パイパー森
の音のある暮らし《2004年1月》
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2004年の元旦はまずは新春初パイピング。曲は Lament for the Earl of Antrim と覚えたての The Battle of Auldearn 。そして、その 後、パイプバッグにシーズニングを施しました。 使うのはパイパーご用達の R.G.Hardie 製“AIRTIGHT”。まずは、缶ごと湯せんして中身を暖めシェイクします。そうしないと、油成分 が汚いかすような状態に固まったままで、バッグ内に上手く行き渡りません。 次にブローパイプ以外のパイプを抜き、ストックにゴム栓をして試しに空気を貯めます。パンパンになったバッグに体重
を掛けて押しつぶそうとしても完璧に機密性は保たれています。そうです、別にエアーが抜けるようになったからシーズニン
グするのではないのです。 それにも関わらず、私が半年に一回程のインターバルで定期的にシーズニングするのは、革をいつも柔らかい状態にして
おきたいから。 こういうのはあまり気持ち良くありません。バッグ はいつもしっとりと柔らかくなくちゃ。 暖めたシーズニング液を缶の半量だけバッグの中に入れて、再び空気を一杯に貯め、シーズニング液が移動するチャポン
チャポンというかすかな音を確認しながら、シーム部分を中心にまんべんなく液が行き渡るようにバッグをゆっくりと前後左
右に回します。 バッグ内に十分に液が行き渡ったところで一旦空気を抜き、革自体にもシーズニング液を染み込ませ潤いを与えるため、 外側から丹念に革を揉みほぐします。革がじんわりと潤いを帯びてきたかな?ってとこで、しばらくそのまま放置して、シー ズニング液の自然な浸透を待ちます。 その後、再び空気を一杯にしてチャンターストックを下にして逆さに吊るします。バッグの縫い糸の末端はこの時のため にあらかじめループ状に加工されているので、それを壁に取り付けたフックに掛けるのです。私は後のことを考えてこの逆さ 吊りはシャワールームの壁に吸盤フックを取り付けて行います。 しばらくして、余分な液が全て下に下がった頃を見計らい、チャンターストックのゴム栓を抜くと…。ブワ〜ッ!って具 合に余分なシーズニング液が吹き出てきます。すぐさまシャワーで流してすっきり。 後は、各々のストック内壁をウェスで丁寧に拭き取り、ボアオイルを塗って仕上げして、チャンチャン…。 艶かしい程にしっとりと潤いのある上等なバッグが蘇りました。これで明日から一層満ち足りたパイピングライフを過ご すことができるというものです。 最近ではゴアテックスなどシンセティックな素材を使ったバッグを使う人が多いようですが、その理由として「面倒
なシーズニング作業をしなくてよいから」ということをよく聞きます。 私は、前者の「面倒なシーズニング作業」っていう捉え方がどうしても理解できません。パイプメンテナンスの中で
もリード類の調整などは忍耐と根気さらに一定の技術が必要ですし、時には先が見えない泥沼のような過程に踏み込むこ
ともあります。 さらに言えば、十分にメンテナンスされた革のバッグはナチュラルな革それ自体が呼吸してくれるので、バッグ内の 水分対策に過敏になる必要もありません。ピーブロック数曲分の演奏を終えても、一晩置けば翌日には革は適度な湿り気 を残して、余分な水分を外に逃がしてくれています。いつでも演奏スタンバイOKって訳。 バグパイプのバッグはやはりナチュラルな革製に限る! |
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来週末の17日(土)に開催される「おとなの学芸会」という催しに出るので、毎
日練習に励んでいます。といっても、割り当てられているのはたったの10分なので、ピーブロックをどうやって短く演奏する
か?ってことに悩んでいる訳ですが。
この催しは私の勤務先の仲間で芸事をやっている人達が年に一回集まって日頃の腕を披露するために開催する演奏会で、
今年で5回目だということ。 今年も総勢18の個人やグループが参加するので、予定している3時間を割り振ると冒頭に書いたように各々10分にな
るって訳です。 このところ、毎年トリは(当然ですが)ベリー・ダンスと決まっているようで、最後には会場から聴衆みんなを引きずり
込んで大盛り上がりする様子が昨年のビデオにも写っていました。 |
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2004/1/18
(日) おとなの |
楽しかった〜!
