パイパー森の音のある暮らし《2018年

2018/3/11
(日)

NPC が CoP を吸収合併

 両者が合併に合意し、2018年5月1日を期して新組織に移行するという事になりました。詳しくは、Piping Press の次の二つのブログ記事にお目通しください。
 概ね察しはついていましたが、最近の CoP は船頭不在の泥船状態だったようです。
 そもそも、NPC は1990年代に入る頃に、CoP の新しい箱 "A new home for the College of Piping" として企画された建物。当時は、"Piping Times" 誌上でもそのための寄付金集めの呼びかけが盛んで、パイパー森もいくばくかを寄付したものでした。

0002661M.jpg 3/7付けブログ掲載に掲載されているのは、その当時の新組織の建物前で撮影された貴重な写真。当時の CoPの主要メンバーが和やかに微笑んでいるのは、実は「嵐の前の静けさ」です。

 計画が具体化してから数年を経過、組織構成作業が終盤に近づくにつれて、資金集めの中核を担ってきた人々と、組織としての資産や誌面を通じて集めた募金などを提供してきた CoP との考え方の齟齬が顕在化。Seumas は実質的な権限の無い名誉職に退けられようとします。
 1995年1年間は喧々諤々の交渉が続いたようですが、1995年1月29日に両者は最終的に決裂。Seumas MacNeill はその事に怒り心頭となり、1996年4月4日に憤死。

 それ以来、従来と変わらず民間組織としての独自路線を貫く事にした CoP と、当初の目論見通りに国のバックアップを受ける体制となり、"The National Piping Centre" としての道を営々と歩み始めた新組織とでは、その行く末の明暗は火を見るよりも明らか。
 ちなみに、CoP と袂を別つ事が決まった後の新組織の当初の名称は "National" 無しの単なる "Piping Centre" でした。

 20余年を経て、「収まるべくして収まるべき所に収まった」と言った所です。

 ↓は 2018/3/13に CoP から送信されて来たメッセージ。
CoPmessage.jpg

2018/3/17
(土)

PS Books の原点

 ピーブロック・ソサエティーの公式楽譜集、いわゆる "Piobaireachd Society Books" は折々に再版や大幅改訂などを実施しながら、現在 Book16 まで刊行されています。
 そもそもの Book1はいつリリースされたか?と言うと、それは1925年の事。そして、最新版の Book16 は 25年ぶりの新刊として 2016年にリリース。実に90年間掛けて16冊の楽譜集を揃えるという、実に息の長い事業です。

 さて先日、Alt Pibroch Club - Learning Living Pibroch の2018年1月28日の投稿に "Original Piobaireachd Society – First Series" と言うアナウンスメントが有りました。
 それによると、ピーブロック・ソサエティーは 1904〜1913年に掛けてピーブロック楽譜集の最初のシリーズを刊行していた様です。楽譜集の名称は "A Collection of Piobaireacd. Selected and edit by The Piobaireachd Society." 。シリーズは5巻で、32曲(実際には35曲)の楽譜が収録されていたとの事。
 そもそも、ピーブロック・ソサエティー設立の大きな目的の一つは、コンペティションで演奏すべき(ジャッジし易い様な)標準的な楽譜を定める事でした。 ですから、1903年の設立から間も無く標準的楽譜集が順次リリースされ始めた、と言うのは極めて納得のいく話。また、最後の5巻目が1913年にリリー スされて(終わって)いると言うのは、第一次世界大戦の開戦でそれどころでは無くなったからだ、と言う事も容易に想像がつきます。
 
 その後、再建されたソサエティーの音楽委員会が Archibald Campbell of Kilberry の先導の下、1932年より新たなシリーズを再開する事を決めて以来、この最初のシリーズは廃刊になり入手不能になった。(…と書いてありますが、これは1922年の誤植かと思われます。何故なら、冒頭で書いた通り、新たなシリーズの第1巻目たる Book1のリリースは1925年だからです。)

 いずれにせよ、廃刊で入手困難だったこの最初のシリーズのゼロックスコピーが、2017年に Alt Pibroch Club の手元に送り届けられたとの事。英国の著作権保護期間70年を過ぎているそれらは公開可能と理解できるので、APC では歴史的資料として公開する事とした由。その後、2月上旬〜3月上旬にかけて5回に分けて順次紹介されました。
  1. Volume 1  Posted on February 3, 2018
  2. Volume 2  Posted on February 17, 2018
  3. Volume 3  Posted on February 24, 2018
  4. Volume 4  Posted on March 2, 2018
  5. Volume 5  Posted on March 10, 2018
 それぞれのページには解説と共に該当のオリジナル楽譜へのリンクが張ってあり、順次クリックして行くと、自動的に全ページのJPEGファイルがフォルダに入った状態でダウンロードされます。
 どうぞお楽しみ下さい。…と言う所でしょうが、JPEGファイルでバラバラに提供されてもね〜。せめて PDFファイルにバインドして欲しかった。…ならば、自分でやれば良い。

