パイパー森の音のある暮らし《2004年1月》
2004/1/1
(木)

シーズニングはいと楽し…

 2004年の元旦はまずは新春初パイピング。曲は Lament for the Earl of Antrim と覚えたての The Battle of Auldearn 。そして、その後、パイプバッグにシーズニングを施しました。


 使うのはパイパーご用達の R.G.Hardie 製“AIRTIGHT”。まずは、缶ごと湯せんして中身を暖めシェイクします。そうしないと、油成分が汚いかすような状態に固まったままで、バッグ内に上手く行き渡りません。

 次にブローパイプ以外のパイプを抜き、ストックにゴム栓をして試しに空気を貯めます。パンパンになったバッグに体重を掛けて押しつぶそうとしても完璧に機密性は保たれています。そうです、別にエアーが抜けるようになったからシーズニングするのではないのです。
 元々、私が使っているカナダ産エルクハイド製のバッグは「シーズニングの必要が無い」と山根先生から伺っています。

 それにも関わらず、私が半年に一回程のインターバルで定期的にシーズニングするのは、革をいつも柔らかい状態にしておきたいから。
 シーズニング液が抜けてきてバッグの内側の革の表面が乾いてくると、革がごわごわしてきてカサカサに乾いた部分が出来たり、水分が溜まりやすいブローパイプ根元のシワシワの部分などは2、3日演奏しないだけでも革同士がバリバリと張り付くようになったりします。

 こういうのはあまり気持ち良くありません。バッグはいつもしっとりと柔らかくなくちゃ。

 暖めたシーズニング液を缶の半量だけバッグの中に入れて、再び空気を一杯に貯め、シーズニング液が移動するチャポンチャポンというかすかな音を確認しながら、シーム部分を中心にまんべんなく液が行き渡るようにバッグをゆっくりと前後左右に回します。
 これは、ちょうど、胃のレントゲン写真を撮影するとき、自分の胃袋の中にまんべんなくバリウムを回すのと同じ要領。検査台に横たわり発泡剤のゲップを我慢しつつ、レントゲン技師の指示に従って逆さになりながら慌ただしく身体をグルグル回すあの辛さをついつい思い出してしまいます。

 バッグ内に十分に液が行き渡ったところで一旦空気を抜き、革自体にもシーズニング液を染み込ませ潤いを与えるため、外側から丹念に革を揉みほぐします。革がじんわりと潤いを帯びてきたかな?ってとこで、しばらくそのまま放置して、シーズニング液の自然な浸透を待ちます。

 その後、再び空気を一杯にしてチャンターストックを下にして逆さに吊るします。バッグの縫い糸の末端はこの時のためにあらかじめループ状に加工されているので、それを壁に取り付けたフックに掛けるのです。私は後のことを考えてこの逆さ吊りはシャワールームの壁に吸盤フックを取り付けて行います。

 しばらくして、余分な液が全て下に下がった頃を見計らい、チャンターストックのゴム栓を抜くと…。ブワ〜ッ!って具合に余分なシーズニング液が吹き出てきます。すぐさまシャワーで流してすっきり。

 後は、各々のストック内壁をウェスで丁寧に拭き取り、ボアオイルを塗って仕上げして、チャンチャン…。

 艶かしい程にしっとりと潤いのある上等なバッグが蘇りました。これで明日から一層満ち足りたパイピングライフを過ごすことができるというものです。


 最近ではゴアテックスなどシンセティックな素材を使ったバッグを使う人が多いようですが、その理由として「面倒なシーズニング作業をしなくてよいから」ということをよく聞きます。
 反面、そのようなシンセティックな素材のバッグではバッグ内の水分の除去対策に苦労されることが多いように見受けられます。

 私は、前者の「面倒なシーズニング作業」っていう捉え方がどうしても理解できません。パイプメンテナンスの中でもリード類の調整などは忍耐と根気さらに一定の技術が必要ですし、時には先が見えない泥沼のような過程に踏み込むこともあります。
 それに比べるとバッグのシーズニング作業ってのは、単純な行程を丁寧に行えば目指す効果は必ず得られる訳ですから、成果が見えやすい。ですから、私にとっては、バッグのシーズニング作業はバグパイプと付き合う上でどちらかと言うと好きな部類の作業と言えます。
 第一、愛情を込めてバッグを「なで回し、揉みほぐし、掃除する」って作業は、まさにバグパイプを愛でるってことを実感できる素敵な行為だと思うのですが…。

 さらに言えば、十分にメンテナンスされた革のバッグはナチュラルな革それ自体が呼吸してくれるので、バッグ内の水分対策に過敏になる必要もありません。ピーブロック数曲分の演奏を終えても、一晩置けば翌日には革は適度な湿り気を残して、余分な水分を外に逃がしてくれています。いつでも演奏スタンバイOKって訳。

 バグパイプのバッグはやはりナチュラルな革製に限る!

2004/1/10
(土)

おとなの
学芸会

 来週末の17日(土)に開催される「おとなの学芸会」という催しに出るので、毎日練習に励んでいます。といっても、割り当てられているのはたったの10分なので、ピーブロックをどうやって短く演奏するか?ってことに悩んでいる訳ですが。

 この催しは私の勤務先の仲間で芸事をやっている人達が年に一回集まって日頃の腕を披露するために開催する演奏会で、今年で5回目だということ。
 私は今回初めて参加するのですが、事前に昨年のビデオを見せてもらったところ、男性や女性のコーラス、そしてそれらが合体した混声コーラスに始まり、ヴァイオリン&ビオラの弦楽2重奏、ギター独奏、レコーダーのトリオ、チェロ独奏、ピアノと歌、そして今流行の二胡のグループやベリー・ダンスなどなど盛りだくさん。
 二胡のグループやベリー・ダンサーたちと職場が一緒だったことがある関係で、彼女らからこの会のことを教えてもらいました。
 参加者の腕前もプロ級から超初心者まで様々ですが、誰もが自分自身のパフォーマンスを楽しんでいて、まさに「大人の学芸会」という和気あいあいとしたその雰囲気がとても好感が持てたので、今年は私も出させてもらうことにしました。