何よりも出演者自身が最も楽しんでいる雰囲気が最高ですね。 私はと言えば、どう考えてもピーブロックが受けるとは思わなかったので、他の事で何とか受けを狙おうと、会場の後ろ からマーチしながら登場するという趣向を直前になって思い付き、実行しました。(う〜ん、“Scotland the Brave ”なんて何十年ぶりだろう?) さらに、その日になって慌てて練習していった「おじいさんの古時計」をトチリトチリながらも演奏して一生懸命媚を売 りました。 でも、最後は結局ピーブロックで自己陶酔。 困ったのは、その後、会う人毎に「来年はきっとキルト姿ですね。」「学芸会なんだからコスプレも大事ですよ。」と言
われること…。ヤレヤレそんな結末になるとは…。トホホ。悲しいかな、良くも悪くも演奏の中身のことなんか誰一人気にも
していない。 う〜ん、こりゃ、演奏よりもなによりも、来年までには何らかのコスプレ対策を考えなくてはならないぞ。 |
カレッジ・オブ・パイピングのオンライン・システムは混乱の極みにあるのですが、それにも関わらず、やはりここでな くては手に入らないものがあるので困ります。今回私が注文したのは読み物類です。 システムの混乱とは裏腹に、最近のオンラインショップの品揃えはますます充実してきて、本の扱いも大分幅広くなって きています。そんな中にすでに1998年に出版されていたようなのですが、パイピング・タイムスでも話題になった記憶が なくて、これまで見過ごしていた本がありました。 "Traditional Gaelic Bagpiping
1745-1945" というタイトルのこの本は、スコットランド生まれで、現在はカナダのノバ・
スコティア地方ケイプ・ブレトンに住む歴史研究者&ライターである著者が、1746年の Culloden
の戦いとその結果としてのスコットランド人に対する「武装解除法」の施行から、第2次世界大戦までの間の200年間の、ハイランド・パイプとそれを取り巻
くの世界の波乱万丈な移り変わりを記した本です。 もう一つは、The Proceedings of the
Pibobaireachd Society Annual Conference(ピーブロッ
ク・ソサエティーの年次カンファレンスで行われるレクチャーの報告書)です。 以前、まだ CoP がインターネットのオンラインショップなんてやっていなかった頃に一時、この年次報告書はカタログに載っていて誰でも入手できたので、その際に私は 1973年から 1995年までのものはその時欠番だった2、3の物を除いて手に入れていました。しかし、その後、何故かオンラインカタログにはなかなか載りませんでし た。 ピーブロック・ソサエティーに入会することは、日本に居る限りメリッ トは殆ど無いは分かっていても、この報告書を入手するためだけに入会しようかと思わない訳でもなかったのですが、こ のソサエティーは今だにオンラインでの入会手続きが出来ないため、ネット上でのワンクリックに慣れてしまったモノグ サな身には、わざわざ銀行や郵便局に出向いて海外送金するなんてことは煩わしくなってしまい、なかなか重い腰を上げ ることが出来ませんでした。 そうしたところ、最近になってやっと CoP のオンラインカタログに過去のものも含めて全ての報告書が載るようになったので、今回、以前入手できなかった分
も含めて、96年以降の報告書を入手したという訳です。 …といっても、この報告書、いうなれば会員向けのレクチャー(一体何人程の会員が集まるのでしょう?)の講演録
ですから、1レクチャー当たり20ページ程のワープロ仕上げ(当然ですが、以前はタイプライタでした)のレポートを
5、6回分、つまり概ね100ページ程度の印刷物をペナペナの透明アクリルの表紙とプラスティックのバインダーで簡
易製本しただけのものです。背表紙には自分で(テプラで)タイトルと年号を書かないと一体何だか分からない。 こんなものを並べて、「壮観です!」なんて悦に入っているのは、日本では私位しかいないんでしょうね。研究者が
自分の専門分野に関する海外の学会誌を入手して満足している風情ってところでしょうか? でも、もちろん私は研究者
を気取るつもりはありません。対象とする音楽がちょっと奥深いってだけの単なる一人の《音楽愛好家》なだけなんで
す。 …ま、とにもかくにも今年の夏休みは、いつもの蓼科の山荘でこれらの本と報告書を木陰でたらたらと読み耽り、気 が向いたら例のパイピングスポットで演奏、という具合にいつものとおりのパイピング三昧で過ごそうと今から楽しみで 仕方ありません。 そして、実は、今、到着待ちのお楽しみのブツがあと二つあるのです。あ〜、早く夏休み来ないかな〜。 |
