald
MacPherson の演奏を
聴くことができます。1のアルバムの Greg
Wilsonの演奏と聴き比 べるのもまた興味深いところです。 ●曲名&演奏者● 4 1990 Glenfiddich Piping Championship (Piobaireachd)/(KRL) Monarch (CDMON811)/1991 1
で紹介したコンペティションの1990年の5人のパイパーの演奏を収めたアルバム。クレジットはされてないけど、当然この時の上位5人の演奏だと思われま
す。 ●曲名&演奏者● 5 Ceol na Pioba - Music of the Pipes /Greentrax (CDTRAX5009)/2000 サ ブタイトルが A Concert of Piobaireachd From 1999 Edinburgh International Festival となっているとおり、1999年のエディンバラ・フェスティバルのプログラムの 一つとして開催された表題のコンサートの模様を収めたアルバム。 表題はピーブロックに特定しているようにはみえませんが、実際はこのコンサートはあくまでもピーブロックのみに限定
したものです。 う〜ん、でも実際には「魅了された」なんて生易しいもんじゃなかったでしょうね。どちらかというと「観客は(ピーブロックの)魔法に掛けられて動けなく なった」と訳した方が雰囲気が正確に伝わりますよね。6人×2、3曲ってことは、どう考えても2時間は優に超すピーブロックを途切れることなく聴かされたら、 普通の人は完璧にシビレルわな〜。 このアルバムにはその内7曲51分余りが収められています。 中でも特に注目は、唯一2曲の演奏が収録されいる
Barnaby Brown の演奏です。この人の活動については別途一回分の話しとして紹介する
必要があるのですが、とりあえず、ここでは簡単に紹介しておきましょう。 ●曲名&演奏者● ※ 要注意!(2020年7月記) 6 Piping Centre Recital Series /Series 2 (1997) vol 3/Arthur Gillies and Gavin Stoddart/Temple(COMD2077)/1998 1996 年に新たに設立されたパイピング振興組織、パイピング・センター(The National Piping Centre)に於いて、1996〜1998年に連続して開催された著名なパイパーたち によるリサイタルでの演奏を収めたシリーズ。全部で10枚のアルバムにそれぞれに2人づつの演奏が収められています。こ のアルバムはその2年目に当たる1997年の3巻目。 で、実はこのリサイタルはピーブロックだけではありません。というより、ピーブロックが演奏されることの方が少な
い。私は10枚全部の中身をチェックしてピーブロックの入っていないアルバムは手を出していません。 では、最初の約束にも関わらず何故このように不経済なアルバムを紹介するのでしょうか? それは、このアルバムには恐れ多くもピーブロックを聴いてみようと思う人は絶対に避けて通ることのできない名曲中の名曲、名演中の名演が収められているか らです。それは、アルバムの最後を飾るGavin Stoddart による "Lament for the Children" の 演奏です。世界中のパイパーに最も 愛されている曲だけに音源の数は多いのですが、何故かこれまで紹介した5枚の中には、ピーブロックの最高傑作と誰も が認めるこの曲が収められていません。 数多の音源の中でも、 Gavin Stoddart によるこの演奏は飛び抜けています。演奏時間もそれらの中で最も長く、およそ19分かけて Seumas MacNeilll 言うところの「大鷲が大空の彼方から悠然と舞い降りてくるかのような」この大曲を悠々と聴かせてくれます。ピーブロックというのはゆっくり演奏するのが難 しいんです。3で紹介した John D.Burgess にしても、この Gavin Stoddart にしても、歳を重ねて円熟の域に 達したパイパー程、そのような名演奏を聴かせてくれるものです。 乱暴なことを言ってしまえば、↑で紹介してきた5枚のアルバムを買わずとも、この Gavin Stoddart による “Lament for the Children” を聴くためだけにもこのアルバムを買う価値はある、と言えるで しょう。それ程に 素晴らしい名演奏です。 ●曲名&演奏者●(piobaireachd) ● お薦めDVDはこれだ! ● 2003 年に最初にこのお薦め音源のページを書いた時には、紹介できるようなピーブロック・オンリーの映像ソースは 無かったので、紹介していたのはCDのみでした が、最近ではやっとそのような映像が収められたDVDが出回るような良い時代になったので、このページに加 筆して紹介します。 