パイパー森の音のある暮らし《2002年》
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今日はあのフォーエバー・ヤングな足利トリオ、またの名をピッグ・オン・ザ・トゥリー(あっ、逆か?)のライブを見にヴィレッジ・グリーンに出向きました。
自らビジュアル系を名乗るってところが何とも笑える中年のオジサン2人とオバサン1人がひとたび楽器(フィドル・ギター・ドラム)を手にすると・・・、それはもう文字通り「灼熱のライブ」って感じで、「(弓の)馬毛よ千切れろ! ギターの弦よ切れろ!」とばかりに怒濤のようなリール、ジグ、ポルカの嵐を放つ。(これ、大げさじゃないんです。本当に切れるんです。ワンステージに一回は必ずギターの弦が切れる・・・。) かと思うと一転して、大胆にアレンジされたロッホ・ローモンドやオリジナルのスロー・エアーでは、実にしっとりして心にしみいるような素晴らしい演奏を聴かせてくれます。 50才近い中年の男女が「〜ちゃん」「〜くん」と呼び合い、会場には奥さんや旦那さん、さらには成人したお子さん達まで駆け付けている。30年に及ぶ長〜いパートナーシップが生み出すピッタリ息の合った演奏とほのぼのとした雰囲気は、そんじょそこらの輩が真似をしようと思っても、とてもとても真似できるものじゃない。何とも神々しいほどにうらやましい世界です(誰だ、神々しいってのはギタリストの齋藤さんの頭のことか?って言っているのは・・・)。 「目指せ(トラッド界の)ダークダックス!」ってのはヴィレッジ・グリーンの村長さんの言葉だけど、いや〜、私は。風体とその長寿さはさておいて、あの灼熱の演奏ぶりから言えば、足利トリオにはトラッド界のクリーム!って言う呼び方の方が似合っているように思いますが・・・。 あちゃ〜、言っちゃった・・・。 |
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前回に続いてアイリッシュ・チューンの題名シリーズ第2弾って訳じゃないけど、今朝の《森のステージ》はまるでそんな感じでした。
朝霧が近くの山の頂きをすっぽり覆っていて、とても幻想的な雰囲気。 シーンと静まり返ったこの荘厳な雰囲気を平気でブチ壊すなんて…、そんな無神経な輩は一体どこのどいつだ〜ッ! は〜い、ここにいる、パイパー森で〜す。 てな訳で、今朝のピーブロックは“Lament for Mary MacLeod”でした。 お盆ですから、先祖の霊を敬って昨日に続いてラメントです。って、大体、ピーブロックは殆どがラメントじゃないかって? はい、そのとおりです。いつでも、ラメントばかりなんです。ハイ。 ところで、今朝は、《森のステージ》の駐車スペースに車を止めようとしたときに、国道をエッチラオッチラ自転車で登ってくる人がいました。森のステージが接している国道は、およそ標高2200mを越す峠に向かってつづら折りの登り坂が続いています。お盆休みのこの2、3日はいつもの何倍もの車が通りますが、ときどきはこのようにサイクリストも見かけます。 でも、このサイクリストは普通のサイクリストとはちょっと違っていました。 なんと乗っている自転車がプジョーの折り畳み式のやつなんです。あのちっちゃな車輪にちゃんとサスの付いたやつ。真っ赤なメインフレームに大きく“PEUGEOT”とレタリングしてあるので間違いようがありません。自由が丘あたりでよく見かける「オシャレ〜!」なやつですよ。 う〜ん、おぬし、やるな〜。 って感心してしまいました。察するに、麓の茅野の駅まではそのプジョーを折り畳んで抱えてきて、それからおもむろに駅前で「ほれ、見ろ」とばかりに“PEUGEOT”のロゴを見せびらかしながら自転車を組み立て、さっそうとチャリッって来たのでしょう。 国道から《森のステージ》まではおよそ100m程離れているのですが、私がおもむろに演奏を始めた時、その人、ひと休みしていたらしく、ガードレールに腰掛かけながらこっちの方を見て、完全に目が点になっていましたが…。 《森のステージ》は山荘から国道を標高差150m程(距離にして2km位かな)登ったところにあるので、パイプを吹く時は車で行くのですが、実は私も毎日夕食前には(ごはんを美味しく食べるため)息子と一緒にマウンテンバイクまがいの自転車で一気に登ります。いつもヒーヒーゼーゼーになりますが、帰りは雄大な八ヶ岳の景色を見ながらただただ疾風のように下るだけなので気分いいんです。 今日もいつものように夕方登って行き、ちょうどゴール地点でヒーヒーになっていたところに、件のプジョー氏が疾風の様に坂道を下ってくるところに出くわしました。今度は同じサイクリスト同士ですから、思わず目が会って会釈しましたが…。 ということは、彼はあの後、2200m辺りにあるヒュッテまで行き、そこらの山を散策でもした後、今度は標高差1400mをプジョーの折り畳み式赤チャリで一気に下っていくところだったのでしょう。 もし、そうだとしたら、それって、あんまりにもカッコ良すぎると思いません? |