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ボブさんのところのピー ブロック掲示板が本当に面白い。 最近の例では「結 婚式で演奏するのに適したピーブロックは?」というトピ。 最初のうちは「〜〜って曲はメロディーが美しいからいいんじゃないか。」といった真面目な書き込みがされていたんで すが、ある人が "Lament for the Union" と書き込んだのにはパソコンの前で思わず大爆笑!(もちろん一人で…) "Too Long in This Condition" と、来た。「アハハ〜!」と思ってたら続けて "Piper's Warning to His Master" という書き込み。 ピーブロックをネタにしてこのようなウィットに富んだ会話(?)が進行するのがなんともうらやましい。 "Unjust Incarceration" と
いう曲は、あの盲目のイアイン・ダル・マッカイの作になる曲で、直訳すると「不公正な幽閉」とでも訳されるのでしょう
か、一説には彼の「盲目」である不自由さを表現したともいわれる、なんとも陰うつな雰囲気のただよう(でも、天才イアイ
ン・ダル作の例にもれず素晴らしい)曲なのです。 |
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ボブさんのところのピーブロック掲示板についての話題もう一つ。
「ど うして、誰一人ピーブロックを聴こうとはしないんだい?」「ピーブロックを演奏しない人たちはみ〜んなピーブ ロックを嫌悪するんだ。」ってな嘆き節に対する様々なリアクションが楽しめます。 この掲示板の常連であるカルフォルニア在住の Iain Sherwood
によると、ご当地では、ピーブロックは、例えば仏教徒などのように瞑想を
行うような人種に好まれる、ということに気付いたそうな…。挙げ句の果てには「ピーブロックはまるで、《禅》や《道》である。」などという言葉
も…。 また、ある人は「あるときチベットの修道士に(くだんの)“Unjust Incarceration”を聴かせたら大いに受けた。」などという書き込みも…。 う〜ん、共感できるような、できないような…? |
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私が以前、このソサエティー(LBPS)に1年間だけお世話になったいきさつを
書きます。
現在の様にGHB以外の多種多様なバグパイプのリバイバル運動が始まる前の1980年代半ばに Grainger & Campbell というGHBメイカーが、当時としては初めて Bellows blow タイプの Lowland Pipes(ローランドパイプ)をそのカタログに載せました。 現在はカレッジ・オブ・パイピングの代表を務めている Robert Wallace が当時参加していた The Wistlebinkies というトラッド・バンドにおいてこのローランドパイプを使っていたの で、その音色が(スモールパイプとは異なって)基本的にハイランド・パイプと同じものであることを知っていた私は早速 Grainger & Campbell からこのパ イプを取り寄せました。 しかし、ハイランド・パイプに比較すれば小さな音量だとはいえ、スモールパイプ程には小さな音ではない(つまりリー ドはそれなりに堅い)このパイプをふいごで吹きこなすということは想像以上い難しく、しばらく悪戦苦闘した末に、演奏す るのは諦めてしまいました。 さて、それから15年程が経過した20世紀もいよいよ終わろうかとする頃になると、ヨーロッパ各地では様々なバグパ
イプのリバイバル運動が盛んになっていました。そして、その中でマウスブローに慣れたハイランドパイパーのために、マウ
スブロータイプの Lowland Pipes や Scotish Small Pipes なども目に付くよう
になってきました。 さて、そうなるとリードが必要になります。当時(1999年頃)はまだボブさんの掲示板もできていなかったので、 ネットでローランドパイプやスモールパイプなどを作っているメイカーをいくつかあたり、その内2人にメールでこれまでの 経過を説明しつつ、リードの製作を依頼しました。 一人は David "Blue" MacMurchie さん。 そして、もう一人は Julian Goodacre さん。 でも、彼はとても親切で、 …、以上の様ないきさつで、私はそれから程なくして(2000年2月1日付け) The Lowland And Border Pipers' Society に加入したのでした。(Julian さんとのやりとりは実はこれだけに留まらず、巡り巡って 2003 年9月に書いた話に続いたのでした。) しかし、出来の悪いことが判明した Grainger &
Campbell のローランドパイプにはとっくに興がさめていましたし、かといって新たにローラ