 今年も総勢18の個人やグループが参加するので、予定している3時間を割り振ると冒頭に書いたように各々10分になるって訳です。
 まあ、いきなり違反して20分近いピーブロックを延々と演奏したら、金輪際お呼びが掛からないでしょうから、割り当てに従っておとなしく振舞うつもり。
 まずは誰もが知っている“Amaging Grace”で受けを狙った後、本来11分程かかる“Desperate Battle of the Birds”をところどころ端折りながら短く演奏して、なんとか全部で10分に収めるように練習しています。

 このところ、毎年トリは(当然ですが)ベリー・ダンスと決まっているようで、最後には会場から聴衆みんなを引きずり込んで大盛り上がりする様子が昨年のビデオにも写っていました。
 ベリー・ダンサーたちと同じステージに立つという経験は、3年前の川口神社以来です。楽しみですね〜。

2004/1/18
(日)

おとなの
学芸会2

 楽しかった〜!

 何よりも出演者自身が最も楽しんでいる雰囲気が最高ですね。
 あがってトチッったりするのも良し。アンチョコ見ながら歌うも良し。楽器を始めてまだ間もない人も、長年やっている人も、音楽を楽しむことにかけては皆同じ想い。
 バイオリンを始めて10か月、って人が、ドボルザークの「新世界」のラルゴの部分をソロでギーコギーコと演奏するなんてのもあったりして、本当に微笑ましい。

 私はと言えば、どう考えてもピーブロックが受けるとは思わなかったので、他の事で何とか受けを狙おうと、会場の後ろからマーチしながら登場するという趣向を直前になって思い付き、実行しました。(う〜ん、“Scotland the Brave ”なんて何十年ぶりだろう?)

 さらに、その日になって慌てて練習していった「おじいさんの古時計」をトチリトチリながらも演奏して一生懸命媚を売りました。

 でも、最後は結局ピーブロックで自己陶酔。
 やっぱり、自分自身が一番楽しんでしまった。アハハ。

 困ったのは、その後、会う人毎に「来年はきっとキルト姿ですね。」「学芸会なんだからコスプレも大事ですよ。」と言われること…。ヤレヤレそんな結末になるとは…。トホホ。悲しいかな、良くも悪くも演奏の中身のことなんか誰一人気にもしていない。
 確かに、出演者の中でも特に受けていたのは何らかの形でコスプレに気合いが入っていた方たちでしたね。

 う〜ん、こりゃ、演奏よりもなによりも、来年までには何らかのコスプレ対策を考えなくてはならないぞ。

2004/2/6
(金)

早々と夏休みに向けて

 カレッジ・オブ・パイピングのオンライン・システムは混乱の極みにあるのですが、それにも関わらず、やはりここでなくては手に入らないものがあるので困ります。今回私が注文したのは読み物類です。


 システムの混乱とは裏腹に、最近のオンラインショップの品揃えはますます充実してきて、本の扱いも大分幅広くなってきています。そんな中にすでに1998年に出版されていたようなのですが、パイピング・タイムスでも話題になった記憶がなくて、これまで見過ごしていた本がありました。

 Traditional Gaelic Bagpiping 1745-1945”というタイトルのこの本は、スコットランド生まれで、現在はカナダのノバ・スコティア地方ケイプ・ブレトンに住む歴史研究者&ライターである著者が、1746年の Culloden の戦いとその結果としてのスコットランド人に対する「武装解除法」の施行から、第2次世界大戦までの間の200年間の、ハイランド・パイプとそれを取り巻くの世界の波乱万丈な移り変わりを記した本です。
 特に、筆者の住むノバ・スコティアなどアメリカ大陸、いわゆる「新世界」での状況についてもかなりのページが割かれていて、これまで私の知らなかったことが沢山書いてありそうで読むのが楽しみです。


 もう一つは、The Proceedings of the Pibobaireachd Society Annual Conference(ピーブロック・ソサエティーの年次カンファレンスで行われるレクチャーの報告書)です。
 シェーマス・マックニールの頃と違ってロバート・ウォーレスが編集長になってからパイピング・タイムスにピーブロックに関する記事が殆ど載らなくなってしまった今となっては、遠い日本においてピーブロックに関する新たな研究成果などを知ることができるのは、新しい本の出版を待つ以外には唯一この報告書しかありません。

 以前、まだ CoP がインターネットのオンラインショップなんてやっていなかった頃に一時、この年次報告書はカタログに載っていて誰でも入手できたので、その際に私は1973年から 1995年までのものはその時欠番だった2、3の物を除いて手に入れていました。しかし、その後、何故かオンラインカタログにはなかなか載りませんでした。

 ピーブロック・ソサエティーに入会することは、日本に居る限りメリットは殆ど無いは分かっていても、この報告書を入手するためだけに入会しようかと思わない訳でもなかったのですが、このソサエティーは今だにオンラインでの入会手続きが出来ないため、ネット上でのワンクリックに慣れてしまったモノグサな身には、わざわざ銀行や郵便局に出向いて海外送金するなんてことは煩わしくなってしまい、なかなか重い腰を上げることが出来ませんでした。

 そうしたところ、最近になってやっと CoP のオンラインカタログに過去のものも含めて全ての報告書が載るようになったので、今回、以前入手できなかった分も含めて、96年以降の報告書を入手したという訳です。
 今回入手した10冊を含めて、これでリリースされている1973〜2002年の報告書30冊が本棚にズラ〜っと並びました。壮観です! うっしっし…。


