ハ イランド・パイプに関するお話「パイプのかおり」

第40話(2020/8)

メロディーを聴かせるピーブロック

 
John D. Burgess のアルバム収録曲 ■

 1973年に私が初めてピーブロックという楽曲に出会った時の顛末は、パイプのかおり第3話の冒頭に 書きました。偶然にこの楽曲と出会った訳ですが、いざ自分からその他の音源を手に入手しようとしても、その当時は未だ、 世の中に出回っているピーブロックの音源は極めて限られていました。

 そのような状況の中で私が最初 に入手したのが John D. Burgess"King of Highland Pipers" というLPレコード。1969年に Topic レーベルからリリースされたこのアルバムに唯一収められていたピーブロックが The Desperate Battle of the Birds です。当然の成り行きで私の最初のレパートリーに…。そして、Lament for the Children と並ぶお気に入りの曲として、今でも最も頻繁に演奏する曲です。

 John D. Burgess の音源は 1970年 代半ば以降、同じく Topicレーベルから "The Art of the Highland Bagpipe" シリーズ Vol.1 がリリースされています。 それぞれに1、2曲のピーブロックが収録されていました。
 Vol.1
(1976)に Salute on the Birth of Rory Mor MacLeod Vol.2(1977)に The Duncan MacRae of Kintail's LamentLament for Mary MacLeodVol.3(1980) に Too Long in This ConditionThe Lament for Sir James MacDonald of The Isles です。

 この他に 1983年に Lismor レーベルからリリースされた "P/M John D. Burgess Plays the Great Highland Bagpipe" というアルバムが有り、これには The Old Woman’s Lullaby が入っています。

 この他、レコードや CD などのメディアとしてリリースされていない John D. Burgess の演奏音源としては、(当時は到底聴く事は出来ませんでしたが、今では)ネットで自在にアクセス可能な School of Scottish Studies のアーカイブに、主に1960年代に録音された音源が数多く残されています。このアーカイブ音源にはピーブロックだけでも54曲残されているので、主 だったピーブロックはほぼ網羅さ れています。(⇒ Tobar an Dualchais・Kist o Riches/ 検索窓に "John Burgess Piobaireachd" と入力)

 20世紀後半に於ける最高のパイパーである事は衆目一致している John D. Burgess、そして、この様にそれなりの数の録音も残されていますが、上記5枚のアルバム に収録 されている7曲はどちらかと言うと短くて地味な曲ばかりです。
 録音メディアとしての LPレコードはどんなに詰め込んでも片面20数分、両面でも50分には届かないでしょう。製作サイドとしては、出来るだけ一般受けする内容にしたいのは当 然。ピーブロックについてはなるべくコンパクトな曲を選びたい気持ちは想像して余りあります。結果として7曲 の内10分を超す曲は Desperate BattleMary MacLeod のみで、その他はおしなべて皆ショートチューンです。
 Desperate Battle
Mary MacLeod とて、大曲(great tune)とは言い難く、どちらかと言 うと難易度の 低い、馴染み易い曲です。Too LongOld Woman はポピュラーですがやはりコンパクトな曲。

 そして、Rory MorDuncan MacRaeSir James の3曲に至っては極め てマイナーな曲です。コンペティションの課題曲として取り上げられる事も殆ど無く、他の人の演奏音源も極めて限られます。中でも、 Duncan MacRae of Kintail's Lament に関しては、私の手元にあるこの他のパイプによる音源はたったの2つ。John D. Burgess を見出し指導した William Ross の古い演奏音源、Binneas is Boreraig Malcolm Ross MacPherson による音源だけです。(PS Books 全曲を網羅している Jack LeeBagpipe Music Library には音源が有りますが、お金を出し渋っています。$5.25/曲はちょっと高い。他に音源を持っていなくてどうしても聴きたい曲が出たら購入するでしょう が…。)

■ John D. Burgess のたおやかな表現 ■

 マイナーな3曲と、もう少しポピュラーな短くも美しい The Old Woman's Lullaby を合わせた4曲に共通している特徴を「極めて素人的かつ雑駁に」まとめ ると次の通りです。

  1. 演奏時間10分以下のショートチューン
  2. ウルラールとそれに続くバリエイションが微妙に変化しながら概ね3回連続する
  3. taorluath と crunluath バリエイションが無いか、有ってもごく控え目
  4. (上記2点の結果)全体を通してテンポがほぼ一貫してゆったりして、派手な盛り上がりが無い