ンドパイプを入手するほどにはその方面に対する興味もなかったので、私が LBPS
に加入していたのは結局最初の一年間だけでした。 また、非常に印象的だったのは、毎年1回開かれるコンペティションの様子を納めたカセットテープがちゃんと日本にま
で送られてきたことです。こんなサービスがあるのなら遠距離にいるメンバーでも加入している甲斐があるというものです。 そんなかんなで、カレッジ・オブ・パイピングやピーブロック・ソサエティーの会員になるのと違って、圧倒的にこじん
まりとしたこのソサエティーに加入するのは、その方面にまともに取り組もうとする人にとっては非常に有効な手段だと思い
ます。 |
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私にとって、あるピーブロックを最初に聴いた時の印象には二通りあります。 初めて聴いて直ぐに「こりゃいいや!」って思える曲と、そうでない曲。そ して、有名な曲の中には後者のものが多くあります。 そういった曲はスルメみたいなもので、何度も何度も聴いているうちに味わいが「ジワ〜ッ」っとニジミ出してきて、一旦そう なると麻薬みたいなもので、もうやめられなくなります。 あの "Lament for the Children" だっ
て、最初は「ただ長いだけ」って感じで、イマイチ、ピンと来なかった。 "Lament for Patrick Og
MacCrimmon" も当初は最後まで聴き通すのが辛かった。この曲の場合は難解であるという
ことも重なって…。 有名な曲の場合、最初に聴いてイマイチって思っても決してあきらめないで下さい。よほどその演奏が悪い場合でなけれ ばいつかきっとスルメの味が出てきます。 私は Patrick Og の場合はその曲のタイ
トルに秘められたストーリーに限りないロマンを感じたので《我慢》して聴き続けました。 好みの問題で多少の相違はあるとしても、先人たちの評価に概ね間違いはありません。名の知れた曲にはそれなりの素晴
らしさが必ずあると信じ、そして《我慢》も一つのチャレンジと思って、皆さん出来るだけ長くピーブロックを聴き続け、そ
して何でもいいですから1曲選んで自分で演奏にトライしてみてください。 …って、これじゃまるで《ピーブロック道》の教祖様だ〜! |
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この春リリースされたばかりで、最新号の“Piping
Today”の新刊紹介コーナーにも出ていた、新しい CD 付きピーブロック・チューター、Archie Cairn による The "How To" Piobaireachd Manual And CD
が、昨日到着したので、一日かけて一通り目を通しました。(もちろん CD
に納められている演奏例も聴きながら…。)
ボブさんのピーブロック・フォーラムで、常連の Ron Teague さんが "Archie's MUST HAVE tutor" って
書いていた意味が分かりました。 ただし、ちょっと矛盾するようですが、この教則本を「全くのピーブロック初心者にお薦めしていいものかどうか?」に
ついては少々疑問?です。 イントロダクションの文章中の「ピーブロックというのは我々のソウルミュージックである。」という 言葉を始めとして、隅々から著者 Archie Cairns のピーブロックに対する限りない《愛》がひしひしと伝わってきます。 なにはともあれ、初めてピーブロックに取り組んでみようと思う方は、まずは、Seumas MacNeilll の(College of Piping の)Piobaireachd Tutor を 手にすることを薦めます。 |
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先日、ボブさんのピーブロック・フォーラムで「The
Winter Storm II CDに収められている Michael Cusack の "Beloved
Scotland" の演奏が素晴らしい!」と話題になっていたので、早速手に入れました。
その演奏はその通り素晴らしかったのですが、それ以上に私が驚いたのは、このライブ録音における聴衆の熱狂ぶりで す。 (多分、司会者の紹介に続いて)Eの音が会場に鳴り響き渡ると、まるでロックアイドルがステージに登場したときの様
な「ワオ〜ッ!」っという歓声と盛大な拍手が沸き上がり、その中で静かにピーブロックが始まる。 う〜ん、このノリは一体何なんだ? ここの聴衆には何でこんなにピーブロックが受けるのか? まるで本当に