 …といっても、この報告書、いうなれば会員向けのレクチャー(一体何人程の会員が集まるのでしょう?)の講演録ですから、1レクチャー当たり20ページ程のワープロ仕上げ(当然ですが、以前はタイプライタでした)のレポートを5、6回分、つまり概ね100ページ程度の印刷物をペナペナの透明アクリルの表紙とプラスティックのバインダーで簡易製本しただけのものです。背表紙には自分で(テプラで)タイトルと年号を書かないと一体何だか分からない。
 今でこそきちんとA4サイズに統一されていますが、以前まだタイプライター仕上げだった頃の報告書の中でも何故か1974年と1977年のものは、幅はA4だけど縦はB4サイズ程あり、本棚の同じ段に並ばないというみっともないものです。

 こんなものを並べて、「壮観です!」なんて悦に入っているのは、日本では私位しかいないんでしょうね。研究者が自分の専門分野に関する海外の学会誌を入手して満足している風情ってところでしょうか? でも、もちろん私は研究者を気取るつもりはありません。対象とする音楽がちょっと奥深いってだけの単なる一人の《音楽愛好家》なだけなんです。

 …ま、とにもかくにも今年の夏休みは、いつもの蓼科の山荘でこれらの本と報告書を木陰でたらたらと読み耽り、気が向いたら例のパイピングスポットで演奏、という具合にいつものとおりのパイピング三昧で過ごそうと今から楽しみで仕方ありません。


 そして、実は、今、到着待ちのお楽しみのブツがあと二つあるのです。あ〜、早く夏休み来ないかな〜。

2004/3/13
(土)

ピーブロック掲示板

 ボブさんのところのピーブロック掲示板が本当に面白い。

 最近の例では「結婚式で演奏するのに適したピーブロックは?」というトピ。

 最初のうちは「〜〜って曲はメロディーが美しいからいいんじゃないか。」といった真面目な書き込みがされていたんですが、ある人が

“Lament for the Union”
“The Bicker”
“Unjust Incarceration”

と書き込んだのにはパソコンの前で思わず大爆笑!(もちろん一人で…)
さらに次の人が

“Too Long in This Condition”
“Unjust Incarceration”
“The Desperate Battle”

と、来た。「アハハ〜!」と思ってたら続けて

“Piper's Warning to His Master”

という書き込み。

 ピーブロックをネタにしてこのようなウィットに富んだ会話(?)が進行するのがなんともうらやましい。
 まあ、ピーブロックについてのかなりの博識が必要とされる特殊な世界ですが…。

 “Unjust Incarceration”という曲は、あの盲目のイアイン・ダル・マッカイの作になる曲で、直訳すると「不公正な幽閉」とでも訳されるのでしょうか、一説には彼の「盲目」である不自由さを表現したともいわれる、なんとも陰うつな雰囲気のただよう(でも、天才イアイン・ダル作の例にもれず素晴らしい)曲なのです。
 そのタイトルの意味するところとともに、結婚式で演奏すれば最高のブラックジョークになるという意味ですね。

2004/3/14
(日)

誰も聴いてくれない

 ボブさんのところのピーブロック掲示板についての話題もう一つ。

 「どうして、誰一人ピーブロックを聴こうとはしないんだい?」「ピーブロックを演奏しない人たちはみ〜んなピーブロックを嫌悪するんだ。」ってな嘆き節に対する様々なリアクションが楽しめます。

 この掲示板の常連であるカルフォルニア在住の Iain Sherwood によると、ご当地では、ピーブロックは、例えば仏教徒などのように瞑想を行うような人種に好まれる、ということに気付いたそうな…。挙げ句の果てには「ピーブロックはまるで、《禅》や《道》である。」などという言葉も…。
 Out here in Californica I've discovered that the many of those who meditate, Buddhists, and other contemplative types really like it.  Piobaireachd is very Zen...and Taoist.

 また、ある人は「あるときチベットの修道士に(くだんの)“Unjust Incarceration”を聴かせたら大いに受けた。」などという書き込みも…。

 う〜ん、共感できるような、できないような…?

2004/3/18
(木)

The Lowland and Border Pipers' Society

 私が以前、このソサエティー(LBPS)に1年間だけお世話になったいきさつを書きます。

 現在の様にGHB以外の多種多様なバグパイプのリバイバル運動が始まる前の1980年代半ばに Grainger & Campbell というGHBメイカーが、当時としては初めて Bellows blow タイプの Lowland Pipes(ローランドパイプ)をそのカタログに載せました。

 現在はカレッジ・オブ・パイピングの代表を務めている Robert Wallace が当時参加していた The Wistlebinkies というトラッド・バンドにおいてこのローランドパイプを使っていたので、その音色が(スモールパイプとは異なって)基本的にハイランド・パイプと同じものであることを知っていた私は早速 Grainger & Campbell からこのパイプを取り寄せました。

 しかし、ハイランド・パイプに比較すれば小さな音量だとはいえ、スモールパイプ程には小さな音ではない(つまりリードはそれなりに堅い)このパイプをふいごで吹きこなすということは想像以上い難しく、しばらく悪戦苦闘した末に、演奏するのは諦めてしまいました。


 さて、それから15年程が経過した20世紀もいよいよ終わろうかとする頃になると、ヨーロッパ各地では様々なバグパイプのリバイバル運動が盛んになっていました。そして、その中でマウスブローに慣れたハイランドパイパーのために、マウスブロータイプの Lowland Pipes Scotish Small Pipes なども目に付くようになってきました。
 そこで、以前、ふいごの操作でつまづいた私のローランドパイプをマウスブロータイプに仕立て直して再度挑戦してみようと思い立ち、山根先生の力をお借りしてマウスブロータイプにリストアしました。