 …という事で、例によってシコシコ作業してVolume1〜5の全124ページを一冊にバインドしたPDF版を作成しました。このサイトのサーバーにアップしましたので、どうぞご自由に閲覧&ダウンロードしてお楽しみ下さい。右下の表紙からリンクしています。
 なお、各巻へのインデックスを兼ねたこの表紙は私の自作。仕様、リンク等については以下の通りです。

 A Collection of Piobaireachd - Selected and Edited by The Piobaireachd Society
  • O_PSBooks.jpgVolume1〜5/P3〜125
  • 全体表紙の Volume 表記から各々の該当巻表紙ページにリンク。
  • 全体表紙から、P2全体インデックスページへスクロール。
  • 全体インデックス「曲タイトル」から該当楽譜ページトップにリンク。
  • 全体インデックスの「曲タイトル」については、現在の PS Books のタイトルに準ずる。
  • 各表紙ページから各巻インデックスページにリンク。
  • 各巻インデックスページはインデックスとしてのリンクは無し。
  • 全ての楽譜&解説&各巻インデックスページからP2全体インデックスページにリンク(戻る)。
  • JPEG版の特に酷い歪みや位置ズレ等については画像修正ソフトで修正済み。
  • Preface、Index、扉ページの順序など、JPEG版で明らかにページ順序が入れ替わっていると思われる箇所は修正済み。
  • ファイルの移動などの際に、リンクが壊れるケースがあります。その様な際は(ご自身で修正可能な方は)お手数ですが修正願います。

2018/3/28
(水)

"The Big Spree" は
エクササイズ
に最適?

MyScores.jpg 私は、日頃のチャンター・プラクティスの為に、My Scores という楽譜集PDFを作成しています。この楽譜集には「既に&いつかはレパートリー」のスコアを40曲余り収録。iMac や iPad の画面にワンクリックで呼び出せるように設えてあります。
 右がそのトップのインデックスページ。タイトルからリンクが張ってあるので、ワンクリックで該当のスコアページに飛びます。もちろん、逆も可なり。
 既に習得した曲でも、最近は殆ど演奏しない曲も有ります。また、半分位は「いつかはレパートリー」。つまり未習得の曲です。

 「いつかはレパートリー」の一つに、"The Big Spree" が有ります。"Beloved Scotland" と並んで、ピーブロックに本格的に取り組み始めた頃からの、つまり30年近くの歴史(?)ある「いつかはレパートリー 」。
 時折、思い出した様になぞってみては「う〜ん、良い曲だ!」と感じ入りつつ、またそっと脇に置くと言う事を、何度繰り返してきた事か…。

BSpree.jpg  さて、パイプのかおり第37話で 書いている様に、トラディショナル・スタイル Taorluath & Crunluath を試すために、久しぶりにこの曲をなぞってみました。ところが、今回は何故かいつもとは違った印象が…。突然閃いたのは「この曲はまるでグリップの練習曲 だ!」という事。
 この曲、確かに延々とグリップが続きます。そのため以前はそれにうんざりしてしまって、練習が続かなかったと思われます。
 ところが、ここ半年間程はトラディショナル・スタイル T&C をマスターするため、必然的に「グリップ+α」という運指を散々繰り返して来ました。その結果、グリップの連続が嫌でないどころか、どちらかと言うと快感になってしまった様です。
 同じ「グリップ+α」の繰り返し練習をするにしても、単にスケールを上下しながら練習するよりも、この様に曲の形で練習する方がより楽しめます。
 もちろん「グリップ+α」の練習曲といえば、例の "War or Peace" が最たるものですが "The Big Spree" の方が遥かに複雑でかつ美しく、飽きません。 …なので、この曲はエクササイズに最適だと思い至った次第。

Darodol.jpg  また、この曲の冒頭にいきなり登場する Darodo という装飾音は、グリップよりも更に難敵。一応、習得完了している曲でも、実はこの装飾音はかなり怪しいレベルであるのは、誰よりも自分自身が認識しています。"Ronald MacDonald of Morar's Lament" の Urlar では、いつもヒヤヒヤもの。正直な所、上出来と言えるのは数回に一回と言った程度でしょうか。ですから、この難敵 Darodo を完全攻略する意味からも、この装飾音が Urlar に4回も登場するこの曲は、良い鍛錬になり得ます。

 一方で、Taorluath バリエイションについては、この曲では通常のそれではなく、3連符になります。しかし、これはこれでこの曲のキモ「聴かせどころ」でもあるので、この際いい練習のチャンスと捉えれば、励み甲斐が有ります。