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2002/8/17
(土) 暖炉に火を… |
入れようかとも思う程に肌寒いこともあります。
この2、3日は少々天気が安定せずに、特に標高1700mのこの山荘の辺りはまるで山岳気候なので、茅野の町が晴れ渡っていても、山荘の辺りは雲の中って感じになると、はっきり言って肌寒い程です。 そんな中、晴れ間を縫って午前10時頃に《森のステージ》に行ってきました。 今日は久しぶりに以前から大分吹き込んであるシェパード( R.T.Sheperd & Son) のケーン・リードで、“The MacGregor's Salute”を演奏してきました。 う〜ん、やっぱりケーンのリードの調子のいいやつは最高! 「あんな、デリカシーに欠けたシンセティック・リードなんてやっぱりダメだね。」な〜んて思っちまう。なんて節操のないヤツ。 で、朝から思いっきりパイプが吹けて気分良くなったところで、外はその後雨が降ったり止んだりの湿気た天気なので室内にこもってパソコンに向かい、「パイプのかおり第7話」一気に書き上げました。 それにしても、ホント、こういう自慢話しならあっという間に書けちゃうんだね。 |
アイリッシュ・チューンのタイトル第3弾ではないですが…。 それはともかく、台風の接近で、関東甲信越は大荒れの天気。ここ信州の山の中もご多聞にもれず夜半から大粒の雨が降り続いています。 でも、実はパイパー森はこのような「雨降りの森」が大好きです。 山荘の周りの落葉松の林は、生産材として手入れされている訳では無いので、カエデ、白樺、山桜、ミズナラ、桂、キハダ、ハリ桐 etc.…といったような様々な広葉樹が競い合うように育っています。そして、足元にはシダ類とクマ笹がびっしりと生い茂って地面を覆い隠します。 このような溢れんばかりの緑の森の中、落葉松の高い梢のかなたから様々な広葉樹とシダとクマ笹、そして、豊かな腐葉土の積み重なった地面へと雨が絶えまなく降り注ぐ様を、何をするでも無くボーっと眺めていると、恐竜たちがこの地を闊歩していた太古の昔から延々と変わらずに続いてきたのだろうこの自然の営みの悠久の時の流れを感じる事ができます。だから、森の雨降りは好きです。 でも、雨音をバック・グラウンド・ミュージックとして景色を眺めるというくつろぎ方の他にもう一つ、「雨降りの森」をバック・グラウンド・ビューとして眺めながら気に入った音楽を聴く、というまた違った味わい方もあります。 で、昼食後「さて、何を聴こうかな?」と考えた時、私が選んだのはトリーナ・ニ・ゴーナルのソロアルバム“Triona”でした。彼女のクラビネットの音色が何故か今日の激しい雨音とハーモニーを奏でるような気がしたからです。 |
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先日、所用で北九州市を訪ねました。
北九州市といえば人口100万を超す政令指定都市ですし、製鉄の町(そして、現在ではスペースワールド)というイメージが先行しますが、しかし、それはこの都市の単なる一面でしかありません。 実際には市の中心部からそれ程遠くないところに広大な水田や畑が広がり、市内には至る所に鬱蒼とした木々に覆われた森林公園が点在。さらにちょっと足を伸ばせば標高数百メートルの山地やカルスト台地などが連なり、それらの谷あいには見事な棚田が広がっています。山あいの農村地域ではイノシシやサルの被害が大きな問題というのですからホントに驚きです。 また、壇の浦の合戦の場や厳流島を望む関門海峡の九州側の玄関口として古くから栄えた門司港のウォーターフロントでは、レンガ造りの税関や駅舎など由緒ある建築物が丁寧に保存・整備され、レトロ情緒あふれる市民の憩いの場として、落ち着いた雰囲気の街づくりが行われています。 このように、一般のイメージとは裏腹に北九州市は歴史の厚みを感じさせつつ、水と緑にあふれた、とても居心地のよい素敵な街でした。 