Piob-Rock コンサートという感じ…。 このことは実は、これに先立って、"Dr. Dan Reid Memorial Challenge Recital" の数枚のCDに収められている20 曲近いピーブロックの演奏を聴いた時にもなんとなく感じていたことでした。 このリサイタルのCDは臨場感たっぷりで音質が抜群に良いのが特徴ですが、それにしても、各々のピーブロックの 演奏の後に沸き起こる聴衆の拍手の熱さがひしひしと伝わって来るのです。演奏によってはやはり盛大な歓声が上がる。 この "Dr. Dan Reid Memorial" は
西海岸のサンフランシスコ、そして、↑の "The Winter
Storm" は中西部のカンサス・シティという、いずれも北米大陸でのバグパイプ・イベン
トって訳。 大体、これまで私は在日のスコットランド系外国人(パイパーもノンパイパーも)でピーブロックが好きな人っての
には出会ったことがありません。 これからは、妙な偏見を持たずに「良いものは良い」とはっきりと意思表示することができる北米のバグパイプ愛好 家たちの動向に、要注目!ってことを肝に銘じておく必要があるようですね。 大体、あのレッド・ツェッペリンだって、北米では熱狂的な支持を受けながら、本国の物知り顔の音楽評論家たちか らは、長年に渡って徹底的に叩かれていたんだからね。(ちなみに今回の表題「狂熱のライブ」ってのは、ツェップの 1973年マジソン・スクウェア・ガーデンでのライブを中心に描かれた映画 "The Song Remains The Same" の日本語タイトル。) |
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Dr. Dan Reid
Memorial Recital のライブレコーディングですが、実はこれはオフィシャル・サイトの
Order
CD/Tape のコーナーから入手したのではありません。それは、ここではオンラインでのカード決済が出来な
かったからです。 「今さら為替で送金ってのもタマランな〜」と、あちこち検索したところ、The National Piping Centre のオ ンラインショップで扱っているのを発見。ここならいつも通りカードで楽々決済できる。ラッキー! しかし、よく見ると NPC では CD/Tape の内、CDしか扱っていませんでした。仕方なく、とりあえず NPC か らはリリース済みの 1997〜2002年までのCD6枚を 取り寄せました。 しかし、この CD から伝わるその熱気と演奏の素晴らしさは まさに先月のこのコーナーに書いた通り。さらにその臨場感溢れる録音状態 の良さは、これまでのピ〜ブロックが収められたあらゆる録音の水準を大きく超えた素晴らしいものでし た。 さて、とりあえず諦めていた1993〜1996年の4年分(1992
年は売り切れ)のカセットテープですが、その録音状態の良さだけでなく、実は収められているピ〜ブ
ロックの演目を見るに付けて、パイパー森はそれらのテープもどうしても欲しくなってしまいました。 例えば、1995年の演目の中には、これまでパイパー森の膨大なコレクションの中にもたった1つの音源しかない、演
奏時間20分近い曲 "Lament for Donald Ban
MacCrimmon" (by William McCallum)
が収められているだけでなく、1996年にはさらに長い(!)と言われていながら、私はまだ一つも音源を持っていない "Lament for the Harp Tree" (by
Bill Livingstone) が入っているのです。 さてさて、そんなかんなで、パイパー森は行動を起こしました。 その返事は5日後になってやっと届 き、そして、その内容は「あなたの言われるテープが現在入手可能なのかど うかは分からないが、取り寄せられるかどうかをサプラヤーに問い合わせてみて、どちらにしてもその結果を伝える。」と いう、まことにもってスコットランド的なものでした。 何が「入手可能かどうか分からない?」だ。アホッ! DRM のオフィシャルサイト位ちゃんとチェックしろ! こっちはその上でメール書いてんだ〜! そして、それから1週間、何も音沙汰無し。 まあ、ごくスコットランド的と言ってしまえば簡単ですが、こんな対応じゃ、The National Piping Centre の名に恥じるぞ〜。 …で、もうこうなったら仕方ない、少々メンドクサイけど送金は為替で行うことにして、製作者から直接取り寄せるしか ないと考え、昨晩、DRM の 連絡先アドレスあてにメールを書きました。すでに NPC から取り寄せ済みの6枚の CD の素晴らしさを褒め称えつつ、1963〜1966 年までの4巻のテープと、併せてすでにリリースされているはずの2003年版 CD の注文と支払い方法についての問い合わせを…。 私がメールを送信したのが昨晩 10:13PM の