 ショートチューンは他にも沢山ある中で、敢えてこの様な共通した特徴を持った曲をセレク トしてアルバムに収めたのは、私は John D. Burgess 自身の意向によるものではないか?と考えています。

 今更言うまでも有りませんが、John D. Burgess のライト・ミュージックに於ける運指の素早さは正に光速(⇒ 参考動画)。そして、ピーブロックに於いても、ウルラールやバリエイション の前半はごくスローに始まった曲でも、taorluath や crunluath バリエイションになると、ごく普通のスピードにアップして演奏する例がよく見られます。

 Ronald MacDonald of Morar’s Lament はその典型例。前半 Urlar-Var.1-Var.2 は  Gavin Stoddart のおよそ25%増しのテンポ(GS 5:15 vs JB 6:50)でゆ〜っくりと演奏していながら、T&Cバリエイションになると Gavin Stoddart とほぼ同じテンポにペースアップします。

 Lament for the Children も同様に、前半の U-V1-V2 は Gavin Stoddart とほぼ同じテンポで演奏(GS 9:30 vs JB 9:20)しているのにも関わらず、T&Cバリエイションになるといきなり2分近くテンポをアップ(GS 8:30 vs JB 6:40)させます。この部分については、やたらと駆け足過ぎて好ましくありません(OMG、言っちゃった…。神様お許しを…)。

 これらの例で見られる様に、早く演奏しようと思えば幾らで早く演奏できる John D. Burgess ですが、ウルラールやウルラールのダブリン グ&トリプリングといった、ピーブロックのメロディーを聴かせる部分に関しては(時にゆっくり過ぎると疎 まれる程に)極 めてゆっくりと演奏する。そして、最後のウルラールについては必ず締めのウルラー ルを最後まできっちり演奏します。他の人の演奏ではファーストラインで演奏 を終える例が殆どです。こういった John D. Burgess の嗜好がこの4曲をセレクトした事、そして、その演奏自体に如実に表れている様 に思えます。


■ Duncan MacRae of Kintail’s Lament の不思議 ■

 4曲の中でも音源的に特にレアな Duncan MacRae に ついて、更にもう少し詳しく見てみましょう。なお、この曲については "Piping Times" 1988年3月号に興味深い記事が掲載 されているので、そちらもどうぞお目通し下さい。

 John D. Burgess のこの当時のアルバム全てが、デジタル音源としてネットで容易に入手できる訳では有りません。しかし、この曲が収録されている The Art of the Highland Bagpipe Vol.2 については、iTunes Store と Amazon で扱っています。(Vol.1 については後述、Vol.3は 有りません。)
 通常、iTunes Store で曲を購入する際、演奏時間が長い曲は単体での購入ができず、アルバム全体を購入しなくてはなりません。どうやら10分がボーダーの様でピーブロックは殆 どの場合それに該当します。しかし、幸いにも Duncan MacRae は 9:26 なのでギリギリセーフ。曲単体での購入(¥255)が可能です。しかし、2020年8月現在、幸か違法かこの音源は Youtube にアップされているので、今ならタダで聴く事もできま す。(2024年2月現在、削除されています)

 もう一曲の Mary MacLeod は16:10 なので単体での購入は不可。アルバムの価格は本来は1,222円の筈ですが、何故か今は少し安くなっていて 967円と表示されています(2020年8月現在)。
 一方で、Amazon の扱いと価格は異なっています。アルバム全体では1,200円となっていますが、曲名をクリックするとMary MacLeod も共に単体での購入が可能で、価格は200円。
 購入する内容によって iTunes Store と Amazon を賢く使い分けするのが良いかと思います。

 楽譜は PS Book No.4 P121上半分に 掲載されています。
 そのページをご覧になると気付かれると思いますが、奇しくも同じページ下半分に掲載されているのは、Salute on the Birth of Rory Mor MacLeod の楽譜。つまり、The Art of the Highland Bagpipe シリーズ Vol.1 Vol.2 に収録されて2曲は、PS Book の同一ページから選ばれているのです。

