ハ イランド・パイプに関するお話「パ イプのかおり」 |
第19話(2004/6) Here Comes The Dunfion Pipes ! ■ メールでのやりとりの顛末 ■ Dunfion Bagpipes の Henry Murdo
さんにオーダーしたパイプは、2004年6月14日に私の手元に到着しました。 さて、その最初の返事によると「納期はおよそ6週間」ということでした。 その後、5月中旬になって私がパイプのかおり第18話を
アップしたことを知らせたところ、彼が次のことを確認してきました。曰く「君
が望んでいるのは、ジョゼフ・マクドナルドの時代のパイプのように combing や beading
を全く施さず、イミテイション・アイボリーのマウントも付けない完全にアンティック・スタイルのパイプなのか? それとも、単にトップ(にアンティックの
雰囲気を漂わせる)だけなのか? ちょうど今、Chalice
Top
に取りかかったところなのだけど、よく考えてみれば私は君の望みを正確に把握していなかったようだ。」と…。 私は慌てて返事を書きました。「私は何よりもあなたのオリジナルデザ
インであるところの Dirk Handle の彫り込みのある(そして、 half silver &
half imitation ivory
マウントの)パイプがぜひとも欲しいのです。ただ、その上でトップにほ〜んのちょっとだけ、アンティック・フレイバーを漂わせたいだけなのです。」「そう
いう訳なので、当初の私のオーダーの通り仕事を進めて下さい。」「ただ、もしもこの組み合わせがあまりにも奇異
に映るようだとしたら、私はこれをあきらめて通常のトップにすることはやぶさかではありません。」と…。 お〜、お〜、こりゃそれにしても何とも特別なオーダーを出してしまったようだワイ。う〜ん、彼自身もこれまで例のな
いこの組み合わせについてはやってみるまで自信が持てないんだな〜。 私はこのやりとりをしながら「それにしても、彼の作業は本当に速く進んでいるんだな〜」と感じていました。だって、
この段階でもう Chalice Top に取りか
かっているのですから。 ■ たったの3週間で完成! ■ さて、その後、5月中には彼からの「パイプが仕上がったので、送ったよ。」ってな連絡は無く、6月に入って「う〜 ん、どうしたんだろうな〜、先日の調子で行けばもうそろそろ連絡があってもいい頃なんだけどな?」「でも、ま、最初の話 の6週間といえば6月中旬のことだから、やっぱりその頃になるのかな?」なんて思い始めたまさにその頃(正確に言えば6 月3日)、帰宅すると成田のフェデックス・オフィスから「イギリスの Dunfion Bagpipes 様からお荷物が届いています。ご連絡下さい。」というハガキが来 ていてびっくり! どうやら、Henry さん、本当に 超スピードでパイプを仕上げた上、私を驚かせるつもりで連絡無しで送ったらしい。 さてさて、翌4日(金)に勇んでフェデックスに電話したところ、なんと「Henry
さんが送り状に間違って実際の10倍の価格を記載してしまったので、このままだと関税が10倍(本体価格の半分程)
掛かってしまう。」ということが判明。フェデックスの担当者がイギリスのオフィスを通じて送り状の書
き直しを依頼することになりました。 問い合わせのメールを書くために、参考までにフェデックスから送り状をファックスしてもらいました。そこには確かに 10倍の値段が書かれていたのですが、それよりも何よりも私がびっくりしたのは、発送日が5月26日だったことです。な んと、Henry さんは Chelice Top のマッチングのことでやりとりしたそ の一週間後には早々とパイプを完成させ、そして、発送していたのです。そして、それは私の最初のメールから僅か3週間目にあたります。 ハイランド・パイプに限らず世界の民俗音楽に親しんでいる人の間では、海外の職人に楽器を直接オーダーするのはごく 当たり前の事ですが、今回のようにそれなりにバックオーダーを抱えている と思われるバグパイプ職人が、6週間という短期間の納期で注文を受け付けてくれた上、さらに実際にはそれの倍の早さ で製作してくれた、なんて話はこれまで聞いたこともありません。メールのやりとりからも感じられる Henry Murdo さんの誠実な人柄と、こちらの 想いに率直に応えてくれようとするその心意気には本当に心打たれました。 さて、そんな誠実な彼は私が6月10日夜10時過ぎに送信したそのメールにも例によってすぐさま返事をくれました。そ