 さて、そうなるとリードが必要になります。当時(1999年頃)はまだボブさんの掲示板もできていなかったので、ネットでローランドパイプやスモールパイプなどを作っているメイカーをいくつかあたり、その内2人にメールでこれまでの経過を説明しつつ、リードの製作を依頼しました。

 一人は David“Blue”MacMurchie さん。
 MacMurchie さんはなんと私と同じく15年前に同じ Grainger & Campbell  のローランドパイプを手に入れたけど、やはりふいごがだめで、すぐに自分でマウスブローに変えたということ。しかし、それからはずっと放りっぱなしにしていたというのです。
 I also bought a set of Granger and Campbell lowland pipes about 15 year ago. The bag was hopeless and the bellows useless.
 I also changed them to mouth blown but have not played them for about 10 or more years.
 同じ境遇に陥ったもの同士という連帯感もあったのでしょうか、彼はその後、快く私のオーダーに応じてチャンターリードとドローンリードを作って送ってくれました。


 そして、もう一人は Julian Goodacre さん。
 彼はより正直で単刀直入でした。曰く、
  Thank you for your email. I am afraid I cannot help you with reeds for your pipes. And all the news I can give you is not good!
 Grainger & Campbell made these pipes, but they were badly designed and never worked well. No one could find reeds to work in them, including Grainger and Campbell. They soon stopped making them. In nearly 20 years of pipemaking I have never heard a set that played well.
という次第。…な、なんと。トホホ…。オーマイガ! 

 でも、彼はとても親切で、
  There are now several makers, including myself, who make good border pipes that play well and stay in tune. All these makers also PLAY them.
 I suggest you join The Lowland And Border Pipers' Society- see details on my website.

 …、以上の様ないきさつで、私はそれから程なくして(2000年2月1日付け) The Lowland And Border Pipers' Society に加入したのでした。(Julian さんとのやりとりは実はこれだけに留まらず、巡り巡って 2003年9月に書いた話に続いたのでした。)


 しかし、出来の悪いことが判明した Grainger & Campbell のローランドパイプにはとっくに興がさめていましたし、かといって新たにローランドパイプを入手するほどにはその方面に対する興味もなかったので、私が LBPS に加入していたのは結局最初の一年間だけでした。
 でも、その一年間にA5サイズ50P程に中身がぎっしりつまった“Common Stock”という季刊の機関誌が4冊(当たり前か?)だけでなく、当時世界中に300人以上居た会員全員の情報を納めた Menbership Derectory が送られてきました。
 これは(情報を開示することに同意した)全てのメンバーの住所、電話、Eメールアドレス、パイプやその他の音楽の趣向などが一覧になったもので、近くのメンバーと連絡を取り合うのには非常に有効な名簿だと思います。
 本体はアルファベット順になっていますが、巻末には国や地方別のインデックスもついていました。当時、日本人は私しかいませんでしたが、北米大陸(USA&カナダ)には、50人以上のメンバーがいました。

 また、非常に印象的だったのは、毎年1回開かれるコンペティションの様子を納めたカセットテープがちゃんと日本にまで送られてきたことです。こんなサービスがあるのなら遠距離にいるメンバーでも加入している甲斐があるというものです。
 もしも、ピーブロック・ソサエティーで同様のサービスがあるのなら、すぐにでもメンバーになるところですが…。


 そんなかんなで、カレッジ・オブ・パイピングやピーブロック・ソサエティーの会員になるのと違って、圧倒的にこじんまりとしたこのソサエティーに加入するのは、その方面にまともに取り組もうとする人にとっては非常に有効な手段だと思います。
 まして、最近はボブさんのところもありますし、GHB以外のパイプをたしなむ仲間も急激に増えているようです。このソサエティーに参加してさまざまな楽しみ方ができるのではないでしょうか?

2004/3/21
(日)

ピ〜ブロックはスルメだ

 私にとって、あるピーブロックを最初に聴いた時の印象には二通りあります。
 初めて聴いて直ぐに「こりゃいいや!」って思える曲と、そうでない曲。そして、有名な曲の中には後者のものが多くあります。
 そういった曲はスルメみたいなもので、何度も何度も聴いているうちに味わいが「ジワ〜ッ」っとニジミ出してきて、一旦そうなると麻薬みたいなもので、もうやめられなくなります。

 あの“Lament for the Children”だって、最初は「ただ長いだけ」って感じで、イマイチ、ピンと来なかった。
 でも、今じゃ、あれがなくちゃ生きて行けない。曲としても決して難しくないけど、途中で何度でもウルラールを繰り返しつつ「出来るだけ長く演奏していた〜い」っていう気持ちにさせられる名曲。そして、演奏し終えた時の「身体の中から全ての雑念と雑物が抜けきった!」という例え様の無い《爽快感》。いつ演奏しても逝けます。

 “Lament for Patrick Og MacCrimmon”も当初は最後まで聴き通すのが辛かった。この曲の場合は難解であるということも重なって…。
 ところが、ここでのシェーマスの言葉通り、一旦この曲の良さが分かるようになったらピーブロック道も新たな高みに登ることができました。でも、今だに上手く演奏できない…。
 上手く演奏できないってのは、なんて言うか「曲に振り回されてしまう」っていうのでしょうか、音符どおりに演奏するので精いっぱいで、《表現》ができないっていう感じでしょうか?
 そんな曲が山ほどあります。“Lament for Donald Doughal MacKay”もそう。これも例の Iain Dall の曲ね。

 有名な曲の場合、最初に聴いてイマイチって思っても決してあきらめないで下さい。よほどその演奏が悪い場合でなければいつかきっとスルメの味が出てきます。

 私は Patrick Og の場合はその曲のタイトルに秘められたストーリーに限りないロマンを感じたので《我慢》して聴き続けました。
 Children の場合は誰もが「最高の曲だ」というので《我慢》して聴き続けました。そして、自ら演奏してみて初めてその本当の素晴らしさに開眼しました。

 好みの問題で多少の相違はあるとしても、先人たちの評価に概ね間違いはありません。名の知れた曲にはそれなりの素晴らしさが必ずあると信じ、そして《我慢》も一つのチャレンジと思って、皆さん出来るだけ長くピーブロックを聴き続け、そして何でもいいですから1曲選んで自分で演奏にトライしてみてください。
 きっと、皆さんにも明るい未来が開けることでしょう。

 …って、これじゃまるで《ピーブロック道》の教祖様だ〜!