 これは意図的なのか? 単なる偶然なのか? と思わずその意味を推し量ってしまいました。しかし、仔細にチェックしてみると、John D. Burgess が演奏している Rory Mor は、PS Book の楽譜とは所々で微妙に異なっている Kilberry Book のバージョンでした。…なので、これは単に偶然とみて良さそうです。

 さて、話を Duncan MacRae の楽譜に戻して…。
 一瞥して直ぐ分かる通り、この曲は ChildrenMorar’s と同様にウルラールを微妙に変化させながら3回楽しむパターンの曲。

 例によって練習する際の参考にするため、演奏時間を計測して見た所、興味深い事が判りました。なんと、John D. Burgess は Urlar、Var.1、Var.2 の全てをきっちり同じ 2:15で演奏するのです。そして、再び Urlar に戻る。ですから、トータルの演奏時間はほぼ 2:15×4= 9:00(⇒ 楽譜の赤数字参照/クリックで拡大)

 徹頭徹尾ペースを全く変化させる事なく、粛々と9分間演奏し続ける様は、まるでお坊さんがお経を唱えるかの如く。 実に見事で思わず居住まいを正して聴き入ってしまいます。

 2007年に書いたパイプのかおり第28話R. U. BrownNameless(Hihio Tro Tro)を聴いた時の印象について、当時の私は次の様に書いています。この中でこの曲にも触れてい るので、自分の文章ですが引用してしまいます。

 「バリエイション・パートも特に盛り上がるでもなく、終始たおやかなメロディー・ライン に終始するそれは一種独特な 雰囲気の曲で、同様な展開をする、Duncan MacRae of Kintail's LamentThe Old Woman's Lullbay にも通じ るものがあります。パイパー森は The Vaunting のように、グイグイグイ〜ッって盛り上がってパーッっと終わる典型的なピーブロック・パターンの曲も好きですが、一方でこの曲のように、言ってみれば『ウ ルラール3部構成&ノン・バリエイション』といった曲も大いに好みます。
 そのような曲では、そのたおやかなメロディーに身を委ねている内に次第次第にそのメロディー・ラインの展開にス〜と引 き込まれて、まるで金縛りにあったようになります。なんて言うのでしょうか、『メディテイション・ピー ブロック』とでも名付けたらぴったり来るようなピーブ ロックのジャンルだと言えましょうか。おっと、元々ピーブロックって瞑想音楽ではありますが…。」

 なお、参考までに、この Nameless(Hihio Tro Tro)に ついては Colin MacLellan YouTube Channel でも聴く事が出来ます。


 ここで、一つ疑問が湧きました。
 Duncan MacRae の Urlar-Var.1-Var.2 のパターンは ChildrenMorar’s のその部分と同じです。では、何故この曲では、それらの曲と同様に、それに続けて Urlar のテーマノートに Taorluath や Crunluath を装飾して演奏するバリエイションを展開しないのでしょうか? 

 この様な構成の曲が好きだ、と言っておきながら矛盾していますが、物は試しにとその様 にして演奏してみました(もちろん、デジタルチャンターです が…)。 つまり、T&Cバリエイションで盛り上げて、最後に再び静かなウルラールに戻って終わる形です。試してみて判っ たのは、さほどの違和感が無いという事。テーマノートの展開の仕方によるのか、凄く馴染み易い。

 一方で、この曲と同様にウルラールの変形パターンが静々と進行する Sister’s Lament Old Woman’s Lament では、その様に演奏してみようという愚かな想いは浮かんできません。何かが違う…。


 またその逆に、The World Greatest Pipers シリーズの嚆矢である Vol.1P/M Angus MacDonald が演奏している Lament for the Children は Urlar-Var.1-Var.2(8:55)で終わる、 T&Cバリエイション抜きのショートバージョン。StoddartBurgess の演奏よりも少々アップテンポですが、これはこれだけで十分に鑑賞に値します。T&Cバリエイションが無くても良いメロディーは良い。それだけで 十分に満腹になります。

 参考までに、この音源もショート バージョン故に、iTunes Store で単体購入(なんと僅か153円!)が可能です。もし、まだこの音源を持って無い方はこの機会に是非…。なお、この音源については、Amazon ではデジタル版は扱っていません。