こには、彼のしでかしたとんだ愚かなミスを詫びる言葉とともに、正しい送り状は日本からの問い合わせに応じて既に4日に
発送済みだと書かれていました、そして、その送り状のファイルが添付されていました。 週末を挟んだので、我が家に到着するのにはさらに時間が掛かってしまいましたが、冒頭に書いたように、最終的には無
事6月14日の朝一番、Henry Murdo さんの
入魂のパイプはとうとう我が家に到着しました。 ■ My Dunfion Pipes とのご対面 ■ さて、その日は月曜日でウィークデイでしたが、当然の如く私は仕事を休んでフェ
デックスからの荷物が届くのを今か遅しと待っていました。 しかし、今回の Henry さんの場合は違いまし た。ごくごく頑丈そうな立方体の大きめの段ボール箱を使い、チャンターやブローパイプに留まらずドローンパイプまで (コードは結ばれたまま)全てバラバラにして、それぞれ別々にエアー入りの緩衝剤で丁寧に包んだ上、隙間にはクシャク シャにした新聞紙がキッチリと詰め込まれて慎重に梱包されていました。こんなところにまで Henry さんの性格が偲ばれます。 ところで、最近では海外に出かけることの無い私にとっては、このような現地の新聞紙ってのがとても興味深い。梱包を 解く際に丁寧にしわを伸ばして目を通すとローカルな話題が満載だったりして、なかなか面白いんですよね。 さて、新聞紙を取り除き緩衝剤を引きはがすのももどかしく私が手にしたドローンパイプは、まさに想像したとおりの見
事な出来映え。Henry さん手彫りの Dirak Handle デザインとシルバーに彫り込まれたケルト組紐模様のコンビネーションは正に「完璧!」の一言に尽きます。そして、例の Chalice Top も全体と見事にマッチしていて、顔の皮
がデレ〜っと緩むのが自分でも分かりました。
とは言っても、ここに落ち着くまでにはそれなりの工夫があった様子。というのも、上の写真で見比べてみれは分かる通
り、この 私のパイプの Chalice Top (一
番左)のデザインは Dunfion のサイトのデザ
イン・ギャラリーに載っている中央の写真のものとは微妙に形状が異なります。 さて、まずは3本のパイプでベースドローンを組上げました。びっくりしたのはその重さ。Hardie とは全く違います。確かに、山根先生のところで持
たせてもらった同じ Hardie のシルバーパイプ
も重いと感じましたが、シルバー自体はそれ程ぶ厚いものではないはずなので、その重さの違いは一体どうしてなのでしょ
う。 ところで、当初私はドローンパイプに彫り込まれているはずの自分のイニシャルを見つけることが出来ませんでした。 さ〜てさて、いよいよパイプを完全に組上げて演奏です。まず最初は、チャンターストックに栓をしてドローンの音色を 味わいます。付いてきたリードはお馴染みの EZee Drone のセット。その音色はちまたで言われている通り非常にメローで柔らか、かつ、重量感溢れるドローンパイプの振動が身体に伝わるのが何とも心地よい。そし て、なによりも感心したのはその音色が最初から岩の様に安定している様でした。う〜ん、このまま死ぬまでドローンノートに酔いしれて居た〜い! …という分けにも行かないので、次はチャンターを付けて演奏。チャンターは Naill
のそれと非常に似通った繊細な外見です。ソール部分から内側を撫でてみると、その内面の仕上げは、Naill 以上にまるで鏡の様にスムースです。 その滑らかなスライド部分を操作してドローンをチューニング。そして、お馴染みのピーブロックを2、3曲演奏し て絶妙な音色を満喫。とりあえず大いに満足して一息つきました。
さてさて、そうかといって休んでいる暇は有りません。この素晴らしいパイプがキッチリ
と具合良く収まるように、仕上がったばかりの新しいケースの中にドローンパイプに合わせてウレタンをカットしてホルダー