1 The Band Room Masters - Piobaireachd Vol.1 / The Band Room (NTSC DVD/T09000005)/2005 これは 2004 年に The Band Room の主催により、National Piping Centre のホールで開催された The Band Room Masters Invitational Piping Competition に於けるピーブロック部門の様子を収めた DVD。 このコンペに招待さ れたパイパーは現代を代表するトップパイパーばかりであり、トップになった Willie McCallum による演奏時間20分を超す長大な“Lament for Donald Ban MacCrimmon ”を始め、2位の Jack Lee によって(6で紹介した Gavin Stoddart の演奏に継ぐ)17分に渡って悠々と演奏される“Lament for the Children”あるいは永遠の名曲“Lament for Patorick Og MacCrimmon”など、演奏された曲も超が付く程にポピュ ラーな曲ばかりなので、ピーブロックを初めてに鑑賞する人にも文句無くお薦めです。 全部で7人演奏の 内、上位4人のみがフル演奏で後の3人の演奏はウルラールのみですが、フル演奏の曲については、曲の冒頭に このコンペのジャッジの一人である、John Wilson のナレイションによりその曲の由来等につい ての解説が入るので、初心者でも鑑賞しやすいと思います。ただし、通にとっては、ナレイションがウルラール の演奏と重なってしまうのが少々残念ですが…。 コンペティションの 舞台で見せるパイパーたちの個性的な表情や姿勢、そしてピーブロックを演奏する際の独特の(太極拳を思わせ る)スローな足の運びなどが鑑賞できるのは、なんといってもビジュアルなソースの強みです。 ●曲名&演奏者● ※ 残念ながらその後、2005年にリリース元である The Band Room が破産してしまったので、現在ではこの貴重なDVDは入手不可能になりました。いつの日にか、どこかの組織がこの映像の権利を入手して再度リリースされる ことを期待しましょう。 2 Piping Live! Masters - Invitational Solo Piping Competition 2005 / Greentrax (DVTRAX2020)/2006 “Piping Live!”- The Glasgow
International Piping Festival は、毎年8月上旬の1週間に渡り、
グラスゴーの街を舞台にその名のとおり世界各地の様々なバグパイプのステージやパフォーマンスが繰り広げられるイベント
です。 Angus MacColl、 Iain Speirs、 Bruce Gandy に加えて、最近再びコンペティション・フィールドにカムバックして以来、以前と全く変わる事なく第一線で活躍している往年の名手 Murray Henderson の 4人。収録時間が1時間50分に及ぶにも関わらずたったの4人しか登場しないのは、今回はピーブロックの演奏だけでな く、各人の MSR(マーチ、ストラスペイ&リール) の演奏とともに、どうやら各人の自宅で収録したと思われる丁寧なインタビューも収録されていて、さらに中身が濃くなって いるためです。 前作同様、各曲の前には、John Wilson の ナレイションによりその曲の由来等についての解説が入りますが、今回の DVD ではナレイションのバックで流れるのは、各々のパイパーによるステージ上での直前のチューニング風景の映像となってい て、一番の聴かせ所であるウルラール の演奏にはかぶる事が無くなっています。多分、批判が集中したと思われる前作の反省によるところでしょう。そして、この 映像のお陰で名手たちが演奏直前に いかにチューニングに神経を尖らせているか、という様子が生々しく伝わって来るのも興味深いところです。 倒産してしまった The Band Room に代わって今回のメインスポンサーは Glenfiddich のようですが、DVD自体のリリース元は今年、創立20周年を派手に祝ったばかりのスコットランドの老舗 レーベル Greentrax です。可能ならば、昨年の DVD も改めて Greentrax が再度リリースして欲しいと切に願うところです。 ●曲名&演奏者●(piobaireachd) ※関連記事→パイパー森の音の ある暮らし《2006年8月》 ● 購入手段 ● 私がこれらのCD等を購入するのは
College
of Piping やThe National
Piping Centre のオンラインショップと、主にスコットランドの音源を扱うオンラインショップ MusicScotland で
す。 皆さん、それぞれサイトの指示に従ってこれと思ったアルバムや曲を購入して、お気に入りのピーブロックにどっぷりつ かってみることです。新しい世界が開ける事、必ず保証します。 Have a nice Piobaireachd life! |
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