事でした。 Dear Sir: お〜、お〜、お〜、熱いよね〜。特に最後のセンテンスが 泣かせるではないですか。やはり、《愛》で すよ《アイ〜ッ》! 当然ですが、私も眠い目をこすりこすりつたない英語を駆使して「パイパー森がどんなに《愛》を込めてピ〜ブロックを聴いているか、そして、DRM の録音がどんなに素晴らしくて感動したか。」を伝えまし た。 《愛》あるスコットランド人クラフトマン、Dunfion Bagpipes の Henry Murdo さんとも、この間パイプの仕様のことなどで何度もメールのやり取りをしていますが、どちらにしてもハイランド・パイプやピ〜ブロックに《愛》のある人たちとの交流は本当に心躍るものがあります。 |
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ハイランド・パイプへの愛あふれるアメリカ人、 Dr. Dan Reid Memorial Recital の
チェアマン Ozzie Reid
さんからは、その後、1993〜1996年のリサイタルのカセット4巻が約束通り早々に送られてきました。
カセットとは言ってもその音質は1997年以降の CDシリーズと遜色ない程に素晴らしく、この会場の根本的な音響条件、そして、レコーディングシステムが元々非常に優れているということが再確認できまし た。 さて、4巻に収められている計12曲の内容は次のとおりです。 《1993年》 (※この 内、この色で示した曲が、パイプでの完全演奏としてはこれまでまだ私のコレクションに入ってなかった音 源です。) (2)は Bonnie Prince Charlie の 1745年7月25日の(フランスから)スコットランドへの上陸のことを記念した曲で、そのロマンティックなタイトルもあり、コンペティション等で演奏さ れる機会も多いのですが、何故かこれまで私のコレクションに入っていませんでした。非常に印象的な名曲です。 (3)は これでこの曲のコレクションは9テイク目になりますが、例の Gavin Stoddart のバージョンに次いで長い演奏時間を掛けて情感たっぷりゆ〜っくり演奏するこの バージョンは、やはり、Stoddart の演奏と同じように非常に強く心に訴えるものを感じさせる名演奏です。 先日のこのコーナーで「タイトルで泣かせるピ〜ブロック」と紹介した(4)ですが、実際にはこの曲、Lament というよりはどちらかと言うと Salute とい方が似合うようなやけに元気な曲でした。Jack Lee の 演奏はいつもながら丁寧でかつ壮大な雰囲気を漂わせていて、それはそれとして非常に印象的。いや〜、これは早速レ パートリーに取り入れなくては、と強く感じさせるいい曲です。 (7)は私がこれまで持っていたピ〜ブロック最長の演奏時間であった Hugh MacCallum によるバージョンの記録(19:49)をあっさりと抜き、とうとう20分の大台を突破してしまいました。いや〜、スゴイ。 でも、やはりなんといっても今回の最大の圧巻は念願かなって初め
て聴くことができた(11)でしょう。一覧で示した通り、噂に違わずこの曲の演奏時間は実に25分以上!です。 「ピ〜ブロックはただ長ければいいのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょうけど、少なくともパイパー森に とってはそれは正にその通りです。長ければそれだけ長くトリップしていられるからです。…ってのは半分冗談です が、半分は本音です。 そういう意味からもこの12曲ってのはスゴイ選りすぐりだよね。だっ て、この Harp Tree だけでなく、Donald Ban、Children、Antrim、といったこ れまでのパイパー森コレクションでも指折りの長時間曲がズラリ並んでいるんだもの。 ま、この辺のところは、パイパー森のロックミュージックに対する想いと非常に強く共通する部分がありますね。 レッド・ツェッペリンの "Dazed and Confused" は彼等の1st Album に入っているスタジオ録音バージョンでは6分余りですが、彼等はライブでは延々とインプロヴィゼーションを展開して10数分から、最終的には30分近く演 奏してます。私はこれがたまらない。途中で緊張感が緩むような演奏は駄目だけど、そうでなければいつまでも聴いていたい と思わせられます。 ウェストコーストロックの雄、グレイトフル・デッドの1969年のライブレコーディング“Live Dead”(このタイトルは最高のギャグ!)に収められている“Dark Star”って曲もLP半面全部に渡って延々とギターインプロが展開される曲でしたが、これも好きで した。夏の夜にこれを聴きながらトリップするのが…。 実は、この Dr. Dan Reid Memorial Recital は The St. Andrews Foundation of San Francisco の主催により毎年サンフランシスコのとある老舗ホテルのボールルームで開催されている訳ですが、それぞれのピ〜ブロックの演奏に対する熱い反応を聴くにつ け、もしかして、聴衆の中には60年代のウェストコーストのヒッピームーブメントのただ中を、ロックまみれになって 生き抜いてきたような(パイパー森と同類の)筋金入りの Piob-Rocker が居るのではないか? などと想いを巡らせたりしています。 …って、そんな訳ないか…、な? |