 …という訳で、最近はチャンター・プラクティスの最初に、まずこの曲を演奏するのが日課になっています。それも、ウォーミングアップも兼ねて、一つ一 つの音がはっきりと聴こえる程度の、極めてゆ〜っくりしたテンポで…。何故かといえば、この曲をなぞるのは装飾音のエクササイズが目的なのですから。

 一つ、念を押しておきますが、この曲を参照する際は必ず PS Book 1 のスコアをお使い下さい。The Kilberry Book のスコアは使い物になりません。

2018/4/3
(火)

Side Lights & Further Side Lights on the Kilberry Book of Ceol Mor
合体デジタル版

 "Side Lights on the Kilberry Book of Ceol Mor" とその続編 "Further Side Lights 〜 " については1984年12月号 "Piping Times" で紹介。その中で、現在ではこれらの2冊のデジタル版が PS サイトで無償公開されている事についても触れました。

PSsite.jpg  サイトページに各々の本のコンテンツページが再現され、各タイトル右端の Document 欄の下向き矢印が該当ページの PDFファイルにリンクしています。つまり、矢印をクリックしてオンラインで開くなり、リンク先ファイルをダウンロードしてオフラインで読むなり自在。

 しかし、試してみれば分かりますが、このシステムは極めて使い難い。そもそも本なのですから、単独のデジタル本の形式で提供してくれた方が、余程使い易いと思います。
 …ならば、自分でやれば良い。

 まずは、全てのファイルをダウンロード。
 サイトのコンテンツページでの並び順は何故か紙版の並び順と異なっているので、まずは紙版と同じ順に並び替えます。
 その段階で気付いたのですが、なんと、両方の本共に、途中2、3箇所、併せて3〜4ページ分が抜けている…。
 どうせやるならキチンと仕事しろよ〜! ブツブツ呟きながら、欠落部分について紙版をスキャンして補充。
 全ページをバインドして完成。残るはリンク張りだけ?…と思ったのですが、そうは問屋が卸しません。

 いくつかのページでは見事にページが傾いたりしています。それよりも何より、各ページの余白がやたら大きい。これでは、iPad などの限られた広さのディスプレイで読む際に、文字が小さく表示され、老眼者としてはいちいちページを拡大する必要が生じます。…というか、そもそもペー ジレイアウトが勿体無い。
 そこでどうせなら一手間を掛ける事に…。
 ダウンロードした PDFファイルを全て一旦 JPEGファイルに変換し、全ページについて傾き等の補修しがてら、文字部分を拡大して余白を極限まで削る作業を行いました。…とは言え、自分でスキャンからする事を思えば、極めて楽チンなのは言うまでもありません。

 仕上げた PDFファイルをバインドするにしても、わざわざ別々の本にしておく意味も無いので、この際2冊分を合体する事に…。全体の表紙として2冊の表紙自体を上下に半分づつ反転合体してトランプの絵柄カードの様な表紙を設えました。
 合体表紙の次には、2冊に収録されている全50曲について、現在の PS Books に準じたタイトル名&並び順にした全体インデックスページを作成。後はシコシコとページリンクを張るだけ。

 …という事で、今回も存分に楽しませて貰いました。
 公開されているものを若干アレンジして扱い易くしただけ(?)なので著作権上も問題無しと解釈。オリジナル PS Books と同様にこのサイトのサーバーにアップしました。↓表紙写真からリンクしています。どうぞご自由に閲覧&ダウンロードしてお楽しみ下さい。
 仕様、リンク等については次の通りです。

 Side Lights on the Kilberry Book of Ceol Mor/Further Side Lights on the Kilberry Book of Ceol Mor
  • SK%EF%BC%86FSK.jpg合体版/141ページ/127.9MB
  • Side Lights 〜:P4〜70/Further Side Lights 〜:P71〜141
  • 全体表紙上半分(Side Lights 〜)から P4(Side Lights 〜 表紙)へリンク。
  • 全体表紙下半分(Further Side Lights 〜)から P71(Further Side Lights 〜 表紙)へリンク。
  • 各々の表紙からは、全体表紙へリンク(戻る)。
  • 全体表紙からスクロールして P2&3全体インデックスページへ。
  • 曲のタイトル表記及び並び順は、PS Books インデックスに準ずる。
  • 各曲タイトルから該当ページトップにリンク。
  • 各曲スコアページからは P2&3全体インデックスページにリンク(戻る)。
  • 全体インデックスページのタイトル "INDEX OF TUNES" 文字から全体表紙へリンク(戻る)。
  • 全 体インデックスページのサブタイトル "Containde in Side Lights 〜" から P6 Side Lights 〜コンテンツページ/ "And Further Side Lights 〜" から P71 Further Side Lights 〜コンテンツページにそれぞれリンク。
  • 各々のコンテンツページ(P6 & P71)の各項目から該当ページにリンク。
  • Foreword、Editor's Preface、Introduction、General Remarks、Appendix ページからは当該のコンテンツページにリンク(戻る)。
  • ファイルの移動などの際に、リンクが壊れるケースがあります。その様な際は(ご自身で修正可能な方は)お手数ですが修正願います。