2004/4/29

The "How to" Piobaireachd Manual and CD

 この春リリースされたばかりで、最新号の“Piping Today”の新刊紹介コーナーにも出ていた、新しい CD 付きピーブロック・チューター、Archie Cairn による The "How To" Piobaireachd Manual And CD が、昨日到着したので、一日かけて一通り目を通しました。(もちろん CD に納められている演奏例も聴きながら…。)

 ボブさんのピーブロック・フォーラムで、常連の Ron Teague さんが“Archie's MUST HAVE tutor”って書いていた意味が分かりました。
 付属 CD の音源のお陰で装飾音(ゲール語)の発音などがよく分かったのは大きな収穫とはいえ、その他には(私の様にすでにピーブロックにドップリ浸かっている者にとっては)特に目新しい発見がある訳ではありませんが、いたるところでピーブロックに取り組むに当たっての様々な黄金則が繰り返し強調されているので、漫然と手抜きしつつ自己流で取り組んでいる自分としては、改めて身が引き締まる思いがしました。

 ただし、ちょっと矛盾するようですが、この教則本を「全くのピーブロック初心者にお薦めしていいものかどうか?」については少々疑問?です。
 それは、その内容が詳細過ぎる程に詳細だからです。
 初心者がいきなりこの本に取り組もうとすると、のっけからピーブロックの奥深さに圧倒されてしまい、めげるかもしれません。
 ですから、この本はどちらかというと、これまでにある程度は独力でピーブロックに取り組んでみて、すでにいくつかの壁にぶち当たっているような方にとって、そのような壁を越えるための手引書といえるのではないでしょうか。

 イントロダクションの文章中のピーブロックというのは我々のソウルミュージックである。」という言葉を始めとして、隅々から著者 Archie Cairns のピーブロックに対する限りない《愛》がひしひしと伝わってきます。

⇒関連記事「自家製デジタル版」の作成


 なにはともあれ、初めてピーブロックに取り組んでみようと思う方は、まずは、Seumas MacNeilll の(College of Piping の)Piobaireachd Tutor を手にすることを薦めます。

2004/4/30
(金)

狂熱のライブ

 先日、ボブさんのピーブロック・フォーラム「The Winter Storm II CDに収められている Michael Cusack の“Beloved Scotland”の演奏が素晴らしい!」と話題になっていたので、早速手に入れました。

 その演奏はその通り素晴らしかったのですが、それ以上に私が驚いたのは、このライブ録音における聴衆の熱狂ぶりです。

 (多分、司会者の紹介に続いて)Eの音が会場に鳴り響き渡ると、まるでロックアイドルがステージに登場したときの様な「ワオ〜ッ!」っという歓声と盛大な拍手が沸き上がり、その中で静かにピーブロックが始まる。
 そして、およそ12分間の演奏に静かに聴き入った後、ウルラールの最後の音が終わるとともに間髪を置かず再び盛大な歓声と拍手が沸き起こる。そして、さらに今度はピューッ、ピューッ、と口笛までが鳴り響くのです。

 う〜ん、このノリは一体何なんだ? ここの聴衆には何でこんなにピーブロックが受けるのか?  まるで本当に Piob-Rock コンサートという感じ…。


 このことは実は、これに先立って、“Dr. Dan Reid Memorial Challenge Recital”の数枚のCDに収められている20曲近いピーブロックの演奏を聴いた時にもなんとなく感じていたことでした。

 このリサイタルのCDは臨場感たっぷりで音質が抜群に良いのが特徴ですが、それにしても、各々のピーブロックの演奏の後に沸き起こる聴衆の拍手の熱さがひしひしと伝わって来るのです。演奏によってはやはり盛大な歓声が上がる。

 この“Dr. Dan Reid Memorial”は西海岸のサンフランシスコ、そして、↑の“The Winter Storm”は中西部のカンサス・シティという、いずれも北米大陸でのバグパイプ・イベントって訳。
 大体、ボブさんのピーブロック・フォーラムに集ってピーブロックについて熱く語り合っている人たちも、ほとんどはアメリカ合衆国やカナダなど北米の人たち、ということからも推測されるように、どうも、ピーブロックに関して言えば北米大陸の方が本国スコットランドよりも熱心なファンが余程沢山居るようだ、といことが薄々分かってきました。

 大体、これまで私は在日のスコットランド系外国人(パイパーもノンパイパーも)でピーブロックが好きな人ってのには出会ったことがありません。
 昨年1月にカレドニア・ソサエティの会合で演奏した際に言葉を交わした(日本の)セント・アンドリュース協会の現在のチェアマン(もちろん生粋のスコッチ)ですら、わざわざ「母がピーブロックが好きでいつもラジオで聴いていた。」って言う。「…で、アンタ自身はどうなんだい?」って喉まで出かかったもんだ。(大体、そういう言い草ってのは「ピーブロック」の前になんとなく「俺には全く理解できないあのヘンテコな…」という枕詞が付いているような雰囲気を濃厚に感じさせるんだよね〜。)

 これからは、妙な偏見を持たずに「良いものは良い」とはっきりと意思表示することができる北米のバグパイプ愛好家たちの動向に、要注目!ってことを肝に銘じておく必要があるようですね。


 大体、あのレッド・ツェッペリンだって、北米では熱狂的な支持を受けながら、本国の物知り顔の音楽評論家たちからは、長年に渡って徹底的に叩かれていたんだからね。(ちなみに今回の表題「狂熱のライブ」ってのは、ツェップの1973年マジソン・スクウェア・ガーデンでのライブを中心に描かれた映画“The Song Remains The Same”の日本語タイトル。)

2004/5/23
(日)

愛こそは全て!