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今日で、2004年も最後です。 それにしても最後まで災いの多かった年です。清水寺の住職が選んだ今年の言葉がまさに「災」の一字とのこと。頷けま すね。 さて、そんな腐りきった気分のところに Music Scotland からの定期メールでのお知らせにあった「セール期間は全世界配送料無料!」のうたい文句に思わず触手が動いてしまいました。 といっても、今のところめぼしい CD も無いので、以前からいつかは買っておかなくてはと思っていたものを2枚注文しました。 両方とも例の Lismor の World's
Greatest Pipers シリーズのもの。Vol.3
Gavin Stoddart と Vol.5
John Wilson です。 しかし、いくらなんでもこれだけじゃ荷物が到着するのをワ クワクできないので、何かいいの無いかな〜? とニュー・リリースのカタログを眺めまわした挙げ句に注文したのは "Planxty Live 2004" の DVD でした。 Donal Lunny, Andy Irvine, Liam O'Flynn, Chisty Moore というオリジナルメンバー4人によるリユニオンコン サートの模様を納めたこのビデオ、いや〜良いのなんのって、なんとも懐かしく、パイパー森の頭の中に30年前の青春の 日々が一気にフラッシュバックしてきました。 オリジナルメンバーによる 1st と 2nd、そして、Donal
Lunny が Johnny Moynihan
に入れ替わった 3rd アルバムまでの Planxty
の初期3作が当時のブリティッシュ・トラッド・シーンに与えた影響と衝撃の大きさは計り知れないものがあります。 しかし、人の志向とはワガママなもので、私はその後 Planxty より一層コアな伝統に根ざした音楽を奏でる The Bothy Band の方がお気に入りになってしまい、彼等のアルバムは全て CD フォームで収集し直したにも関わらず、 Planxty の方は以前から持っていたアナログレコード以外は全く持っていませんでした。それは、ある時点から私が何故か Christy Moore のあの妙に余ったるい歌声がどうし ても馴染めなくなってしまったことも一つの要因かもしれません。 しかし、今回、30年の時を経てオリジナルメンバーにより当時と寸分違わぬ演奏が再現されている(それが単純に嬉し
い!)この DVD を観て、何とも言えない懐かしさで一杯になりました。 そして、その音楽が耳に入って来た途端に、ブラック・ホークのレコード室のガラスに立てかけられたあのモノトーンの 印象的なデザインの 1st アルバムのジャケットを、新しい音楽に出会った感動とともに呆然と眺めている30年前の自分自身の身体の中 に、一瞬にして魂が乗り移ってしまいました。 30年という年月はどちらにとってもそれ相応の年月。私の額がもう《額》と言うのはちょっと憚られる程に広大になっ
たのと同様に、当時は巷のロッカーたちと同様に長髪をなびかせ若々しかったメンバーが皆、限りなくおじさん風な風貌に変
ぼうしているのが、なによりもその事を如実に語っています。 そして、現地の観衆にとってもこのリユニオンが懐かしいことであるのは当然の事。その証拠に、会場には私と同年齢と 思しきファンたちが大勢詰めかけています。そして、特典映像として収められているコンサートのバックステージを納めたド キュメンタリー映像に登場してくるファンたちが、口々に私と同様に青春の日の思い出を語るところにも強くシンパシーを感 じました。 さて、そんな思いで30年余り前の昔を懐かしんでいる最中、去る26日に私の母校である都立新宿高校の旧校舎
お別れ会というイベントが開催され、しばしの間、またまた30年以上前の青春の日々にフラッシュバック
することができました。 私が週に何度となくブラック・ホークに通い詰めだった学生生活を終えて高校を卒業したのは1973年の事。それ は丁度、この Planxty があの衝撃のデビュー・アルバムをリリースした年に当たります。 |
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