 因みに私はこのアルバムの LPレコードを持っていたにも関わらず、その後 CD版がリリースされた際に、この 8:55の音源だけのために CDアルバムも再度購入しました。それが、今ではたったの153円…。まあ、デジタル世界は概ね皆そんな事ばかりですね〜。良い時代になった事を素直に喜 びましょう! 更に、例によって何故か YouTube にアップ(2020年8月現在)されているので、今なら 実質タダで聴く事が出来てしまいます。


 さて、またまた枝道に逸れてしまいましたが、話を戻して…。
 APCMusic material のページを参照して、Duncan MacRae の全ての古い楽譜を調べ ても、どれも T&Cのバリエイションは書かれていません。…なので、この曲で T&Cバリエイションを演奏しないのは、昔からの慣しの様です。

 では、そもそも、ある曲のメロディー・テーマノートに延々と装飾を加えてバリエイションを続けるのか、続けないのかと いう違いは、一体何処から生じているので しょうか?

【2024/2追記】
 
先日、最近溢れ返っている YouTube のピーブロック動画を片っ端から何気に観ていたら、Lament for Colin MacRae of Inverinate という曲の演奏に出会いました。ブルターニュで20年近く続いているピーブロックの野外演奏会(Pibroc'h gathering in Cancale)に於ける、フランス・ピーブロック界の第一人者、Patrick Molard による演奏
 「あれっ、どこかで聴いたことのある曲だがな?」と、思って PSサイトで調べてみると、"This tune is a version of Duncan MacRae of Kintail's Lament and adds Taorluath and Crunluath variations" との事。想像した様なバージョンが実際に存在した のでした。楽譜と解説は PS Book16(P552〜554)に載っています。
 PSサウンド・ライブラリーにも、Michael Cusack、R.U.Brown、John Don MacKenzie の演奏音源が有るので、既にダウンロードして自身のサウンド・ライブラリーにも入っていたのですが、これまではこの事には気付きませんでした。ピーブロッ ク については、毎日が勉強の日々です。

  その後、Simon Fraser の赤本(The Piobaireachd of Simon Fraser with Canntaireachd)の目 次を眺めていて気付きましたが、この楽譜集ではこの曲が Colin MacRae's Lament というタイトルで収録され、解説文には "This tune is usually known as Duncan MacRae of Kintail's Lament." と記 されています。
 1985年にリリースされた Alt Red Book に既に収録されていたこの曲(の別バージョン)が、30年後の 2015年にリリースされた PS Book16に なって漸く掲載された、という経過になります。そもそも、PS Book16自 体が、PS Book15のリリースから25年後のリリース。21世紀になって漸く PSの民主化が進んで来た、と考えるべきなのでしょうか。Simon Fraser が受け継いでいたマクリモンの正しい伝承が日の目を見るのには、か なりの時間が掛かっている、という事には変わりありません。


 この曲に関して、もう一つの不 思議が、師匠の William Ross の残した音源との比較です。
 その音源は Bagpipes Of Britain & Ireland というアルバムに収録されています。ネット経由でデジタル音源の購入も出来ますが、この音源も YouTube に音源がアップ(2020年8月現在)されています。

 この音源を聴いてお判りの通り、RossBurgess 2:15 掛けて演奏するウルラールを僅か1:15 という超スピードで演奏します。Ross が演奏しているのは Kilberry Book(P40) に収められている Urlar - ThumVar. - Var.2 - Var.3 というセッティングで、最後の Urlar は演奏していません。つまり、トータルの小節数は Burgess の演奏と全く同じなのですが、全曲通してそんな 調子なので、演奏時間は僅か 4:55。なん と、Burgess9:00に比べ て45%もダイエット。当然ながら、比べて聴いてみれば、まるで別の曲という印象です。

 師匠と弟子でのこれほどの表現の違いは一体何故?

 恐らく、William Ross は天才パイパー John D. Burgess を見出した後は、パイピングの師匠としての立ち位置にはいなかったのでは無いでしょうか。つま り、Ross が見出した時の Burgess の演奏技量と感性は既に完成されていて、Ross の立場からは更に教える内容は無かった。Ross は、若き John D. が周りからス ポイルされる事無き様に庇護しつつ、その才能を世間にお披露目する際の「後見人役に徹した」のでは無いでしょうか。
 この曲に対する2人の解釈の違いから、色々と想いを巡らせてみた次第…。