 Dr. Dan Reid Memorial Recital のライブレコーディングですが、実はこれはオフィシャル・サイトOrder CD/Tape のコーナーから入手したのではありません。それは、ここではオンラインでのカード決済が出来なかったからです。
 「今さら為替で送金ってのもタマランな〜」と、あちこち検索したところ、The National Piping Centreオンラインショップで扱っているのを発見。ここならいつも通りカードで楽々決済できる。ラッキー!
 しかし、よく見ると NPC では CD/Tape の内、CDしか扱っていませんでした。仕方なく、とりあえず NPC からはリリース済みの 1997〜2002年までのCD6枚を取り寄せました。

 しかし、この CD から伝わるその熱気と演奏の素晴らしさはまさに先月のこのコーナーに書いた通り。さらにその臨場感溢れる録音状態の良さは、これまでのピ〜ブロックが収められたあらゆる録音の水準を大きく超えた素晴らしいものでした。


 さて、とりあえず諦めていた1993〜1996年の4年分(1992年は売り切れ)のカセットテープですが、その録音状態の良さだけでなく、実は収められているピ〜ブロックの演目を見るに付けて、パイパー森はそれらのテープもどうしても欲しくなってしまいました。
 これらのテープには1巻に3曲づつ、計12曲のピ〜ブロックが(それも、皆選りすぐりの名曲揃い)収められていて、それだけでも正に感涙ものですが、さらにその中身が見逃せない!

 例えば、1995年の演目の中には、これまでパイパー森の膨大なコレクションの中にもたった1つの音源しかない、演奏時間20分近い曲“Lament for Donald Ban MacCrimmon”(by William McCallum) が収められているだけでなく、1996年にはさらに長い(!)と言われていながら、私はまだ一つも音源を持っていない“Lament for the Harp Tree”(by Bill Livingstone) が入っているのです。
 その他にも、1993年では Bill Livingstone が“Lament for the Children”を演奏していたり、1994年には Jack Lee による“His Father's Lament for Donald MacKenzie”が収められていたりします。
 それにしても、この最後の曲のタイトルは“Lament for Alan, My Son”と並んで「タイトルで泣かせるピ〜ブロック」の双璧ですね。作者はパイプ製作者としても名高い19世紀前半から半ばにかけて活躍した名パイパー、John Ban MacKenzie で、1863年に天然痘により30才の若さで死去した長男の Donald に捧げた曲です。


 さてさて、そんなかんなで、パイパー森は行動を起こしました。
 まずは、手始めに NPC 宛にメールを書き、オンラインショップでこれらのカセットを扱ってくれるように頼みました。

 その返事は5日後になってやっと届き、そして、その内容は「あなたの言われるテープが現在入手可能なのかどうかは分からないが、取り寄せられるかどうかをサプラヤーに問い合わせてみて、どちらにしてもその結果を伝える。」という、まことにもってスコットランド的なものでした。

 何が「入手可能かどうか分からない?」だ。アホッ! DRM のオフィシャルサイト位ちゃんとチェックしろ! こっちはその上でメール書いてんだ〜!

 そして、それから1週間、何も音沙汰無し。

 まあ、ごくスコットランド的と言ってしまえば簡単ですが、こんな対応じゃ、The National Piping Centre の名に恥じるぞ〜。


 …で、もうこうなったら仕方ない、少々メンドクサイけど送金は為替で行うことにして、製作者から直接取り寄せるしかないと考え、昨晩、DRM の 連絡先アドレスあてにメールを書きました。すでに NPC から取り寄せ済みの6枚の CD の素晴らしさを褒め称えつつ、1963〜1966年までの4巻のテープと、併せてすでにリリースされているはずの2003年版 CD の注文と支払い方法についての問い合わせを…。

 私がメールを送信したのが昨晩 10:13PM の事でした。
 「ヤレヤレ、明日の朝にはメールが入ってたら嬉しいけどな〜。」なんて、悠長に構えていたら、なんと30分も経過しない 10:40PM にこのイベントの主催者である Mr. Ozzie Reid さんから、速攻で次のような返事が入りました。

Dear Sir:
How exciting to hear from you and how pleasing to find that the DRM has reached Japan!!
Very glad to take care of your request and I will take care of the sending of the tapes in the upcoming week.
The 2003 has been edited and I will be working on the DRM this coming week. We will make a decision as to producing these as a double CD or two seperate CDs. I will be sure to get them off to you when they are finally produced.
I will also send along the program material from the DRM for 2004.
As to payment, I'll enclose an invoice for the products and you can take care of it when you recieve the package. We will gladly accept a check or money order in US$ but we do not take credit cards.
This is a labor of love and not very business oriented, we just try to keep this wonderful instrument and its music alive and well.
Kindest Regards and if I can be of any help to you just let me know.

 お〜、お〜、お〜、熱いよね〜。特に最後のセンテンスが泣かせるではないですか。やはり、《愛》ですよ《アイ〜ッ》!

