■ このサイトのテーマ“ピーブロック(Piobaireachd)”について ■

◆このサイトのメインテーマは、ハイランド・パイプ(Great Highland Bagpipe)の伝統的な楽曲 Ceol Mor(キョール・モア=Big Music)とも呼ばれるピーブロック(Piobaireachd/Pibroch)です。
◆ピーブロックは、ハイランド・パイプの音楽としてごく一般的に思い浮かべるであろうパイプバンド(Pipes & Drums)の音楽とは全く異なります。複数のパイパーがドラムとともにマーチングバンド形式で行進しながら演奏するパイプバンドの演奏形態は、中世ヨーロッパに由来する鼓笛隊「ファイフ(横笛)&ドラム」に於けるファイフをハイランド・パイプに置 き換えたもの。19世紀 にビクトリア女王の命(鶴の一声)により始まったスタイルで、歴史的にはごく日の浅い(150年程)形式です。
◆また、1970年代初頭から始まったハイランド・パイプの新たな潮流として、トラッド・バンドの中でフィドル・ギター・ブズーキといった弦楽器やアコー ディオンなどと一緒に、また、ある時は複数のパイプによってユニゾンで賑やかに演奏されるリズミカルなダンスチューンなどとも異なります。

ピーブロックは、およそ15〜18世紀のスコットランド・ハイランド地方に於けるクラン制度の下、ハイランド・パイプ独自の音楽形式として高度に発展した伝統的な楽曲で、ソロ(1人)で演奏します。(“piobaireachd”はゲール語で“piping”という意味)
ピーブロックはハイランド・パイプのためだけに創りだされた楽曲であり、その他の如何なる楽器でもこの楽曲を正しく表現することは不可能です。⇒原文(ピーブロック名言集)
ピーブロックを抜きにしてハイランド・パイプの歴史・文化を語ることは出来ません。

◆曲のテーマは「人の死を悼んだ曲」「戦果を称える曲」「人の誕生を祝う曲」「自然の情景を描いた曲」など。
◆まず始めにテーマとなるメロディーを演奏した後に、テーマを徐々に複雑に変奏しながら演奏し、最後に再びテーマ・メロディーに戻るというもので、1曲の長さは概ね10分〜10数分程度ですが、長い曲では20分を超すものもあります。
◆テーマ・メロディーのテンポは一般的なケルト音楽のスロー・エアに近いものがありますが、そのニュアンスは微妙に異なっています。

◆ピーブロックは「インド音楽」「バリ島のガムラン」「アボリジニのディジュリドゥの音楽」、世界各地の「口琴」、モンゴルやサハの「ホーメイ(ホーミー)」「お経」「声明(しょうみょう)「グレゴリアン・チャント」、アイリッシュ・ミュージックの「シャーン・ノス」などをお好みの方の琴線に触れるような、ディープスピリチャルな音楽です。
◆欧米のあるピーブロック愛好者は「ピーブロックはハイランドのソウル・ミュージックである」と言います。また、ピーブロックには「ヨガ」「禅」あるいは「能」に通じる精神があり、「瞑想」の音楽であるとする人もいます。⇒原文

◆《悠々としたピーブロックの音の流れ》と「能」「太極拳」の《たおやかな身体の動き》には共通した何かが強く感じられます。また、《間合い》の妙を味わう音楽とも言えるピーブロックには日本人の自分としても「禅」や「わび・さび」にも通じるものを感じます。ある意味、日本人の感性に馴染みやすい楽曲なのではないでしょうか。⇒関連記事

◆バグパイプ類に共通している大きな魅力の一つは絶え間ないドローンノートに身を委ねることにありますが、ピーブロックはその目的を究極まで突き詰めた楽曲だとも言えます。
◆ドローン好きにとっては最高のリラクゼーション・ミュージックとして鑑賞することが出来るだけでなく、演奏者自身はパイパーズハイの状態になりトリップ(ストーン)することが出来ます。

◆そして、言うまでもないことですが、ピーブロックはケルト音楽の真髄とも言える音楽なので、なんらかのケルト音楽にシンパシーを感じる方にもぜひとも耳を傾けて頂きたい音楽です。

◆裏返して言えば、ハイランド・パイプの音階を最大限活かして紡がれるその独特の旋律と、一定のリズムから解放されて自由なリズムと抑揚、そして《間》を味わうその音楽様式は、一般的な西洋音楽の規範に囚われている限り、少々理解を超えているものであるかもしれません。