さて、そんな自然あふれた北九州市、緑に関する一つの誇れる数字があります。それは、なんと市内に1400haあるという(市町村で?)全国一の竹林面積です。今回はそのことを代表する、筍の産地として有名な「合馬(おうま)」という集落にある竹林公園を訪ねました。 平成13年度に「日本のかおり風景百選」に選ばれたという竹の里「合馬」、その中心に位置する数百種類もの竹の見本園に囲まれた竹林公園のビジターセンターには、様々な竹細工や竹炭などを使ったオブジェ(公園の裏手には竹炭を焼くための立派な土窯が設えられ、竹炭だけでなくイガ栗、ヒョウタンなど様々な素材を飾り炭にして楽しんでいるんです)、エジソンが発明した最初の電球に使われた竹製のフィラメントが実際に発光しているディスプレイなどに混じって、ありました、ありました、アンクルンなどのバリ島の竹楽器が…。 私がその場所を訪ねたのは17日(木)のことでしたが、ちょうどその週末の20日(日)には秋まつりにあたる「竹の里フェスタ」というイベントが予定されていて、ステージイベントも開催されるとのこと。さぞや泥臭く民族色濃いステージが…、と思いきや、演目は子ども神楽、親子三味線、吹奏楽、フラダンス(婦人会!?)等だということを聞き、ちょっと力が抜けました。 でも、素晴らしい竹林に囲まれた芝生広場を目にしたパイパー森の頭の中には、その時すでにこの場所での《お楽しみ》のイメージがすっかりでき上がっていました。 さて、日本ならではの音を楽しんだ後は、視点をアジアモンスーン(とちょっとその先)まで広げて色々と音を楽しみましょう。 さて、こういうイベントは五感で自然を楽しむことが大事なコンセプトですから、視覚や聴覚だけでなく、味覚、嗅覚、触覚も刺激しなくてはなりません。ほら、竹林の向こうからは、地元の農家女性たちが用意した山の幸あふれる炊き込みご飯が竹飯ごうで炊きあがり美味しそうな香りが食欲をそそります。そして、太竹を軸にして焼かれるバウムクーヘンが甘い香りをただよわせ、やはり太竹をオーブン代わりにした竹パンがふんわりと焼き上がり、石釜ではアツアツのピザが芳ばしい香りを放つ…。ってな所で満足、満足…。 イベントタイトルは「竹の里・合馬の“竹・音・稀”(ちくおんき)」(竹の稀な音を楽しむっていう意味)、キャッチコピーは「日本一の竹の里・合馬は音が香る里。《香音里》合馬(かおり・お〜ま)で、アジアモンスーンの、そして世界の音と味を楽しもう!」ってな感じかな。 以上、例によってパイパー森が考えるとついつい《お楽しみ》の話しばかりになってしまいますね。でも、現実としては、再生が早い《竹》はエコロジカルな素材として注目を浴びる一方、放置された竹林が野放図に繁茂し続けて周囲の植生に大きなダメージを与えてしまうということも悩みだそうで、確かにそのような放置竹林が樹林を侵食している風景を目にすることもありました。 |
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というバンドのライブに行って来ました。バンド名からご想像のとおりあの“レッド・ツェッペリン”のトリビュート・バンドです。それも究極の…。
私が自分のお小遣いで初めて買ったレコードはレッド・ツェッペリンのセカンドアルバム(“Whole Lotta Love”で始まるヤツね…)。そして、高校2年生の時には武道館での彼等の記念すべき初来日コンサートに出かけたものでした。 しかし、その直後のペンタングルとの出会いが私をロング&ワインディングなブリティッシュ・トラッド愛好の道へと導き、挙げ句の果てにはロッカー森はパイパー森になってしまったという訳。 中でも特に印象に残っているのは、中学生の時に観た映画ウッドストックのラストのシーン。大方の観客が帰ってしまった後の閑散としたステージでジミ・ヘンドリックスが“Voodoo Child”や“Purple Haze”、そして、盛大に歪ませた音で奏でる米国国歌を織りまぜながら展開するインプロビゼーション。国歌を歪ませて奏でることで、ベトナム戦争の泥沼に突き進む中で苦悩する超大国アメリカの姿を描いている、あるいは反戦のメッセージだ、という風に様々な解釈がされた有名なシーンです。 まあ、それとは対照的にハイランド・パイプとエレクトリックギターは「どちらも思いっきり大きな音を出そうとする楽器である」ということについては、多分だれも異論をはさむ余地はないでしょう。アコースティックとエレクトリックという違いは別にして…。 