 当然ですが、私も眠い目をこすりこすりつたない英語を駆使して「パイパー森がどんなに《愛》を込めてピ〜ブロックを聴いているか、そして、DRM の録音がどんなに素晴らしくて感動したか。」を伝えました。


 《愛》あるスコットランド人クラフトマン、Dunfion Bagpipes Henry Murdo さんとも、この間パイプの仕様のことなどで何度もメールのやり取りをしていますが、どちらにしてもハイランド・パイプやピ〜ブロックに《愛》のある人たちとの交流は本当に心躍るものがあります。

2004/6/5
(土)

至福の25分間

 ハイランド・パイプへの愛あふれるアメリカ人、 Dr. Dan Reid Memorial Recital のチェアマン Ozzie Reid さんからは、その後、1993〜1996年のリサイタルのカセット4巻が約束通り早々に送られてきました。

 カセットとは言ってもその音質は1997年以降の CDシリーズと遜色ない程に素晴らしく、この会場の根本的な音響条件、そして、レコーディングシステムが元々非常に優れているということが再確認できました。


 さて、4巻に収められている計12曲の内容は次のとおりです。

《1993年》
(1)Lament for the Earl of Antrim(16:40)
Jack Lee
(2)My King Has Landed in Moidart(13:20)Roderick J. MacLeod
(3)Lament for the Children(16:44)Bill Livingstone
《1994年》
(4)His Farther's Lament for Donald MacKenzie(17:19)Jack Lee
(5)The Battle of Bealach Nam Brog(10:40)
Roderick J. MacLeod
(6)MacNeil of Barra's March(10:34)William McCallum
《1995年》
(7)Lament for Donald Ban MacCrimmon(20:31)
William McCallum
(8)Lament for The Laird of Annapool(15:35)Bill Livingstone
(9)Lament for MacLeod of Colbeck(17:27)Jack Lee
《1996年》
(10)Ronald MacDonald of Morar's Lament(12:33)
John Cairns
(11)Lament for the Harp Tree(25:38)Bill Livingstone
(12)The Daughter's Lament(13:03)William McCallum

この内、この色で示した曲が、パイプでの完全演奏としてはこれまでまだ私のコレクションに入ってなかった音源です。)

 (2)Bonnie Prince Charlie の 1745年7月25日の(フランスから)スコットランドへの上陸のことを記念した曲で、そのロマンティックなタイトルもあり、コンペティション等で演奏される機会も多いのですが、何故かこれまで私のコレクションに入っていませんでした。非常に印象的な名曲です。

 (3)はこれでこの曲のコレクションは9テイク目になりますが、例の Gavin Stoddart のバージョンに次いで長い演奏時間を掛けて情感たっぷりゆ〜っくり演奏するこのバージョンは、やはり、Stoddart の演奏と同じように非常に強く心に訴えるものを感じさせる名演奏です。

 先日のこのコーナーで「タイトルで泣かせるピ〜ブロック」と紹介した(4)ですが、実際にはこの曲、Lament というよりはどちらかと言うと Salute とい方が似合うようなやけに元気な曲でした。Jack Lee の演奏はいつもながら丁寧でかつ壮大な雰囲気を漂わせていて、それはそれとして非常に印象的。いや〜、これは早速レパートリーに取り入れなくては、と強く感じさせるいい曲です。

 (7)は私がこれまで持っていたピ〜ブロック最長の演奏時間であった Hugh MacCallum によるバージョンの記録(19:49)をあっさりと抜き、とうとう20分の大台を突破してしまいました。いや〜、スゴイ。

 でも、やはりなんといっても今回の最大の圧巻は念願かなって初めて聴くことができた(11)でしょう。一覧で示した通り、噂に違わずこの曲の演奏時間は実に25分以上!です。
 信じられないほど長いその演奏時間にも関わらず、
Bill Livingstone は終始岩の様に安定したドローンノートに乗せて淡々と、かつエモーショナルな素晴らしい演奏を展開します。トリップには最適!


 「ピ〜ブロックはただ長ければいいのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょうけど、少なくともパイパー森にとってはそれは正にその通りです。長ければそれだけ長くトリップしていられるからです。…ってのは半分冗談ですが、半分は本音です。

 そういう意味からもこの12曲ってのはスゴイ選りすぐりだよね。だって、この Harp Tree だけでなく、Donald Ban、Children、Antrim、といったこれまでのパイパー森コレクションでも指折りの長時間曲がズラリ並んでいるんだもの。


 ま、この辺のところは、パイパー森のロックミュージックに対する想いと非常に強く共通する部分がありますね。

 レッド・ツェッペリンの“Dazed and Confused”は彼等の1st Album に入っているスタジオ録音バージョンでは6分余りですが、彼等はライブでは延々とインプロヴィゼーションを展開して10数分から、最終的には30分近く演奏してます。私はこれがたまらない。途中で緊張感が緩むような演奏は駄目だけど、そうでなければいつまでも聴いていたいと思わせられます。

 ウェストコーストロックの雄、グレイトフル・デッドの1969年のライブレコーディング“Live Dead”(このタイトルは最高のギャグ!)に収められている“Dark Star”って曲もLP半面全部に渡って延々とギターインプロが展開される曲でしたが、これも好きでした。夏の夜にこれを聴きながらトリップするのが…。


 実は、この Dr. Dan Reid Memorial Recital は The St. Andrews Foundation of San Francisco の主催により毎年サンフランシスコのとある老舗ホテルのボールルームで開催されている訳ですが、それぞれのピ〜ブロックの演奏に対する熱い反応を聴くにつけ、もしかして、聴衆の中には60年代のウェストコーストのヒッピームーブメントのただ中を、ロックまみれになって生き抜いてきたような(パイパー森と同類の)筋金入りの Piob-Rocker が居るのではないか? などと想いを巡らせたりしています。 

 …って、そんな訳ないか…、な?