 膨大な楽曲を網羅しながらも、大判16冊に分冊されていた PS Books は極めて扱い難い楽譜集でした。それ故、私も含めて世界中のピーブロック演奏者は、それなりの楽曲を収録しつつ、ハンディかつ(ハードカバー故に)丈夫な Kilberry book を大いに重宝してきました。
 しかし、私個人について言えば、デジタル版 PS Books によってその(取り扱い難さの)デメリットは完全に払拭されました。結果として、最近の私は Kilberry Book を参照する事は皆無。私の中では Kilberry Book の役割は完全に終わっています。
 しかし、それに対してこの Side Lights & Further Side Lights 〜 の方は、読み物としてはそれなりに楽しめます。ただ、その際に留意すべきは、このメモはあくまでも当時のアマチュア・ジャッジサイドの視点で、ある意味啓蒙的な意図を持って恣意的に書かれているという事。その様な視点で読み解き、当時の彼らの意図を推し量るための資料と言えましょう。

  "Piping Times" の記事でも触れた、General Remarks on Piobaireachd playing のページを改めて読み返してみると、Taorluath & Crunluath の表記を、トラディショナル・スタイルから現在のスタイルに変えた際の経緯についても触れられていました。
 Archbald Kilberry は、楽譜表記に際しては General Thomason の省略形に従った由。それはつまりは、そのまま当時のピーブロック・ソサエティーの方針と言う事になります。

 その内容は、20世紀が始まる頃の時点で、John MacDougall Gillies などの当時のマスター・パイパーたちにとっても、既に "A" は聴こえ(演奏され)ていないと認識されていた様に書かれています。それ故、トラディショナル・スタイルの表記は奇異だと感じられていたとの事。そして 「"A" が実質的に演奏されてないのなら、表記は不要(redundant)では無いか?」という考え方が主流だったという書き様。
 しかし、この記述自体をそのまま鵜呑みには出来ません。
 その証拠に、John MacDougall Gillies の弟子の一人でもある Robert Reid は「そもそも "A" が無いのと、きちんと"A" を経由しながらスピードを上げる事によって殆ど聴こえなくなるのとでは、結果として聴こえる装飾音に大きな差がある」事を指摘(実演)しています。そして、それが自分が正しく教えられた(properly taught)結果だとも…。

2018/4/11
(水)

タリスカー10年が
人気 ナンバー1 ?!

 私は、食料品の買い出しに近所の成城石井をよく利用します。安心安全な食品が多いのと、珍しい輸入食品に出会う事もできるので…。マーマレード発祥のマッカイの製品などもご愛用。
 この店のアプリをスマホに入れておくと、折々に5%や10%ディスカウントのクーポンが配信されるので重宝しています。

Talisker10.jpg  今日も、さて今日は何か割引あったかな?とアプリを覗いてみてビックリ! こんなお薦め商品が…!

 「家飲み用のおすすめウイスキー」ランキング、第1位に選ばれる「タリスカー 10年」

 そのアンケート結果はこれ
  家飲み用のおすすめウイスキーランキング
 同じサイトの
  初心者向けおすすめウイスキーランキング
 でも3位に入っています。

 殆どお酒を飲まない私が、唯一口にするのがタリスカー。スコッチといえばアイラ島やスペイサイドのウィスキーが持てはやされ、タリスカーは極めてマイナーな存在と思っていました。

 私自身はお酒の味が解る訳でも、他の酒と比較する訳でもありません。まして、私の場合は舌で味わっているのでなく、頭で味わっているので、この味が悪かろうはずはありません。
 しかし、多くのお酒を飲み比べているようなそれなりに舌の肥えた人々からも、タリスカーが支持を得ているとは全く想像していませんでした。

 意外なものですね〜。

 せっかくのですから、次にはタリスカー・ストームとやらを試してみましょうか…。…とは言っても、今年のお正月に購入したばかりの今のボトルが空になるのは、いつの事やら?