◆ピーブロックには、マーチ、ストラスペイ、リールなどには出てこない大変込み入った装飾音が必須です。その事から得てして、ピーブロックを演奏した事が 無いパイパーは「ピーブロックは演奏が難しい」という思いを抱きがちです。しかし、実際にはそれらの装飾音さえマスターすれば、ピーブロックの演奏はマーチ、ストラスペイ、リールなどよりも随分と簡単です。⇒原文
◆ピーブロックで最も求められる技量はゆっくりと演奏する事。素早い指遣いをこなす高度な技量は必要ありません。⇒原文

 このような楽曲《ピーブロック》に興味をお持ちになられた方は、サイト内の文章をテーマごとに分類し脈略をつけて並び替えた Theme Index ページ のトップ「ピーブロックに関するさまざまな話題」Index に沿って順次読み進めて頂くと理解し易いかと思います。

 そもそも、このサイトは系統だって解説することを目指したものでは無く、あくまでも自分の備忘録として書き散らした文章の蓄積です。デフォルトの Japanese Index ページ は 30年以上前の文章も含めて徒然に書いた文章を年代順に並べてありますが、話があれこれ飛ぶのでお薦めではありません。


「ところで、そもそもハイランド・パイプってどんな楽器なの?」という方に…

◆ハイランド・パイプはスコットランドのハイランド地方(スコットランド北方の高地地方や島嶼部)で伝統的に演奏されてきた大型のバグパイプで、正式には The Great Highland Bagpipe(GHB)と表記されます(この場合、Bagpipes と複数形にはなりません)。
◆バグパイプ(Bagpipes)とは読んで字のごとく、動物の皮で作った袋(バッグ)に、空気を吹き入れるパイプと、音を奏でるパイプを取り付けた楽器です。
◆バグパイプはヨーロッパ各地から北アフリカ、中近東辺りまでの世界各地でそれぞれ独自のタイプのものが演奏されています。一時は廃れてしまったものも多いのですが、最近はそれらが復刻される例が多々あります。(世界中の各種バグパイプについては⇒このサイト
◆ハイランド・パイプでは、音を奏でるパイプは4本。メロディーを奏でるために指穴が開いたチャンター(Chanter)と呼ばれるパイプと、常に同じ音を出し続けて伴奏するドローン(Drone)パイプが3本です。
◆一時的にバッグに空気を溜めるため、息継ぎに関係なく演奏中は全く音が途切れないのがバグパイプの音色の最大の特徴です。
◆リードには常に最大限の空気圧を掛けて鳴らす必要があるので、音量の強弱コントロールは出来ず、楽器は常にフォルテッシモで鳴り続けます。
◆ハイランド・パイプは主に屋外での演奏が前提となっているため、他の各種バグパイプに比べても格段に大きな音が出るようになっています。アコースティックな環境で演奏する楽器の中では最も大きな音を出すことのできる楽器でしょう。
◆音域は1オクターブ+1音。オーバーブロー(一時的に高い圧力を掛けて高い音色を出す)したり、穴を半分だけ塞いで半音を出したりするようなこともできないため、正真正銘たった9つの音しか出せません。
◆チャンターのキーノートはA (実際はB♭に近い)で、ドローンはすべてAに調律され、テナーが2本、オクターブ低いベースが1本で構成されています。
◆ハイランド・パイプの音楽は、音階的には日本の民謡と同じ5音階の曲が多く、そのため私たち日本人にも何故か懐かしい想いを感じさせます。
◆常に同じ音で鳴り続けるドローン・ノートとの調和を第一義に考えるハイランド・パイプは「純正律」な音階になっているため「平均律」の音階に慣れた耳には一種異様に感じられようです。(詳細な説明はドイツ在住のバグパイプ職人薗田さんのブログ「ヨーロッパ バグパイプだより」のこのページをご参照下さい)


 なお、このサイトではハイランド・パイプの仕組みやメンテナンスに関する系統だった説明、また初歩的な練習方法などに関するページは特に設けていませんが、掲示板を通じて初心者の方からご質問いただいた疑問点について回答した内容を「ハイランド・パイプに関するよくある質問集」のページにまとめてあります。これからハイランド・パイプに取り組んでみようと志す方はご参照下さい。
 また、そのような方々にパイパー森としてぜひお伝えしておきたいことを「これからハイランド・パイプを志そうとする方々へ…」のページに書いておきますので、お目通し頂ければ幸いです。