2004/12/31
(金)

青春の日々へのフラッシュバック

 今日で、2004年も最後です。

 それにしても最後まで災いの多かった年です。清水寺の住職が選んだ今年の言葉がまさに「災」の一字とのこと。頷けますね。


 さて、そんな腐りきった気分のところに Music Scotland からの定期メールでのお知らせにあった「セール期間は全世界配送料無料!」のうたい文句に思わず触手が動いてしまいました。

 といっても、今のところめぼしい CD も無いので、以前からいつかは買っておかなくてはと思っていたものを2枚注文しました。

 両方とも例の Lismor の World's Greatest Pipers シリーズのもの。Vol.3 Gavin StoddartVol.5 John Wilson です。
 あの“Donald MacDonald of Mor's Lament”の収録されている Gavin Stoddart のものはアナログレコードで持っているのですが、なんせ音質がイマイチ。この人の演奏はやはりいい音質で聴きたいものです。
 John Wilson のものは、これまでこのアルバムにピーブロックが収録されていることを見過ごしていたものです。以前に隊員1さんに教えられて、こりゃマズイと気が付いた次第。収録されているのはこれまた定番の“Glengarry's March”


 しかし、いくらなんでもこれだけじゃ荷物が到着するのをワクワクできないので、何かいいの無いかな〜? とニュー・リリースのカタログを眺めまわした挙げ句に注文したのは“Planxty Live 2004”の DVD でした。

 Donal Lunny, Andy Irvine, Liam O'Flynn, Chisty Moore というオリジナルメンバー4人によるリユニオンコンサートの模様を納めたこのビデオ、いや〜良いのなんのって、なんとも懐かしく、パイパー森の頭の中に30年前の青春の日々が一気にフラッシュバックしてきました。

 オリジナルメンバーによる 1st と 2nd、そして、Donal Lunny Johnny Moynihan に入れ替わった 3rd アルバムまでの Planxty の初期3作が当時のブリティッシュ・トラッド・シーンに与えた影響と衝撃の大きさは計り知れないものがあります。
 つまり、この時 Planxty が提起した、ギターやブズーキなどの弦楽器によってリズムが強調される中、別の弦楽器やイリアンパイプ、そしてホウィッスル等が縦横にメロディーを奏でるといったスタイルの登場により、 Chieftains に代表される従来のアイリッシュのトラッド・グループの定番であった、複数のメロディー楽器を皆ユニゾンで演奏するといった演奏スタイルが醸し出していた 、どことなく垢抜けなく鈍臭いアイリッシュ・ミュージックといった印象が一気に、そして完璧なまでに塗り替えるられたのです。そして、その後、あの The Bothy Band の登場によってこの流れは決定的となり、そして、現在に至るまで数多のフォロアーを生み出し続けているのはご存知のとおり…。

 しかし、人の志向とはワガママなもので、私はその後 Planxty より一層コアな伝統に根ざした音楽を奏でる The Bothy Band の方がお気に入りになってしまい、彼等のアルバムは全て CD フォームで収集し直したにも関わらず、 Planxty の方は以前から持っていたアナログレコード以外は全く持っていませんでした。それは、ある時点から私が何故か Christy Moore のあの妙に余ったるい歌声がどうしても馴染めなくなってしまったことも一つの要因かもしれません。

 しかし、今回、30年の時を経てオリジナルメンバーにより当時と寸分違わぬ演奏が再現されている(それが単純に嬉しい!)この DVD を観て、何とも言えない懐かしさで一杯になりました。
 あ〜、やっぱり Planxty は偉大だ!

 そして、その音楽が耳に入って来た途端に、ブラック・ホークのレコード室のガラスに立てかけられたあのモノトーンの印象的なデザインの 1st アルバムのジャケットを、新しい音楽に出会った感動とともに呆然と眺めている30年前の自分自身の身体の中に、一瞬にして魂が乗り移ってしまいました。


 30年という年月はどちらにとってもそれ相応の年月。私の額がもう《額》と言うのはちょっと憚られる程に広大になったのと同様に、当時は巷のロッカーたちと同様に長髪をなびかせ若々しかったメンバーが皆、限りなくおじさん風な風貌に変ぼうしているのが、なによりもその事を如実に語っています。
 ただ、その歳の取り方は、Christy Moore はつやつやの肌に殆ど坊さん風の頭部、一方、Andy Irvine の髪は当時と同じ長さながらやたらしわくちゃの顔をしているってな具合に、それぞれ様々なのがまた興味深いところですが…。

 そして、現地の観衆にとってもこのリユニオンが懐かしいことであるのは当然の事。その証拠に、会場には私と同年齢と思しきファンたちが大勢詰めかけています。そして、特典映像として収められているコンサートのバックステージを納めたドキュメンタリー映像に登場してくるファンたちが、口々に私と同様に青春の日の思い出を語るところにも強くシンパシーを感じました。


 さて、そんな思いで30年余り前の昔を懐かしんでいる最中、去る26日に私の母校である都立新宿高校の旧校舎お別れ会というイベントが開催され、しばしの間、またまた30年以上前の青春の日々にフラッシュバックすることができました。
 この日はこのイベントの呼びかけ人の一人である同期の仲間に促されるままに、ハイランド・パイプで「校歌」と、そして、実は歴代の生徒たちに校歌よりも親しまれている「六中健児の歌」という2曲を演奏する機会があり、大いに受けを取れたのもまた愉快な体験でした。


 私が週に何度となくブラック・ホークに通い詰めだった学生生活を終えて高校を卒業したのは1973年の事。それは丁度、この Planxty があの衝撃のデビュー・アルバムをリリースした年に当たります。

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