2018/5/1
(火)

Alt Red Book
デジタル版

 本日、"Piping Times" 1988年5月号をアップしました。実はこの号の作業終了後早々に The History of the Bruces の記事で紹介している Alt Red Book をバッサリ裁断。数日かけて340ページの修正作業の後リンク張りなど、デジタル版の制作に没頭していました。

 幸いにもサイズがA4だったので、SV300でスキャン可能。そのため、画像修正は最低限で済みました。しかし、さすがに700ページを超す PS Book 全16巻と比べても、そのおよそ半分にもなる総ページ数の修正作業は結構なハードワーク。

 そんなかんなで、昨日からは Alt Red Book の楽譜を参照しながら、Dr. Barrie Orme の演奏をじっくりと鑑賞開始した次第。

 このCDを購入した当時は、これまで聴いてきたピーブロックとは全く違うその演奏に対する違和感が強く、とても聴く気になれませんでした。

 しかし、「オールド(トラディショナル)・スタイルとはなんぞや?」という事がようやく分かって来た今となっては、まるで目から鱗が落ちた様に覚醒。

 Hiharin は決して birl もどきではなくて、徹頭徹尾「清く正しい Hiharin!」
 Taorluath & Crunluath もリズム感が全く違って、それぞれ強烈な躍動感に溢れています。

 これから、オールド・スタイルの表現を、日々じっくりと味わっていきたいと思います。

2018/5/20
(日)

Lady Margaret MacDonald's Salute
をオールドスタイルで

 2018/5/19〜の Pipeline のピーブロックは

 Angus MacCall による "Lady Margaret MacDonald's Salute"

 2011年の The Northern Meeting の Clasp 部門優勝音源。
 Angus MacArther 作のこの曲は、1820年に書かれた MacArthur-MacGregor Manuscript に収録されています(↓6/1の記事参照)。そして、今回のこの音源はこのオリジナルセッテイングによるほぼ忠実な演奏。つまり、いわゆる「オールドスタイル」です。

 実はこの音源は直後の 2011/9/3〜の Pipleine で一度オンエアされています。
  その時の私は、紹介文で「Crunluath バリエーションが楽譜の通り読み取れない?」ような事を書いています。しかし、その後オールドスタイルにかなり馴染んだ現在の私は、この演奏が正にオリジ ナルの楽譜通りであることがちゃんと理解できました。そして、その際には気付いていなかった Urlar の清く正しい Hiharin についても改めて感心。

 いや〜、やはりこの曲もオールドスタイルの方が格段に素晴らしいと思います。

2018/6/1
(金)

Donald MacDonald's Book & MS
MacArthur-MacGregor MS
デジタル版

DM_Book.jpg パイプのかおり第38話に書いた通り、George Moss によるとオールドスタイルから現代のスタイルへの変容は第一次世界大戦前後という事。ですから、オールドスタイルのピーブロックを堪能するに際しては、3月に紹介したオリジナル PS Books は極めて有用です。しかし、この5冊に収録されているのは僅か35曲だけ。

 一方で、Moss のインタビューで明らかになってきたのは、Donald MacDonald の楽譜はオールドスタイルに忠実に表現されている様子。それらの楽譜集ーDonald MacDonald Book(1820)Donald MacDonald MS(1826)ーには PS や APC のサイトで容易にオリジナルにアクセス可能です。しかし、出版まで漕ぎ着けた Book の方は兎も角も、結局出版に至らず手書き草稿のままである MS の方はどう考えても使い辛い。
DM_MS.jpg  幸い、Book は 2006年に、MS は 2011年に故 Roderick Cannon による解説本がリリースされています。これらの解説本では、全てのスコアが現代風に1曲が1ページに収まる形で書き起こされているので、格段に使い勝手が良くなっています。

 しかし、PS Books と同様の大判サイズ&概ね150ページを超すこれらは、あくまでも重厚長大な解説本。どう贔屓目に見てもハンディな楽譜集とは言えません。結果として、我が家では実質的に長年本棚の肥やし状態でした。
DM_B&MS.jpg しかし、事ここに至ってはそんな状況に甘んじている訳にも行きません。4月4日の APC-LLP の George Moss – the Master Piper from Strathglass シリーズで Moss の事を知り、オールドスタイルに真に目覚めた私は、それから程なくの4月中旬にはこれらの楽譜のデジタル化に踏み切りました。

 それぞれの収録曲数は Book:23曲、MS:50曲なので、装飾音の凡例ページなどを加えたとしても、総ページ数は2冊分合わせても100ページに届きません。
 …とは言っても、大判サイズ故に1ページ毎に開いてSV600でスキャンする必要があり、つまり、歪みの修正にはかなり手間が掛かるという事。しかし、この際、忍耐忍耐…。

 全てのページの修正が完了したところで、Sidelights and Further Sidelights on the Kilberry Books の時と同様に、2冊の表紙を画像修正ソフトで加工&合体して総合表紙を作成。全73曲を PS Books に準じたタイトル名&並び順にした全体インデックスページを挿入して、シコシコとページリンクを張るのみです。
DM_Index1.jpg
DM_Index2.jpg