を設えなくてはなりません。でも、これは前回の作業で慣れているので、ごくスムーズに出来ました。 それが終わったところで、今度は Henry さ んが付けてくれたチャンターのリードキャップに合わせて、チャンターカバーをミシンで縫いました。Hardie のパイプの場合はタータンで作りましたが、今回は ダークグリーンのバッグカバーにそっくりなベルベットの生地を使ってお揃いにしました。また、後日、バグパイプチュー ナーのカバーも同様のもので揃えました。 Hardie のケースよりも1cmだけ幅広く作って おいたとはいえ、ボリュームのある Chalice Top が 触れ合わないようにしつつ、 Hardie では外し てしまっていたバッグカバーも今回はちゃんと付けたままにするので、収まった姿は一分の隙も無いという感じ。まさに、究 極のオーダーメイドのなせる技。その見事な収まり具合に、思わずニンマリしてしまうパイパー森でした。 ニンマリするといえば、Dunfion Pipes の
特徴の一つであるオイル仕上げ特有の《渋い艶》は何とも言
えない深い味わいがあります。 実は「でも、同じオイル仕上げのはずなのに、写真で見る限り Naill や
MaCullum そして、Kron
のパイプとも違って見えるのは、何故なんだろう? これら
のパイプでは Dunfion のような《渋い
艶》という感じはしないが…?」と常々疑問に思っていたのですが、ここに至ってその理由がなんとなく
分かったような気がしました。 ところ が、何の装飾も施されていないプレイン仕上げの部分では、塗装されていないということがより顕著になって《渋い艶》とい う感じが醸し出される、ということのようです。その証拠に、チャンターについては、Dunfion のものとこれまでの Naill のものとはまるで同じように《渋い艶》の外見をしています。 一方、ドローンパイプについては、同じオイル仕上げでも Dunfion
以外のパイプは全て“combing &
beading”が施されているのに対して、Dunfion の場合には手彫り彫刻の余白(?)部分などがプレインで残され
るために、《渋い艶》という雰囲気を強く感じさせるのではないでしょうか。
■ 響き渡る Dunfion Pipes の音色 ■ 例によってとりあえず我が家のウォークインクローゼットの中で鳴らしてみ たこの新しいパイプですが、やはり本当の音色を存分に味わいたくて、急ぎ蓼科の山荘に出向き、例の標高1800mに位置 するパイパー森専用のパイピングスポットで演奏してきました。 ずっしりと重量感あふれる Dunfion のパイプを肩に、得も言えぬ満足感に浸りながら数曲のピーブロックを演奏。“The bagpipe of superb tonal quality”を心行くまで堪能することができ ました。今後、幾度となく繰り返すことになるであろう、パイパー森の新しいパイピングライフの第1歩でした。 Thank you so much Henry, for your incredibly quick and precious works. You are the CraftsMan !!! ■追補■ ● My Dunfion Pipes についてボブさんのフォーラムに書き込みをしたところ、何人かから暖かい言葉を頂きました。そして、何故か木製パイプケースにもやたら注目が集まってしま いました。また、後日、パイプのかおり第21話で書いている Dirk Hnadle Practice Chanter についても紹介したら、結構受けました。⇒ Here comes the Dunfion Pipes ● また、その後、Dunfion に関する別のトピでも私のパイプが話題になりました。中でも私と同様に Dunfion オーナーであるハンドルネーム“LA157M3”さんは次に引用したように、私のこの個性的なパイプをかなり羨ましがっています。 The
ONLY thing that I regret about my purchase is
that I didn't put more thought into the idea of having
Henry Murdo carve something more personal and creative
of my own idea into the drones. |
|| Japanese Index || Theme Index || |