 そんな下世話な憶測はどうであれ、私が John D. Burgess の表現に強く惹かれる事だけは確かです。

■ Hi-A で終わるピーブロック ■

 あれこれ想いを巡らせていた時に気づいた Salute on the Birth of Rory Mor MacLeod のある事について。
 この曲が収録されていた The Art of the Highland Bagpipe Vol.1 のデジタル版は iTunes Store や Amazon で扱っていません。しかし、この曲のデジタル音源を購入する事は可能です。

 実は、Topic レーベルでは 1993年に King of Highland PipersThe Art of The Highland Bagpipe Vol.1 の2つのアルバムから曲をセレクトして King of Highland Pipers のタイトル(ジャケットは Art of 〜 Vol.1 のアルバム写真)の CDをリリース。iTunes Store と Amazon では、この CDのデジタル版を扱っているのです。
 セレクトなので両方のアルバムの全ての曲が収録されている訳では有りませんが、幸いにもピーブロックは2曲 とも収録されています。iTunes Store の場合、Desperate Battle は10分を僅かに超えているのでダメですが、Rory Mor は6:50 な ので単体購入(255円)が可能。
 更に、Amazon の場合は両方の曲ともに、単体での購入(200円)が可能です。このケースでは Amazon の全面勝利! …ですが、なんと、この音源も YouTube にアップ(2020年8月現在)されているので、結局は タダで聴く事が可能です。(2024年2月現在、削除されています)

 この曲、聴き終わった時の余韻が何か違うな〜?と思っていました。ある時、音源を聴 きながら楽譜を一緒になぞっていてやっと気付きました。この曲はウルラー ルの最後、つまり、曲の 最後が Hi-Aで終わっているのです。そして、この独特な終わり方が、私 がこの曲にどこか惹かれるものがあった理由だと悟りました。
 この曲については、他の人の音源も幾つかありますが、他の音源では、例によって最後の締めのウルラールを最初の一行で 終わりにして しまったり、途中でフェードアウトさせてしまっています。この独特な終わり方を味わう事が可能なのも、最後のウルラールをキッチリとお仕舞いまで演奏す る、John D. Burgess ならではの世界。


 ところで、この様な終わり方をする曲は珍しいのだろうか? と疑問が湧いたので、PS Books 全スコアを最初から最後までめくってみました。(この様な時にデジタル版は重宝します。単にクリックを繰り返すだけですから…。)
 なんとこの様な終わり方をする曲はこの他にはたった1曲だけ。その1曲とは、これもまた 短くも 美しいあの Lament for Donald of Laggan でした。

 ポピュラーなこの曲には沢山の音源があります。私の手元には11の音源がありますが、その中で、締めのウルラール をきっちり最後まで演奏して、Hi-Aで終わっているのは、たった2つの演奏音源だけ。殆どの音源が最後 まで演奏しないので、これ までこの事に気付きませんでした。やはり、締めのウルラールは最後まで演奏すべきなのでしょう。

 最後の Hi-A を聴く事ができる音源の一つはも ちろん John Burgess の演奏音源。School of Scottish Studies に残された音源な ので、ぜひ耳を傾けて下さい。そして、もう一つは 2020年5月末から盛んに自身の演奏音源をアップしてくれている Colin MacLellanColin MacLellan YouTube Channel の音源で す。つまり、この曲の最新音源。せっかく良い演奏なのに最後の最後でフェードアウトしていて Hi-A が微かにしか聴こえないのが、ちょっと残念ですが…。

 それにしても、振り返ってみると、この曲について1995年に書いた文章でも、先に引用した2007年の文章とまるで 同じ様 な事を書いてい ましたね。 25年間、相も変わらずと言った所。

 ところで、この Donald of Laggan を演奏する際には、Original PS Books の楽譜がお勧めです。冒頭の birl の代わりに清く正しい hiharin で表記されているのが良い点の一つ。(⇒ 楽譜参照/クリックで拡大)
 …ですが、何よりも、taorluath & crunluath が共に breabach であるこの曲の於いては、特にオール ド/トラディショナル・スタイルの Taorluath & Crunluath で Low-Aをホールドして演奏してこそ、本来の姿だと感じられるからです。
 この楽譜通り演奏すると、Redundant-A は本来 Essential-A である事を痛感します。


 いや〜、ピーブロックという音楽は、本当にいつまで経っても興味が尽きない対象です ね。 

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