MM_MS.jpg そうやって Donald MacDonald's Book & MS のデジタル版が完成してホッとしましたが、ふと考えてみれば、ほぼ同年代に同様のスタイルで記述されている The MacArthur - MacGregor MS(1820)も有ります。こちらも、Frans Buisman によって2001年にリリースされた分厚い解説本では、楽譜部分が現代風に書き起こされているので、同様の手順でデジタル化する事によって利便性が高まります。

 解説部分が膨大なので総ページ数は160ページを超えますが、収録曲数は 30曲のみ。この頃には、さすがに疲れていたのと、Frans Buisman による難解極まり無い解説部分については、おそらく今後一切目を通す事はなかろうと考え、楽譜部分のページだけ一部を潔く裁断。オートフィーダー付きのフ ラットヘッドスキャナーでスキャンしました。お陰で、スキャンには時間が掛かりましたが、修正作業からは解放されました。

 そんなかんなで、これに先立ってデジタル化した Dr. Barrie Orme による Alt Red Book、そして、APC-LLP で公開されたオリジナル PS Books と併せて、オールドスタイルで演奏する際に参照しやすいハンディなデジタル楽譜集が4冊完成となりました。メデタシ、メデタシ。
MM_Index.jpg

2018/6/2
(土)

パイプのかおり
第38話
の意味する所

 昨日アップした、パイプのかおり第38話は奥が深いです。
 ある意味、ピーブロックに於けるパラダイムシフトとも言える内容でもあるので、咀嚼するのにはそれなりの時間が掛かるかもしれません。私自身は今、45年に及ぶピーブロックとの付き合いがあった上での、新たな事象に触れたワクワク感に満たされています。

 決して誤解して頂きたくないのは、私がこの様にしてオールドスタイルを紹介するのは、これまで私たちが親しんできたモダン(?)スタイルを否定するためではありません。微妙な表現スタイルの違いはさて置いて、ピーブロックはそもそも素晴らしい芸術です。

 まずは、ごく一般的なピーブロック表現そのものを存分に味わって下さい。ピーブロックにはそれだけでも一生掛けても消化し切れない奥深さがあります。

 そして、その上で今回の記事を読んで「さらにその先にこんな世界がある」事を知っておくだけでも良いと思います。今は、「こんなの到底付いて行けな〜い!」と思っても、何年後か、何十年後かに、オールドスタイルがどうも気になって仕方ないという時が来るかもしれません。

 私が Dr. Barrie Orme による Fraser Style の演奏を収めた CD3巻 を入手したのはおよそ10年前の事。購入後、たった一度聴いただけで「違和感」どころか「拒否感」満載で、即お蔵入り。それ以来、この10年間一度も聴いた事がありませんでした。

 ところが、最近オールドスタイルの意味と意義が少々分り始めた所で10年ぶりに改めて聴き直してみたら、すっかりハマってしまいました。最近、1ヶ月程はピーブロックと言えば、 Dr. Barrie Orme の CD3巻をランダム再生する事しかしていません。

 決して焦らずご自身のペースでパイプのかおり第38話の情報を取り扱って頂ければ幸いです。

 100年雌伏していたオールドスタイルはこれ以上進化したり、消失したりする事は決してあり得ませんから…。

2018/7/1
(日)

若手パイパーの
心に沁み入る演奏に
感銘!

 2018/6/30〜の BBC Radio Scotland "Pipeline" のプログラムは、2人の若手パイパーによる情感溢れる演奏が聴きものです。

 まずは、つい最近王立スコットランド音楽院の伝統音楽の学位を修了したばかりという、Cameron Macdougall という人による興味深い音源。彼の学位習得の際の作品らしいのですが、伝統的なガーリック・メロディーをピーブロックにアレンジした創作曲です。

 まずはオリジナル音源として、School of Scottish Studies の1956年のフィールド録音による Jessie MacKenzie という女性による子守唄のシンギング。曲名は "Nam Bu Leam Fhìn Thu" 。この音源はこのところよくお世話になっている Tobar an Dualchais のサイトにあります。

 続いて、Cameron Macdougall がそのメロディーを基にピーブロック・セッティングにアレンジした "Nam Bu Leam Fhìn Thu" のパイプによる演奏。
 ガーリック・メロディーがピーブロックにアレンジされる様が良く理解できます。極めて印象的な創作作業の成果です。

 もう一つは、2017年に開催された若手音楽家たちのコンテストのハイランド・パイプ部門優勝者、David Shedden によるその時の演奏音源。
 "Lament for the Bishop of Argyll" というタイトルですが、こちらはピーブロックではなくてスローエアー。しかし、ベースとなるメロディーを徐々にアレンジしながら朗々と演奏する様は正にピーブロックに通じます。

 ハイランド・パイプに他の楽器が絡むのは大嫌いな私ですが、この音源に関しては、途中で入って来る極めて控えめなピアノ伴奏には全く違和感がありません。演奏後の会場の反応からも、この心に染み入る演奏は、聴衆の心をすっかり虜にした事が明らかです。