さて、先にも書いたようにジョン・メイオールからフリー、そしてレッド・ツェッペリンの初来日頃までは真面目にロック一筋に歩んでいた私も、その後はロックの王道からは少々離れた道を歩んで来たので、実は ZEP の全体像を真面目に把握したのはつい最近のこと。今年の春、息子の高校入学祝いにエピフォンのレスポールもどきギターを買ってやったことがそのきっかけです。 そんな折、まさドンピシャのタイミングでジミー・ペイジ奏法を特集したギター雑誌の増刊号が発売されたのです。それも、なんとペイジの奏法を映像で解説したDVD付きで…。飛びつくように購入するとともに、それからは彼のバイブルのようになったのは言うまでもありません。そして、挙げ句の果てには、親の顔を見る度に「お願〜い、(本物の)レスポール・スタンダード買ってくれ〜!」ってうわ言のように唱えるようになりました。あまりにしつこく繰り返すので仕方なく、部活の夏合宿をキチンと務め終えたところで、彼念願の本物のギブソン・レスポールを買ってやりました。ジミー・ペイジの愛機とドンズバの色柄のものを。 で、この話しを Jailbird さんに話したところ「森さん、それってお子さんに買ってあげている様に見えて、実は自分に買ってあげているんじゃありませんか?」ってな風に鋭く指摘されてしまいましたが、まさに図星!ですね。 さて、その DVDでペイジのギターワークを見事に再現して見せてくれていたギタリスト Jimmy SAKURAI さんが率いるバンドが、今回ライブを観に行った“MR.JIMMY”というZEP・トリビュートバンドです。このバンドがどんな演奏をしてどのような評判を得ているかということは、バンドのオフィシャルサイトや、ファンが作っているサイトのレビューを読んでいただくとして、とにもかくにも、この日のライブは70年セットということで、初期の頃の ZEP の演奏を再現したものでした。つまりは、私が30年前、ちょうど今の息子の年頃に体験した ZEP の音を、息子と一緒に体験できるわけです。 私はこのようなバンドを単なる“コピーバンド”とは呼びたくはありません。やはりまさに“トリビュートバンド”という呼び方の方が似合っていると思います。それは、「自分が好きになった音楽を自らで演奏したり歌ったりしてみたい。」という音楽ファンのごくごく自然な気持ちに素直に従い、同時に血の滲むような努力を経て奏でられるその演奏からは、単なるコピーという枠を超えてその音楽、そのミュージシャンに対する限り無い《尊敬の念》がひしひしと伝わってくるからです。 私が、“Lament for the Children”を、数ある演奏の中でも一番好みとする Gavin Stoddart さんの演奏スタイルで演奏することを目指すということも、いってみれば“Lament for the Children”という曲、Gavin Stoddart さんというパイパーに対するトリビュート演奏だと思うのです。そういった意味からも、私はこの MR.JIMMY の演奏に強く共感すると共に、深い感動を覚えました。 MR.JIMMY のみなさん、本当に素晴らしい演奏をありがとうございました。 ところで余談になりますが、トラッドファンならそれほど ZEP に詳しく無い人でも、ジミー・ペイジが、彼の憧れのギタリストであるバート・ヤンシュのレパートリーであったトラディショナル・チューン(あのアン・ブリッグスやサンディー・デニーも歌ってる…)“Black Water Side”を大胆にアレンジして“Black Mountain Side”という曲として演奏していることや、“Battle of Evermore(限り無き戦い)”でロバート・プラントと掛け合いで歌ってるのがまさにそのサンディー・デニーであること位はご存知のことと思いますが、ロック史上最も有名な曲である“Stairway To Heaven(天国への階段)”の歌詞にパイパーが登場しているのは知っていましたか? 日本語訳では「笛吹き」なんて訳されていることがあるので見逃してしまいますが、当然ですが本当の意味はパイパー、つまりバグパイプ吹きのことです。 (前略) パイパー森と ZEP との因縁は実はここに潜んでいたのです。…ってのは、ちょっと無理なこじつけか? ※実は、パイパー(piper)という言葉は、(バッグ抜きの)リード・パイプ(reed pipe)やホーン・パイプ(horn pipe)吹きを指す場合もありますが、私は恣意的にバグパイプ吹きと解釈しています。 |
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