 両人とも「若手=超絶テク披露」というステレオタイプから一線を画している所が、実に好印象。

2018/7/31
(火)

Dr. Barrie Orme
の教則ビデオ

 私はこの所、パイプのかおり第39話を書くために、Dr. Barrie Orme の 3枚のCDに収録されている33曲について、それぞれの曲を現代のスタイルの演奏音源と聴き比べながら、じ〜っくりと聴き込んでいる日々です。

 色々考えさせられる点が多々あって、楽しくも悩ましい日々。

 そうこうしている内に、2018/7/18 の APC LLPブログ に Bob Gresh という人による "The Barrie Orme Tapes of the Simon Fraser Playing Style" という投稿がありました。
 そして、7/22にはその投稿に対して Geoff Jones という人が Reply し、なんと生前に Barrie Orme が残した3時間のビデオの内の1時間分の動画を投稿しています。

 7/23の投稿J. David Hester も謝意を表明。

 まだ、(半分眠りながら)ざっと一回だけ観ただけですが、オールドスタイルを知るためには大変有用なビデオです。残りの2時間分のビデオも期待したい所。

2018/9/1
(土)

30年前の
"Piping Times"
シリーズ
折り返し点通過

 1977年10月号から始めた30年前の "Piping Times" シリーズも今回の1988年9月号11年132号分を消化しました。完了を予定している 2029年までの 22年間264号分の中間折り返し点です。

 1973年にピーブロックと出会って45年経過しますが、直近のこの1年の間にも、私自身がオールドスタイルのピーブロックに本格的に目覚めるなど、ピーブロックの楽しさと奥深さはますます広がるばかりで、決して尽きる事が有りません。

 30年前の "Piping Times" を振り返るのも、単に懐古主義からやっている訳では無く、30年経過した今だからこそやっと理解できる様になった記事が、まだまだ盛り沢山。さらに言えば、今でもついて行けない様な記事が折々登場するのはご存知の通り。

 予定している残された年数&冊子も11年132号分。最後まで続けられるかどうかは神のみぞ知る限りですが、とりあえず1号1号、そして、1年1年を楽しみながら地道に続けたいと思います。

2018/9/28
(金)

Piobaireachd Concert in St Cecilia's Hall

 ピーブロック・ソサエティーの会員宛には先日メールでお知らせが入ったと思いますが、春先から盛んに告知されていたピーブロック・コンサートのビデオが公開されています。2018年8月12日にエジンバラの St Cecilia's Hall という所で開催された由。
 試しに会員としてログインせずに閲覧してみましたが観れました。つまり、誰でも観れると思います。

 冒頭、司会の Robert Wallace はパイプのかおり第13話で紹介した1999年のエジンバラフェスティバルの中で開催されたピーブロック・コンサートから、およそ20年が経つ中で同様のスタイルで企画した、という様な事をしゃべっている様です。因みに、Robert Wallace は1999年のコンサートの出演者。つまり、一般的なコンペティションの様に演奏に入る前に延々とチューニングを聴かせられる事の無いスタイル。

 それにしても、演奏が途切れないのは徹底していています。
 パイパーはウルラールを演奏しながら脇のドアから登場。会場をスローウォークしながら演奏。最後のウルラールを演奏しながら、拍手を受ける事もなく登場したドアに消えます。そして、まだその演奏が終わっていないところに、次の曲が重なって聴こえてくる始末。
 う〜ん、ちょっと詰めすぎじゃない? という感じですが…。
 パイパーの指のアップは良いのですが、観客の顔のアップは見ていてもしょうがないし…。

 つくづく、ピーブロックは観るものじゃなくて、(目を閉じて)聴くもの、だと再認識しました。

2018/11/9
(金)

Glenfiddich 2018

 今年もまた、ここ数年前から定例Glenfiddich チャンピオンシップのストリーミング&ビデオの季節が巡って来ました。
 例によって、各々の演目は演奏が始まった頃に画面上にさっと表示されるだけで、ビデオのタイトルや解説欄に書かれていません。分かりやすい様に出場者と演目を書き出しておきます。
 
・My Dearest on Earth, Give Me Your KissFinlay Johnston 1st
・In Praise of Morag(Stuart Liddell2nd
・Bells of Perth(Angus MacColl3rd
・Craigellachie(Callum Beaumont4th
・Unjust Incarceration(Stuart Easton5th(初)
・The Daughter's Lament(Jack Lee
・Lament for MacSwan of Roaig(Roderick J. MacLeod
・Lament for Patrick Og MacCrimmon(Dr Peter McAllister(初)
・Lament for the Laird of Anapool(Bruce Gandy
・Ronald MacDonald of Morar's Lament(Alex Gandy )(初)

 なお、今年のディフェンディング・チャンピオンたる Jack Lee の演目について、画面上では "Lady MacDonald's Lament" と表示されますが、司会者も紹介している通り、正しくは "The Daughter's Lament" です。
 昨年、姿が見えなかった Bruce Gandy は、初出場のご子息 Alexと一緒に復活。Glenfiddich チャンピオンシップ史上初めての親子同時出場を果たしました。

2018/11/10
(土)

Piobaireachd Documentary

 ボブさんのピーブロック・フォーラムに11月8日に投稿された Piobaireachd Documentary というタイトルのトピ。
 YouTube に2015年11月23日にアップされた "The Glorious Effect" という「(ハイランド・パイプ音楽全般ではなくて)ピーブロックをテーマにした」50分程のビデオが紹介されています(動画の長さは1:07:26なのですが、最後の10数分は灰色の画面)。

 冒頭、カルフォルニアの CoP サマースクールの情景から入ってくる事や、ナレーターの視点から推して、北米(アメリカorカナダ?)のテレビ局作成のプログラムの様です。
 Seumas MacNeillRonald Laurie といったサマースクールの講師陣の顔ぶれだけでなく、何よりも日本から参加している当時の東京パイピング・ソサエティーの某メンバーの存在からも、1980年代初頭の映像と思われます。
 当時 "Piping Times" にハードウェアについて沢山の記事を執筆している、カルフォルニア在住の David Kenedy がリード・メイキングの指導をしている風景も映っています。

 最初の約8分以降は、舞台がスコットランド現地に移ります。
 スカイ島の風景をバックに Lament for the Children に関する朗読、ジャコバイト・ライジング〜1746年武装解除令〜1781年の Falkirk での最初のコンペティションに至る話、雨中のハイランド・ゲーム、Silver Chanter、The Northern Meeting といったインドアのコンペティションの様子…etc.

 ジャッジ席には Captein John MacLellan、John Burgess、James Campbell などなど。
 コンペティターとしては P/M Angus MacDonald、Iain MacFadyen、Murray Henderson、Bill Livingston、Iain Morrison、Malcolm MacRae、Hugh MacCallum etc. といった当時の主だった面々が…。
 Lament for the Children の演奏としては Gavin Stoddart の次に好きな Angus MacDonald の演奏が観れるのは嬉しい限り。何とも軽やかで美しいその指遣いには見惚れます。やはり、達人たる所以は脱力ですね。
 また、Archie KennethRoderick Cannon のと言った研究者の姿も…。
 これまで、写真でしか見た事がなくて、動いている姿を初めて見た人多々。

 1977年にリリースされたポール・マッカートニーの ”Mull of Kintayre” をバックミュージックに Iain MacFadyen がパイプ教師として車で移動しながら語るシーンも良い味出ています。

 Falkirk Tryst Contest 200周年を記念して1981年秋に開催されたコンペティションの様子が詳細に紹介される事から推して、番組放映は1982年前半といった所でしょうか?

 Bill Livingston、Jack Lee をはじめとする複数のカナダ人パイパーにスポットが当てられている事から、カナダのテレビ局という線が強いかもしれません。
Jack Lee は 23歳にして(1981年の)The Northern Meeting に於いて "Pibroch of Donald Dubh(Black Donald's March)" で Gold Medal を獲得した。」というナレーションが流れます。

 そして、その若き Jack Lee が野外でその演目を演奏する様子が映ります(36分過ぎ)。
 興味深いのは、この時の Jack Lee は惚れ惚れする程凛々しい姿勢で演奏している事。一体、いつ頃から、あんな風になっちゃったんでしょう?

 ところで、今回の映像に登場する昔馴染みのメンバーの顔を見て思い出しましたが、カルフォルニアのサマースクールには、山根さん以降、東京パイピング・ソサエティーのメンバーが幾人も参加しています。
 …にも関わらず、帰国後に誰一人としてピーブロックに真剣に取り組もうと言い出す人はいませんでした。お土産話すらなかった。
 ですから、今回の映像を見て、当時のカルフォルニア・サマースクールではピーブロックに関してあの様に濃厚な指導がなされていた、という事を初めて知った次第。
 そして、参加している老いも若きもが実に真剣に(TPSのメンバーも含めて)ピーブロックに取り組んでいる真摯な姿を見て、正直、今更ながら愕然としました。

 あの方達はわざわざ海を渡って、一体何を持ち帰(らなか)ったのでしょう?

 もう一つ、1980年代初頭のテレビ番組の録画ビデオがこの様な形で投稿されている、という事であれば、1987年11月〜1988年初頭にかけて放映された BBC のあの番組の録画ビデオを、誰が投稿してくれる可能性もゼロでは無いのではないか?という微かな希望が芽生えました。

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